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勘三郎さんと「分身」ミッキー⑤弁天小僧〜でっかいのちっちゃいの。

さて。十八代目中村勘三郎さんに贈ってきた「分身」ミッキー達の記録もこれで五回目です。今回の子は中村屋にえらく評判がよかった、弁天小僧です。でかかったんですよね~大変だったんですよね~~懐かしいです。

【本編に入る前に:これまでの「分身」ミッキー達】

①黒足袋の十郎(助六所縁江戸桜、白酒売)

②ミッキーNYへ(夏祭浪花鑑)

③カップルシリーズその1:猿源氏と蛍火(鰯売恋曳網)

④カップルシリーズその2:仇ゆめ(狸、蛍火)

さて。ここで再び時系列に戻ります。
2006年6月。勘三郎襲名披露興行も終盤の博多座で「弁天小僧男女白浪」がかかりました。勘三郎さんは弁天小僧菊之助。これだけ有名な狂言ですし、もっとやっていてもよかったと思うんですが、弁天小僧をなさったのは数えるほどでしたね。

勘三郎さんのお誕生日(5/30)のお祝いもかねて何か大きなものを作ろう!と言うのが作ろうと思ったきっかけだったと思います。五人男の着付の柄をどうするか、が一番の悩みの種でした。

まずは簡単なことから始める癖(笑)
いきなり眉間の傷を作ってますね。

次にパンツを脱がせて、襦袢とふんどしを作りました。

ふんどしは越中です。
いつも、ふんどしのサイトを見て形を確認してました。ぬいぐるみなのですっかりおむつみたいになってます(笑)

弁天小僧の持ち物、煙管に煙草入れ。この煙管は実は本物です。
短めの10センチもないもの。
煙管入れも煙草入れもさすがに革といかず、これはフェルト。
煙草も入れるわけにいきませんので、飴ちゃんを入れておきました。

これ、本当はそれぞれの丸い部分にビーズをはめ込んで作る飾りなんですが、そのまんまにして銀細工のように使いました。

刀は、浅草で探した模造刀。おもちゃではなく、飾るものです。外国人向けのお土産でしょうかね。このシリーズは何度か使いました。浅草仲見世様様。

さて、いよいよ着付…。
まずは紫のコットンで長着に仕立てます。さすがにこれは単衣でしたね。
構造としてはちゃんと着物なんですよ、いくつか省略はしてますが。

そこにアイロンプリントで模様をつけていきます。
この模様は松竹の「歌舞伎衣装展」の図録をスキャンして縮尺を合わせて各パーツごとに印刷してせっせとアイロンしました。蛇のとこが難しかった…!!(実際の模様よりだいぶ大ぶりです)。

後ろ、我ながらよく合わせたと思います。もはや執念(笑)
反物状態でプリントして縫うほうが綺麗に行くのはわかってましたが、うまく模様を合わせる自信がなかったのでつぎはぎです。まあ、ぬいぐるみだし!!

ということで着せてみました。帯は博多献上のイメージの綿の生地です。

スナップではなく、貝ノ口で結んでます。

さて。
白浪五人男といえばこの番傘ですよね。
これ、いまだになんでジャストサイズのものがあったんだろうなあ、と思うのですが、ユザワヤにあったんですよね。木目込み人形あたりの小道具ではないかと思います。これもプリントしたものを貼っただけですが、思った以上に雰囲気が出ました。

晒しの手ぬぐいを肩にかけ、はい、完成です!
足は変に雪駄や下駄を手作りするとかえって野暮だったのでそのままです。

これを5/30に博多座に発送して、舞台稽古に届くように送りまして。
で、実際に私がこのときの博多座を見に行けたのは千穐楽の前の日。
入り時間に楽屋口でお会いしたときに私の顔を見てひとこと、あとでいいものあげるから、と。
えー!?なんだろう??と思っていると今度は中で番頭さんが「ねえ、デジカメ持ってる?ちょっと貸して!」。

ん???? デジカメ?? なんか撮ってくれるってこと???

どきどきして終演を待つことになってしまったわけですが、果たして帰りがけ、ニコニコの番頭さんがはい、と返してくれたデジカメにはこの写真が。

ぎゃーーーー!

しかも、こんなお茶目な一枚も。
なんと出番前に撮ってくださったのだそうです。忙しいときに!!
お祝いで贈ったものでこっちが喜ばされてしまった…と恐縮しつつも、大きな荷物を送ってしまったことを心配もしていたので喜んでいただけたことがわかってほんとうに嬉しい写真でした。

で、実は、デジカメを持って行ってくださったのは番頭さんの判断で、そもそもはボテに入っていたチェキで撮ろうとされてたとか。でもずっと入れっぱなしだったチェキで番頭さん「…うまく写らないかも」と思い、とっさに私を探して声をかけてくださったのだとか。

確かにその心配は大当たりで、チェキはうまく現像されずに、こんなことになってました。


今、こうして綺麗な思い出が残っているのも番頭さんの機転のおかげです。これはこれで面白かったんですけどね(笑)

そして、これらは自慢の写真のひとつではあるのですが、言いたいポイントは自慢じゃなくて。

中村屋という人のとにかく気持ちの美しいこと。
好意をより大きな好意で返してくださる懐の大きさ、優しさ。気さくさ。そして、ユーモア。発想力。

だってただのファンですよ、私。
なのにこんなにしてもらって惚れないでいられるはずないですよね。

これに限らず、12年間の追っかけ生活の中で形になったものも、形になっていないものも本当にたくさんたくさんいただきました。

素敵な人でした、ほんとに。
カッコいいばかりでもない、怒りっぽかったり忘れんぼだったりたまにムカつくこともあったり(あったんですよ、ええ)しましたが、そんなこともどうでもよくなるほど、凄い役者でそして、魅力的な人でした。

おまけの話。
実はこの時から自分の手元にも置いておくレプリカのようなものを作り始めました。全部は無理でしたが。
ミニ弁天小僧はせっかくなのだ博多にも連れていっていました。

先ほどの写真をもらったあと御礼かねがね出待ちして一緒に撮っていただいた写真がこれ。なぜかギュッとミッキーを持ってくださったんですが、なぜかはこのあとわかりました。

撮り終わるやいなや、中村屋、ひょいとこの子を手に取り、「ありがと、じゃあね!」。

待って~~~~違う~~~~~!
その子は私の家の子です~~~~!!!

焦ってそう言って取り返すと、中村屋、目をまんまるにして「なんだ!違うの!?」とちょっと残念そうに言うのでした。

あなた、楽屋にでっかいのがあるでしょうが~~!!とおかしいやら慌てるやら…。家にいるこのミッキーを見るたびにあのときのことを懐かしく思い出すのでありました。


いただいたサポートは私の血肉になっていずれ言葉になって還っていくと思います(いや特に「活動費」とかないから)。でも、そのサポート分をあなたの血肉にしてもらった方がきっといいと思うのでどうぞお気遣いなく。