【小説】弥勒奇譚 第八話
疲れも頂点に達した頃ようやく室生の里に入った。
室生寺の入り口はすぐに分かった。造営中とは聞いていたがあたりに人影はなく、小さな橋を渡って足を踏み入れた境内は静まりかえっていた。
咎めだてもされず長い石段を登って行くと右手に
懸崖造りの御堂があり中では仏像を制作中のようである。
是非覗いて見たい衝動に駆られつつも中にいるのは造仏所の仏師達だと思うと気後れして素通りした。
突き当りの瀟洒な五重塔を参拝し早々に引き返し境内を出た。
道に戻りまた山道を登って行く。龍穴社はもうすぐそ