記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

私が「私」として生きる物語。nayuta 「ArtemIs」感想


2024/04/28
 
この世界にまたひとつ、心に残る音楽作品が誕生しました。

Xのポストだけで語るには、あまりにも文字数が足りないのでこうして初めてnoteを書くに至りました。

そんなとんでもない作品、
それがそう、「ArtemIs」です。

私が大好きで止まないボーカリストnayutaさんが主宰するサークル、「7uta.com」の16枚目のオリジナルアルバム(コラボアルバムなどを含めるともっとあります。すごい)。


錚々たるメンバー

アルバムの情報が解禁された際に私が驚愕したこと、
それはクレジット欄に・・・



全曲RD-sounds!!?!?!?!???!?!!

シナリオライター???ストーリーブック???
さんしおさん!?!?!?!?

なんだこのメンバー!!!!!!!!!!!!!

なぜこのオタクはこんなに限界化しているのか。楽曲の感想の前に、まずはその部分から語らせてください。

RD-sounds × nayuta

※ここからしばらくはRD-sounds × nayuta の”簡単な”紹介です。お前に言われなくとも知っているという方は飛ばしてください。

RDさんはnayutaさんに関わる曲を多く作ってきてくださった、以前から大好きなコンポーザーさんです。

nayutaさんのオリジナル曲『追想の先へ』

自主制作5周年を記念して作られたベストアルバムの一曲目。これまでの楽曲のタイトルを散りばめたnayutaさんの作詞にも注目です。

めらみぽっぷさんとのコラボ曲『サクラドライヴ』

『disseminate ―さいしょのふたり―』,

『divergence ―ゆめみるふたり―』,

なゆぽっぷって本当に良くてぇ・・・(内2曲は今回と同じく宇宙や星イメージだし!)

nayutaさんが所属するユニットLa prièreの『それは世界を超えて』

『來人具惨』

『キボウノホシ』など

キボウノホシはらぷりじゃなくてれすぽわーるさんだって?はい

そしてRDさんが主宰する「凋叶棕」「Feuille-Morte」ふたつのサークルでもnayutaさんが多く歌唱しています。

個人の活動では透き通るような声で前を向けるような曲を多く歌っている清らかなイメージのnayutaさんですが、
「凋叶棕」ではうってかわって、氷のように突き刺さるような声で沼底に突き落とす”闇の曲”を多く歌っています(”闇の曲”だけじゃないよ!と野次がどこからか飛んできそう。それはそう)
どちらのnayutaさんも素晴らしいので、興味の出た方はぜひ聴いてみてください!

気に入ってくれた方はぜひCDで・・・CDでしか得られない体験がそこにあります。

「Feuille-Morte」はRDさんが創る壮大で唯一無二な世界観に惹きこまれていく、物語音楽が好きな方におすすめのサークルさんです。

こちらもサブスク等ありますので気に入った方はぜひ現物を!まだ6枚しか出てないので履修しやすいです!やったね!(なお2020年秋を最後に新作が出ていません。一生待ってます


さんしお × nayuta

さんしおさんといえば、7uta.comの14枚目のオリジナルアルバム「颯と楓」の作詞を担当された、こちらも大好きなお方です。

切なくも温かい気持ちになる歌詞で、nayutaさんの持ち前の表現力で登場人物たちに感情移入してしまいます・・・。こちらのアルバムも本当に最高なのでぜひ!
個人的にお気に入り曲はTr.05の『ちゃんとうまく笑えるかな』です。

他にもあの名曲『ハルハコブネ』や、

とにかく歌詞が美しすぎる『ユキニカ』など、

人の心を打つ詩の数々を生み出してきた素晴らしい感性の持ち主です。

そんな大好きな方々が大集結してしまったアルバム、「ArtemIs」。一体どんな音楽が紡がれるのか・・・。M3前の私の期待値は過去最大級となっていました。

ここからやっと本題に入ります。
ストーリーブックの内容を含むネタバレ満載なのでまだ読みたくないよ!という方はブラウザバックしてください。

※このあとの感想・考察らしきものはあくまでも私個人が感じたものになります。歌詞のもつ意味や物語は各々の感じ方によって異なりますので、本記事はただの解釈のひとつということをご了承ください。











