「寝湯」に横たわる心地よさ
10月26日
あっという間に10月が終わる。
「あっという間」を使う時に、頭の中に、「あっ」と言っている人を思い浮かべる。なぜか、江戸の町人の様なイラストで浮かんでくる。
桃屋の「ごはんですよ」のCMみたいなイラストだ。
私の中の、現代のいろんな言葉が江戸時代に生まれたという誤った認識と、江戸時代の町人はみんな桃屋のイラストみたいな顔というイメージがそうさせている気がする。
私の秋は、もう何十年も食欲の秋だった。
秋は美味しいものがたくさんある。
いも類は大好きだし、栗のスイーツ、秋刀魚、きのこ、梨、秋にちなまない様々な食べ物。
どうせ春も夏も冬も、常時、色気より食い気、花より団子、秋茄子は嫁に食わすな。
大人になってからは、少し気温が下がれば決まってワインが飲みたくなった。
夫はワインを飲まないので、一日1〜2杯何日かかけて1瓶を空ける。家なので、グラスにはたっぷりと注ぐが、ワイングラスで飲むことだけは譲れない。短くても太くても、ステムの付いているグラスは必須だ。
今はスーパーでも選べば美味しいワインが買える。
選べばなんて言って、知識なんてないので、専ら輸入業者で選んでいる。エノテカ買っときゃ間違いない。
ワインは合わせるつまみや料理も好きだ。オリーブオイル、乳製品、加工肉。前は嫌いだった果物としょっぱいものの組み合わせも、大人になり、大好きになった。今なら酢豚のパイナップルもいける。(と、思った時には、パイナップルの入った酢豚を出す店はなし。)
こんなに食べ物の話をしてみたが、今年に関しては読書の秋だ。
くどうれいんさんの日記本が出たので、本当に久しぶりに本を開いた。
そこには、野望とか、多忙とか、若さとか幸せとかがぎゅうぎゅうに詰まっていて、「それなっ!」だったり、「ほおー。」だったり、「ふふふ。」だったりが自然と出てくる、とてもいい日記だった。
私は本をたくさん読んできたわけではないし、読書家ではないが、小さい頃から、本が好きだ。
お気に入りの本を何度も読む。開いたページから読み始める、というのもよくやっていた。
大人になってから、本を全然読まなくなった。
それでも、本屋に行くと読みたいと思う本で溢れている。なんとなしに行った人に買わせるテクニックは、出版、書店業界か無印良品が最上位だと思う。(わたし調べ)ドンキホーテもすごいらしいが、なんとなしにドンキホーテに行く人種ではなかった。
自己啓発厨の夫は、定期的に大量の積読をして、私に煙たがられていたが、最近になってちょこちょこ消化し始めている。子供達が遊んでいる隙に本を開いたり、寝かしつけから生還してリビングに戻ると本を開いていたりする。
大人になってからの読書は、「何か知識を得なくては!」というなぞの使命感が付き纏い、本の世界に浸ることができなくなっていた。
くどうれいんさんの「日記の練習」では、本当に久しぶりにその気持ちを味わうことができた。浅い「寝湯」のように、気持ちいい温度で浸ることができた。
そういう読書をこれからも少しずつしていきたい。
10月28日
少し前からハマっている、「Bluey」というオーストラリアの幼児向けアニメが数日前からテレ東で始まったそうだ。
サラリと書いているが、実はかなり熱を上げている。
ディズニージュニアで初めて見た数年前は気に留めていなかったが、ディズニープラスを入れて、子供たちが一気見しているのを一緒に眺めているうちに、私の方がハマってしまい、一人で垂れ流しして見ている。
ブルーイとビンゴの二人とその家族や友達の日常アニメなのだが、これも、「寝湯」の心地よさなのだ。
無くしたくない子ども心や人生の楽しみ方が詰まっているにも関わらず、押し付けがましくない。
何もひどいことが起こらない、意地悪な犬も出てこない、まあるい世界。やさしい世界。
あまりにハマりすぎて、オーストラリア旅行の妄想計画まで立てている。
世界中で人気なので、オーストラリアもかなり推していて、「Bluey'sWorld」なるテーマパーク?もできるようで、いよいよ本格的に聖地巡礼を考えねばならないかもしれない。
「図書館の思い出」
中学以降は学校の図書室の利用回数も減ったが、小学校の時は休み時間は図書室だった。友達と行くのだが、ドアを入った後はそれぞれが好きな本の所に行く、というのも好きだった。
人気だったのは、バーバパパやムーミンの絵本と、歴史の漫画。ぼくは王さまシリーズ。私も何度も借りた。
本を借りない日は、決まって子ども百科事典を眺めた。借りられないので、図書室の床に座ってずっと眺めていた。
世界のチーズが載ったページと、果物のページ、調理器具のページがかなり好きで、そのページばかりを眺めた。ここでも食い気が強い。
当時は見たことも食べたこともない、ドラゴンフルーツやパッションフルーツ、チェダーチーズやブルーチーズもこの本で知った。一番憧れていたのは「マンゴスチン」で、ロッテの板ガムで、マンゴスチン味を発見し、しばらくそれしか食べなかった。
今住んでいる所も、前に住んでいた所も、徒歩圏内に図書館がある。どちらもしっかりした図書館だ。
予定のない休日は子どもを連れてよく行っている。
小学生の娘は好きな本を自分で読んでくれるし、司書の方に聞いて本を探したり、借りたりしている。走り回ることを生業にしている息子も、図書館で本を読む段になれば静かに聞いてくれる。(あくまで「段になれば」だけど…)
普段の読み聞かせは一冊、一回だけ…と半ば懇願しているが、図書館にいる時は同じ本を何度読んでも、何冊読んでもいいので、本当に嬉しそうにしている。
図書館が無料で利用できるようにしたことは、人間の数少ない良い行いの一つじゃないか、といつも思う。多様な知識や価値観に触れられる場所が子育てのそばにあることの有り難みは実母の有り難みやイオンのフードコートの有り難みと同じく、子育てをしなければわからなかっただろうな、と思う。