みてわかる電子回路「AC-DC変換回路」

ここでは交流を直流に変換する役割を果たすAC-DC変換回路について解説します。
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AC-DC変換回路とは

AC-DC変換回路とは、交流の入力をもとに所望の直流出力を安定的に供給する回路です。身近なものの中では、いろいろな電気製品に付属するACアダプタなどがこの変換を行います。
また、あまり広く知られていませんが、非接触ICカードに埋め込まれたチップにおいても、実はこのような回路によって生成された直流電源が用いられています。

この回路では、まず「整流回路」により交流から一方の極性のみをもつ波形を生成し、「平滑回路」によってそれを滑らかにならして直流を生成する、という二つの段階を経て変換が行われます。

半波整流回路

整流回路の中で最も簡単なものは「単相半波整流回路」と呼ばれるものであり、下のスライド中の図のような回路によって実現されます。
この回路では、入力された交流のうち一方の極性のものだけが出力されます。波形のうちの半分だけが取り出されるので、名前に「半波」という文字が入っているんですね。

この回路を考えるときは、簡単のため「もっとも単純なダイオードモデル」によって回路動作を考えることとします。つまり、ダイオードに順方向の電圧が生じた時は導通(ON)し、逆方向のときは遮断(OFF)するものと単純化して、ダイオードでの電圧降下は無視します。
(ダイオードのモデルについては記事「PN接合ダイオードを含む回路」で解説しています)

まず入力した電圧が正のときには、ダイオードを通して電流が生じることができるため、入力した交流はそのまま出力されます。
一方、入力した電圧が負のときには、ダイオードを通した電流が生じないため、出力はゼロとなります。

以上から、出力波形は下のスライド中の右図のようになり、一方向のみに極性をもつ電圧が出力されます。

全波整流回路

半波整流回路では交流電圧の極性が負の時の電力が生かされておらず、なんだかもったいない気がしませんか?そこで「単相全波整流回路」を用いればこの問題を解決できます。
これは下のスライド中の図のような回路によって実現され、入力した交流の両方の極性が一方の極性に折り返されて出力されます。
交流波形が全て取り出されるので、名前に「全波」という文字が入っているということですね。

この回路でも、簡単のため「もっとも単純なダイオードモデル」によって回路動作を考えることとします。

まず入力した電圧が正のときには、ダイオード D2 および D4 はONしており、D1 と D3 はOFFしています。このため、電流は負荷抵抗 R に対して上から下向きに流れ、出力端子には正の電圧が発生します。
一方、入力した電圧が負のときには、ダイオード D1 および D3 はONしており、D2 と D4 はOFFしています。このため、電流は負荷抵抗に対して上から下向きに流れ、出力端子には正の電圧が発生します。
つまり、4個のダイオードが入力の極性に応じてON/OFFすることで、いずれの極性においても抵抗に対して上から下向きに電流が流れるようになっています。交流電圧の極性に関わらず常に負荷抵抗には一方向のみに電流が生じ、出力電圧はスライド中の右図のようになります。

平滑回路

最後に平滑回路では、整流回路から出力される脈打った電圧(電流)を平坦にして直流を得ます。

最も簡単な平滑回路は、ダイオードとキャパシタ(コンデンサ)を使った下スライド中の図のようなものです。
ここでの負荷抵抗 $${R_{\rm{L}}}$$ [$${\Omega}$$] は、この電源回路に接続される電子回路の負荷を簡単に抵抗で表したものだと考えてください。
この回路に全波整流された電圧が入力すると、下のスライド中の右図のような「ほぼ直流」的な出力を得ることができます。

このような出力が得られる理由をステップごとにみていきましょう。

まず、入力電圧がゼロからピークに達するまでは、負荷抵抗の両端には入力電圧がそのまま印可され、同じだけの電圧がキャパシタの両端にも印可されます。その間にキャパシタには電荷が蓄積されていきますが、ピーク電圧 $${V_{\rm{m}}}$$ [V] の時に電荷 $${Q_{\rm{m}}}$$ [C] が蓄積されていたとすると、キャパシタンス $${C}$$ [F] を用いて $${ Q_{\rm{m}} = C V_{\rm{m}} }$$ が成り立ちます。

次に、入力電圧がピークを過ぎて降下していくときを考えましょう。入力電圧がピーク値から減少しはじめた直後にはキャパシタには電荷 $${Q_{\rm{m}}}$$ [C] が蓄積されているため、その両端の電位差はまだ $${V_{\rm{m}}}$$ [V] に保たれています。ここから入力電圧は下がり続けるため $${V_{\rm{m}}}$$ より小さくなっていきますが、この時点でダイオードが逆バイアスとなりOFFするため、電流が入力側に逆流することはありません。
この間、キャパシタに充電されている電荷は負荷抵抗を介してじわじわとゆっくり放電されていくため、それによって徐々にキャパシタ両端の電圧は入力電圧の変化とは無関係にゆっくり減少していきます。

上記のような放電は入力電圧が再びキャパシタ両端の電圧を超えるところまで続きます。ひとたび入力電圧がキャパシタ両端の電圧より入力電圧が大きくなると、再び入力電圧によるキャパシタの充電が再開されます。

以上が繰り返されることによって、キャパシタは充電と放電を繰り返しつつ、ほぼ直流的な電圧が負荷抵抗の両端に生じることになります。ただしこれは完全な直流ではなくピクピクと脈打っているので、「脈流」などと呼ばれることもあります。