CDを手に取って感じたこと

ジャケットから素晴らしい

まずCDを取り込む前に目に入るジャケット。茶野そめは先生が描く美麗イラストが素晴らしいですね。茶野そめは先生のイラストは人物も魅力的ですが、何より背景の美しさに目を奪われます。イーゼルに乗せただけでもう芸術作品のようです。

宇宙空間にひとりの女の子が渾天儀らしき物体に佇んでいます。なお渾天儀とは天球上の天体の動きを模した機器、らしいです(Wikipedia参照)。すべてを聴いて読んだ上で改めて見ると・・・なるほど、この物語に合ったイラストです。

”あい”のことば

そして「ArtemIs」のロゴ。
帯に記された「あなたが私にくれた、”あい”のことばーー」。
AとIだけ大文字なのは、”そういうこと”ですよね?
よく見るとAとIだけノイズが混ざったデザインになっています。

ちなみにRDさんは過去にも”あい”に関する曲を制作しています。

棗いつきさん4thアルバム「CodeQ」収録の『AIとCodeQの果て』

RD-sounds × 棗いつきも最高なんです。

「La prière Cover Collection」にnayuta ver.が収録されています。

東方アレンジ曲『n-tegralより愛をこめて』

ちょうどここ最近RDさんオタクのFFさんに教えていただいた楽曲。蓮メリは良いぞ。

聴く前から始まる物語

そしてロゴの下には何やら小さい文字で英文が・・・。

One day I was told that I was an AI. In an inorganic room.
One day I realize that I was human. In your gentle and warm arms.
This is a record for me to start living as "I".

ある日、私は自分がAIであることを告げられた。無機質な部屋で。
ある日、私は自分が人間であることに気づいた。あなたの優しく温かい腕の中で。
これは、私が "私 "として生き始めるための記録。

・・・これ絶対弱いやつじゃん。

そして裏面・・・

もう一人いる!
ジャケットの女の子の隣で、同じ白衣を着た女性が微笑みかけています。
この女性が”あなた”ということでしょうか。

ジュエルケースを開くと、裏面のイラストの背景に描かれた建物をイメージしたようなブックレット。
そしてCD盤面には、その建物から外に飛び出していくことを彷彿とさせるデザインが施されています。
毎回CD盤面を見ることが本当に楽しみなんですよね。とてもわくわくする瞬間です。レクさん、いつも素敵なデザインをありがとうございます。

それでは、いよいよCDを取り込みます。

・・・ん?Tr.08?
裏面にはTr.07までしか記載はないが・・・。

これやってんなあ!!?

(今回のCDに関してはどなたの発案かは不明ですが、RDさん制作のCDにはよく隠しトラックがあったりします。そしてそれに数年気づかなかった愚か者もいたりします。すみません

まずはだだ曲を聴きました。その後歌詞を見ながら、そして次はストーリーブックを読みながら聴きました。本記事では構成上、ストーリーブックを読んだ上での感想を記します。


楽曲を聴いて

Tr.01 nameless moon

タイトルは直訳で「名前のない月」。
宇宙空間をひとりきりで漂っているような静けさ・神秘的な印象を受けるinst。
宇宙って未知の部分にわくわくすると同時に、人間の基準では考えられないような規模の現象が起きつづけていて、想像すると途方もなくて怖くなったりもします。
これから始まる物語はどんな物語になるんだろう。そう期待する半面、曲調はミステリアスで孤独なイメージを感じました。


Tr.02 determinism〔機械仕掛けのココロ〕

;3ZUTAさんの動画が本当に毎回素晴らしいんですよ・・・!

