電力需要って増えるんでしたっけ…

そろそろ第7次エネルギー基本計画の季節ですね。
総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会(第55回会合)の内容反芻中…

なんとなく、「電力需要減る予測だったけど、半導体工場も来るし、海外も生成系AIでデータセンター消費電力増えるって言ってっからさ、来るべき電力不足に備えてやっぱ原発再稼働・新設を進めて国内の電力コスト減&脱炭素の両立を目指そうぜ!」という流れを感じました。

個人の感想ですけど。

そこにあったこのスライドが気になりました。

総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会(第55回会合)配布資料1「エネルギーを巡る状況について」(資源エネルギー庁)

パッと見た感じで「おぉ〜、データセンターと半導体工場でそんなに電力需要伸びるのか。だったらそりゃ大変だわな」と思った…のも束の間、
「この点線はなんじゃ…『前回』の予想??」
前回ってのは、第6次エネルギー基本計画の時ってことですかね。
その時と比べると300億kWhほど、需要を読み違えていたってことっすね。
で、今後10年くらいで需要は400億kWh増えるよって読みになったということっすね。

そして浮かぶ次なる疑問。
「300億kWhとか、400億kWhとか、大きいのか?」
そもそも全体の需要が8000億kWhとのことなので、
ブレ幅としては3〜5%くらいのサイズ感。
そうだね、小さくはないよね。それは分かる。
でもさ、上のグラフ、オーバーに書きすぎじゃね?
パッと見、1/3くらい需要が増えるように見えるんだけど、ちゃうよね。

5%というのは小さくはないだろうが、でも大きいのだろうか?
…と思って、反対に供給側のデータを見てみることにした。
資源エネルギー庁が2022年度のエネルギー需給実績を出してます。

https://www.meti.go.jp/press/2024/04/20240412001/20240412001.html

それによると、2022年度の発電電力量は10,106億kWhだそうです。
足りているんじゃないかとは思ったものの、そうでもない??
上記のグラフで2012年度の需要は8600億kWhですが、
同年度の発電電力量は10,778億 kWhでした。
需要と供給の差が2000億kWhくらいは必要ということであれば、
まぁ確かに、増加分の300億〜400億kWhくらいが足りんのじゃ!
ということなんですかね。

ざっくり、原発1基で100万kWと仮定する場合が多く、
年間の発電電力量は87億6000万kWh(設備稼働率100%の場合)に相当とのこと。
300億〜400億kWhくらい足りないなら、原発が5基くらい追加で稼働しないとってことか。
今、11ヶ所くらいの原発発電所で原発が停止(定期検査含む)しているそうで。
1ヶ所に数基あるから、ぶっちゃけ、現在お休み中の原発が全部再稼働する必要はないのではないかという疑惑が…
まぁ1基の出力は必ずしも100万kWではなく小さいタイプもあるし
寿命もあるだろうから、まぁアレなんですけど、若干盛ってません?
実際、2010年度の原子力発電による発電電力量は2,882億kWh、
2022年度は561億kWhです。

せっかくなので、2010年度と2022年度の発電電力量を比較してみます。


資源エネルギー庁が2022年度のエネルギー需給実績データから作成。単位は億kWh。

なるほどね〜。
原子力が2300億kWhくらい減り、
再生可能エネルギーが増えたものの、太陽光が900億kWh増えたくらいで
原子力の低減分には及ばず。
全体でも1300億kWhくらい発電電力量は減った。
ただ、需要も600億kWhくらい減ったから、なんとなくどうにかなった
…ってとこですかね。

が、不安定な再エネ(特に太陽光)が増えて全然使えないから
せめて蓄電池増やして系統も増強しろ!
いやいや、そんなめんどいことするくらいなら原発の半分でも再稼働すれば
済むだろ!蓄電池なんてレアアースに金かかって仕方がない!
それよりもアンモニア混焼で石炭火力も減らすな!再エネとも併用できる!
いやいや、建物の壁面中に太陽電池を貼ってですな…
いやいや、結局はエネルギーミックスこそ命!

となってるっちゅーことね。
まぁ、原発のうち筋がいいところを再稼働するのが一番手っ取り早そう。
全体需要が8400億kWhなら原発全部再稼働しなくていいと思うけど、
石炭石油の火力発電を止めたいから全部復帰を狙うのかなぁ。
でも原発だとエネルギー自給率上がらないからねー。
将来に投資するなら地熱かなぁ…



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