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【小説】弥勒奇譚

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京の仏師弥勒は夢に導かれて一世一代の造仏に挑む。
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#薬師如来

【小説】弥勒奇譚 第九話

翌朝、不動に連れられ仕事場に向かった。龍穴社を出て川沿いに上って行くと道の右側の少し高く…

【小説】弥勒奇譚 第十話

その夜久しぶりに夢を見た。 さらに続きがあり少女が弥勒に語りかけるのだった。 口元は喋って…

【小説】弥勒奇譚 第十三話

次に衣の彫だが弥勒は衣文の彫りがあまり得意ではなかった。 全躯の調和を取るのが苦手なので…

【小説】弥勒奇譚 第十四話

「ときに弥勒殿の数珠はあまり見かけないものだが どちらのご宗旨かな」 「この数珠は以前お話…

【小説】弥勒奇譚 第十五話

その日はひどく疲れて早く床に着いてはみたものの、会うことも無いであろう兄や姪の事を考える…

【小説】弥勒奇譚 第十六話

この作業も終わろうとしていたある日龍穴社より使いが来た。 客人が来ているので下りてきても…

【小説】弥勒奇譚 第十八話

弥勒はその夜久しぶりにあの夢を見た。 場所は龍穴社のようだが見慣れない建物から普賢が出てきてやさしく微笑みながら手招きをする。何であろうとその建物に入るといま作っている薬師如来が奉られている。 普賢が灯明を上げるとパッと明るくなり浮かび出た薬師如来を見るとなんと彩色が施されていてしかも息を飲むほどの美しさであった。 弥勒は夜も明けやらぬ内から起きだして夢で見た薬師如来の彩色を写し取った。写し取ったと言っても高価な顔料を持っている訳も無く、色の名称を細かく書いていくのが精一杯で

【小説】弥勒奇譚 第二十一話

弥勒は挨拶もそこそこに室生寺を後にして自分の 作業場に戻ると、木端を使って今見てきた色付…

【小説】弥勒奇譚 第二十二話

本地仏は寺の仏像と違い一度厨子に納められると よほどのことが無い限り厨子の扉が開かれるこ…

【小説】弥勒奇譚 第二十三話

数日後、ようやく厨子も完成し薬師如来像は再び里人の手で社務所から出て厨子に安置された。 …

【小説】弥勒奇譚 第二十六話

それにしてもすごい人の数だな。麓の村でもおまえの造った薬師如来の噂で持ちきりだったからな…

【小説】弥勒奇譚 第二十八話

文殊は何か吹っ切れたように口を開いた。 「弥勒には話していなかったが普賢はわしら夫婦の子…

【小説】弥勒奇譚 第二十九話

弥勒の中にはこのまま仏師を続けて行っても良いのかどうかと言う迷いが急に頭をもたげて来てい…