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【小説】弥勒奇譚

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京の仏師弥勒は夢に導かれて一世一代の造仏に挑む。
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2023年12月の記事一覧

【小説】弥勒奇譚 第一話(全三十話)

「またあの夢だ」 弥勒は同じ夢を繰り返し見るようになり、ここ数年は三日と開けず頻繁に見る…

【小説】弥勒奇譚 第六話

翌日も早くから朝市の呼び声で大賑わいの街を抜け、少し奥まった大御輪寺まで来ると人もまばら…

【小説】弥勒奇譚 第二十三話

数日後、ようやく厨子も完成し薬師如来像は再び里人の手で社務所から出て厨子に安置された。 …

【小説】弥勒奇譚 第二十四話

開眼供養も数日後に迫り準備もほぼ終わろうとしていたある日、龍穴社を一人の男が訪ねてきた。…

【小説】弥勒奇譚 第二十五話

文殊は静かに聞いていたが顔を上げると自分がここに戻ってきた経緯をゆっくりと話出した。 「…

【小説】弥勒奇譚 第二十六話

それにしてもすごい人の数だな。麓の村でもおまえの造った薬師如来の噂で持ちきりだったからな…

【小説】弥勒奇譚 第二十七話

「ご覧くだされ見事な虹じゃ。唐の国では虹と龍は同躯であるとか化身であると言われておる。 間違いなく龍神様は開眼供養を喜ばれておるのじゃ」 「これで龍穴社も末永く安泰じゃて」 不動は嬉しそうに笑い声をあげるのだった。 その夜、弥勒は夢を見た。 それは今までと違い短いものだった。 龍穴社の薬師如来が収められた厨子の前で普賢が 一心不乱に祈りを捧げている。こちらに気が付いたのか振り向くと一言「ありがとう」と言い微笑みながら天を指して昇って行く。 そしていつの間にかその姿は龍となり

【小説】弥勒奇譚 第二十八話

文殊は何か吹っ切れたように口を開いた。 「弥勒には話していなかったが普賢はわしら夫婦の子…

【小説】弥勒奇譚 第二十九話

弥勒の中にはこのまま仏師を続けて行っても良いのかどうかと言う迷いが急に頭をもたげて来てい…

【小説】弥勒奇譚 第三十話(完)

弥勒は黙って不空の話を聞いていたが大きく息を吸って口を開いた。 「もったいない話でお礼の…