崩れてもだめ
ただ光あれ
一方的な関係性

そうだよ
自分自身が自分だって定義するのは
自分以外に居ないとわかってるのに

この部分の歌詞は「月」をイメージしているのかなと感じました。
月は自分自身だけでは光を発することはできない。太陽の光を反射して光って視えているだけの存在。
それがTr.01の「nameless moon」に掛かっているということでしょうか。

ねえ聞いてよわたしはヒトなんだって
それだけは絶対に確かなんだって

家族や友達、趣味や好きな食べ物、たしかにあるこの記憶は偽物の記憶なのか。痛みや暑さだってたしかに感じるのに、どうしてヒトでないと言えるのか。
このときの被検体19号は自分が生物としてのヒトでないことに悲嘆しつづけています。
nayutaさんの切なくも美しい歌声に胸が痛くなりました。

どうして自分のことを理解してくれないのか、だれしも感じたことのある感情かと思います。
しかし自分自身がこだわっていることは、実は物事の本質ではなく、本当に大切なことは別にあったりするんですよね。
それがこの後の曲で描かれていきます。


Tr.03 ne/ne〔ヒトらしくあるために〕

この曲は
あなた・ワタシ →  ねね
キミ・私 →  ルナ博士

ふたりの視点で描かれているように思いました。

〔キミ〕がヒトらしくあるために
私に何が出来るだろうか?
埋まる筈のない傷痕
それを見つめながらに生きるのには
この人生は長すぎるの
きっと まだね……

このときのルナ博士は心の傷をまだ癒せずにいて、こんな自分がねねにしてあげられることは何か模索しているように見えます。

そして何もかもを諦めるそのうちに
心のぜんぶが
そっと凍っていった
けれど何もかもがそれでよかった
もう機械になれたらよかったと思った!
何も 何も もう……要らないはずだったのに。

この部分は苦しくて聴いているうちに自然と涙が零れました。

ねえ
この世界が哀しいものじゃないんだってね
信じさせて。ね?

それとは対照的に最後の歌い方はまさにヒトらしく、至って平凡な女の子のそれでなんだかうれしくなります。
nayutaさんの表現力の高さには改めて驚かされます。

まだ自分自身のこともわからないけれど、ふたりのお互いを思いやる気持ちが溢れた曲だと感じました。

そしてこの曲にはギターで光収容さんが参加されています。
光収容さんといえばRDさんのサークルの楽曲で多く演奏されている方なので、情報を知ったときはわくわくしました。
ラスサビ前のふたりの少しの戸惑いと嬉しさを感じさせるようなギターソロには胸が熱くなりました。


Tr.04 upon a star〔ネガイゴト〕

ふたりで出掛けた天体観測の夜のような、キラキラと輝く星々を感じさせるイントロから始まります。
ブックレットのデザインもまるで輝く流れ星のように感じられてとても素敵です。

いつか
遠い明日へ通わせていく
何万天文単位を隔てても
心で手繰り寄せていく

いつか別れのときが来ても、ずっと心で繋がっていたいという祈り(オラシオン)の曲です。
nayutaさんの歌声も瞬く星のように綺麗で、夜道で聴くとより一層この曲の良さが増します。

ストーリーブックの冷たくなったねねの頬をルナ博士が温めるシーンは尊すぎてオタクが爆散しました。


Tr.05 beside you〔夢の続きへ〕

だからね
聞いてほしいこともあったけど
それよりも いまはずっとね
誰よりもあなたのことを 聞かせてほしいと思うよ――

無機質な部屋で独りぼっちでいたねねが、ヒトとして生きることとは何かを教えてくれたルナ博士に、次はあなたの番だよと問いかけているように感じました。

そうだよ
自分のことを定義するのはね
誰かがいないといけないから
あなたと
生きていたい
意味を与えあって誰より傍に寄り添いたい

この部分は「月」がTr.02 determinism〔機械仕掛けのココロ〕とは対照的に描かれています。
誰かがいないと自分を定義できない孤独な存在として描かれていた「nameless moon(名前のない月)」が、
ルナ博士と出会いAI(あい=愛・私)を与えられ、他者の存在によって堂々と光輝く「ArtemIs(月の女神)」となったのです。

本当に大切なこと、ヒトであることより――

あれだけ自分が生物としてのヒトでないことを悲嘆していたねねが、本当に気づいた大切なこと。
それはただ、”私”として生きること。それが彼女にとってのヒトとして生きることだったのかもしれません。


