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往復書簡/N→S/2023年8月1日

巻尺様

長かった梅雨も明け、ようやく夏を迎えることができました。
長崎も佐賀も、雨に振り回された2ヶ月でしたね。

前回の書簡で書かれていた雨音への恐怖。
私もこの店がある限りは、雨漏りや、老朽している建物に悩まされるのでしょう。以前の仕事でも、何千もの他人の部屋を背負っているように、夜中であってもいつ被害の電話が鳴るともしれない恐怖がつきまとっていました。

今を100%満足な状態で過ごしたいと思うのは無理なことで、何かは妥協しなければなりません。でも、一度しかない人生なのにどうして妥協しっぱなしでないといけないのかなというもどかしさが、私が文章を書いて発表したい根源にあるものだと思います。

初めは自分のことを知ってもらいたくて書いていたのに、今は似た気持ちを持って生きている人へ向けているところもあって、だからこそ「開業記」も「エピソード0」も、本屋本の括りを超えて読んでもらいたい。
うまくいきません。10月の文フリに出て少しは変化があればいいのですが。

さて、大雨のニュースがなくなったと思えば今度は繰り返される猛暑の情報。
危険な暑さへの喚起という意味は理解しつつも、外に出ないと生活はできません。私はお店に行かないといけない。お客さんには来てもらいたい。
でも、梅雨明け以降めっきり寂しくなりました。
雨がやめば太陽は出るし、太陽が出れば暑い。だって季節は夏だから。数日くらい蝉にも鳴かせましょうよ……と、実際に熱中症になった方もいる中で簡単に本音を書けない個人経営者の叫びがむなしく響いています。
陽炎の映像よりも、せめて私は梅雨が明けて眩しく輝く太陽を、綺麗な夕焼けを、発信していきたいです。

ちなみに私は夏が一番嫌いです。

前回のお手紙、3つすべてのお題を盛り込んだ巻尺さんの中に隠れている恋愛体質な女の子の世界、なるほどと思いながら読ませてもらいました。
私も散文に挑戦してみようかなという気持ちが湧いてきましたが、とりあえず今回も短歌を詠みました。

穴という穴をふさいでなお漏れる人間偽り採掘場

お題「マスク」「ミステリー」「嘘」より

次回は「家族」「幸せ」「呪縛」でいかがでしょうか。
それでは、夏本番の8月を元気にお過ごしください。

ウニスカ

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