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夫の親知らず

これは交換日記だけれども、私にも、文学フリマの感想を言わせてほしい。

文学フリマ、初出展、本当に本当に楽しかった。

だって、出店までの面倒な部分は全て、じぇきゃさんがやってくれていたんだもの!
美味しいところだけ味わって、打ち上げで気持ちよく寿司を食べたんだもの!

この世界線を教えてくれて、ありがとう。
しばらく文フリフィーバーで日常が明るくなりそう!

ブースで手に取ってくれた方に何度か言ってもらったのは、
「旧友同士で交換日記」というのが、「とっても良いですね。」ということ。
コンセプトがいいと言ってくれた方と、そういう友達がいていいですね、と言ってくれた方。
そうやって、私たちが楽しいな、と思っているところに気がついて直接共感して頂いたところが、今回一番嬉しかったのかもしれない。

じぇきゃさんに言われて、反省したんだけど、ともすると、この日記が商品に見えてしまって、なんとか商品にしようと考えてしまうので…笑
一番嬉しかった気持ちを大切に、ゆっくり日記を続けていけたらな、と思う。

11月14日(火)

夫が親知らずを抜いた。
近所の歯医者に行ったら、総合病院で抜けと言われたらしく、今日抜くことになった。
抜く前から、歯が埋まってしまっていて、大きい病院じゃないと抜けないと言われたことや、4本もあって大変ということを少しずつ私に訴えていたが、親知らずなんかみんなあるだろうと相手にしなかった。
そして、まんまとその予定を私が忘れていたために、夕方子供のインフルエンザの予防接種を予約し、仕事も立て込んでしまうことになる。
下の子の迎えだけ頼み、長女を連れて病院に行く。
17時15分、予防接種が終わり、連絡すると今病院を出たという。心なしか呂律があまい。下の子の保育園までは渋滞もあり、おそらく20分以上かかるだろう。
幸い病院の近くが保育園だったので、私がなんとか下の子を迎えに行く。かなりバタバタした夕方だった。

丸亀製麺でうどんを買って帰宅すると、夫はシャワーを浴びていた。歯を抜いたから湯船にはつかれない。腹が減ったと騒ぎ立てる子供を静めながら、うどんを並べる。
夫はうどんも半分しか食べず、痛いのか、ときどき「シーッ」だの「スーッ」だの言いながら歯の隙間から息を吸っていた。
子供と一緒に風呂に入り、夫が着替えをさせる。
私が風呂から出ても、ソファでぼーっとしている。
私は、いつもなら放っておくのだが、なんとなく文フリに行くために子供を預けた負い目もあり、
「熱があるんじゃないの?歯を抜くと熱出ることもあるから。」
と声をかけてみた。
すると、
「そうかな…そうかもな…!」
と言いながら、いそいそと体温計を挟んだ。
熱は全くなかった。
夫は、
「へい(平)。」
と言い、またソファに腰掛けていた。そして家族全員で21時に就寝した。

11月15日(水)

朝出社すると、夫の頬が心なしか腫れていた。
私と夫は同じ職場に勤めている。
もちろん、朝も顔を合わせている。
しかし、朝は子供の支度などで1日のうち二番目に殺伐とする時間だ。(因みに最も殺伐とするのは帰宅から夕食までの時間。)
だから、夫の顔をちゃんと見たのは、聞きたいことがあって話しかけたこの時が初めてだったのかもしれない。
いや、もっと前から、夫の顔を私は見ていなかった気もする。
「前からこんな顔だったっけ?」
私は少し混乱した。
透明人間につままれているみたいに、夫の右頬がすこし歪んでいた。不細工な粘土細工のようでちょっと面白かった。
しかし帰宅後、夫の頬はびっくりするぐらい膨らんでいた。大きなアメかチューインガムを頬に隠しているかのように、膨れている。
しかし、赤くもなっていない、肌色の頬がぷくーっと膨れているだけなので、痛いのかどうかは見た目にはわからない。夫も、頬以外は、さも当然の様な表情でいるので余計に可笑しかった。
久しぶりに見た夫の顔が歪んでいて、耐えきれずに笑ってしまった。
夫は笑う私を、また頬以外の表情がない顔でじっと見ていた。
子供にもさぞ笑われるだろうと思い、
「パパの顔みた?」
と含み笑いで子供に聞くと、
「みたよー、歯抜いたらしいよー。」
と気のない返事が返ってきた。
こんなに変な顔なのに。
夫は着替えると、その顔のまま飲みに出かけた。
数年ぶりに会う相手だというが、こんな歪んだ顔で会って、相手は困らないだろうか。
少し心配する。
翌朝、ベッドから起きてきた夫の顔は、更に2.3こチューインガムを突っ込んだみたいな顔をしていた。

11月16日(木)

まだ夫の顔は腫れていた。
昨日よりもしっかり腫れて、ドアノブみたいになっていた。
この日夫は仕事で青森に行き、とても大事な仕事をする予定があった。
もちろん、ドアノブをぶら下げて行った。
その日会った方々はご高齢の方が多く、おそらく次に会う時は世代交代して、この世にいない方も多いだろうという中、冗談みたいな顔でめちゃくちゃ大事な仕事をこなした。
ドアノブジョークが効いたのか、無事にまとまったらしい。
長旅で疲れたのか、いつもより「シーシー」言いながら、夫は頓服を飲んで19時には寝てしまった。

り、さんからのお題
発表会の思い出ですが、運動がからっきしダメな私は、学習発表会が行事の中で一番好きだった。
とにかく目立ちたかったので、とにかく人数が少なくて出番の多い役をやっていた。
そしたら、3年生か4年生の時に「トモちゃん」という役になった。
トモちゃんはなかなかクラスのみんなに馴染めなくてイタズラばかりする男の子(多分)の役だ。
劇の冒頭で出てきて、紐を蛇に見立ててクラスメイトにいたずらする。
そして、「へっへのへーだ!」といって面白がる。
おかげで随分、クラスの男子に「へっへのへーだ」とからかわれた。
とにかく目立ちたかったので、人数の多い役はやりたくなかった。
5年生の時は「八郎」という劇をやった。
もちろん八郎役をやったが、八郎役は30人いた。
八郎は大男なので、学年全体でマスゲームの様に八郎を作り出し、語りをする演目だった。
全くつまらなかった。

子供が通う小学校には演劇を披露する発表会がない。
子供がどんな役を選ぶのか見られないのは、少し残念に思う。

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