Tr.06 until my last breath〔生きる証を〕

はい、これ限界曲です!!!!!
XFDで初めて聴いたその瞬間から大好きな曲になりました。
まさにRD-sounds(光タイプ)の真骨頂といった曲です。
何回聴いても涙なしでは聴けないレベルで私の涙腺にクリティカルヒットしてしまいました。
nayutaさんの優しくすべてを包み込むような歌い方はまさに月の女神のようです。

ストーリーブックはねねが主人公として書かれているので、最後はねね視点の曲なのかと思いきや、歌詞に注目するとルナ博士視点で描かれている曲なのかなと感じました。

あなたは何を思うだろう
わたしがいなくなったら
やっぱりこんな世界なんて
そう言ってナミダするのかな
それでも
あなたは前を向いて欲しい
そこにもあなたのいる場所が あると信じているから
きっと 何も変わらないから


ヒトであるわたし(ルナ博士)の生命には終わりがある。あなた(ねね)にはわたしがいなくなったあとも前を向いて生きてほしいという強い願いが伝わってきます。

ひとがだれかといっしょにいきること
そこに存在ることを認めるのなら
生きている証のそこにあること
それがヒトとして生きることだと
いつか
その手を取るあなたとともに
知っていったんだ

弟を亡くして”機械のように”なってしまったルナ博士が、ねねに出会い、ねねがヒトとして生きるということは何かに気づいていくなかで、ルナ博士も同時に生きる証を取り戻した・・・そんな感謝の曲に感じました。

この曲はいつか絶対ライブで聴きたい・・・!!!号泣する未来しか見えません。

Tr.07 ArtemIs

ラストを飾るinst曲が表題曲とは・・・粋な構成ですね。
限界曲のあとにふたりの温かな想い出を辿るようなやさしい曲調で癒されます。
最初の孤独を感じるinstとは対照的に、見えなくてもだれかがずっと見守ってくれている、そんな優しさを感じます。
RDさんの曲ってinst曲も素晴らしいんですよね・・・!
 

Tr.08 ???

深読みオタクはこういうのが大好物なんですよね。
この部分は各々で解読した方が良いと思います。
もしまだメッセージを受け取っていないという方はストーリーブックの最後のページを参考に解読してみてください。

AIであるねねも、機械の体にはいつか終わりがきます。
言葉を発することができなくなったあとも、ココロは永遠にプログラムの中で生きつづけていて、ルナ博士との想い出を大切にしているんだなと思いました。


この物語を通して

ふたりの物語によって、私自身もヒトとして生きることは何か、「私」として生きることは何かを考えるきっかけになりました。
現代社会では考えることが多すぎて、こんな根源的なことに思いを巡らせることはなかなかないけれど、きっと考えること、そのこと自体に意味があるんだと思います。

思えば約17年前、nayutaさんの歌声と出会って、ただ目の前のことに精一杯の毎日だった白黒の自分の人生に、いつの間にかたくさんの彩りが加わっていました。
数年後、大人になって再開したnayutaさんはあのときと変わらずひた向きに活動を続けていて、何も目指すものがなく、ただ平凡だけを望んでいただけの私に、かつて自分にも叶えてみたい夢があったことを思い出させてくれました。
どうしても自信がなくて、心が折れそうになることもあるけれど、これからはふたりの物語を胸に、前を向いて歩きつづけたいです。

ねねがルナ博士から、そしてルナ博士がねねから〔生きる証〕を与えられたように、今の私はnayutaさんから〔生きる証〕をいただきました。
きっと読んでる方には大袈裟に思えるでしょう。
でもそれぐらい、nayutaさんの存在が私に与えてくれたものが大きいものであることは確かです。
しかしルナ博士の命のように、nayutaさんの活動も決して永遠ではありません。
いつか終わりがきたそのあとも、希望のうたを歌う姿を覚えていてほしい。
until my last breath〔生きる証を〕にはそんな私たちファンに対するメッセージにも聞こえました。
(※改めて言いますが個人の感想です)

この素晴らしい作品を作り上げてくれた関係者すべての方々に最大級の感謝を。
そして何より、nayutaさん、素晴らしき作品に出会わせてくれて本当にありがとうございました。




















この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?