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「第一部・完」――NUANCE ONEMAN LIVE『HOME』神奈川県民ホール

2023年4月23日、神奈川県民ホールでNUANCEワンマンライブ『HOME』が行われた。横浜で生まれたアイドルとして神奈川県民ホールでのライブは、ひとつの大きな目標でもあった。結成時に「3年後に県民」という目標だったが(自分は初期の頃から応援しているが、これを知ったのは、つい最近・・・笑)、世界的な流行り病で5年掛かることに。また、このライブが発表された後に初期からのメンバーが1人脱退しており、オリジナルメンバー1人に去年の4月に加入した新メンバー3人という体制で挑むことになった。そんな紆余曲折がありながら当日を迎えた。

自分は当日まで集客面はかなり厳しいと思っていた。それは前回の川崎でのワンマンでも感じていたことで、オリジナルメンバーの脱退などもあり、コロナ禍前より集客が増えている実感が無かった。

実際に当日の客入りは、2~3階には客を入れず1階のみだったが、8割ほど埋まっていた。舞台が見にくいサイドの席は潰していたが、想像していたよりずっと入っていた。終演後のツイートを検索してみると、テレビやラジオで知って来た方や、共演した芸人さんのファンの方など、既存のファン以外の人を取り込めた成果が少なからずあったのかなと。

ライブ内容は、演劇とライブを組み合わせた演出に、ツードラムのバンドセットという大箱ワンマンではおなじみの編成。正直言ってヌュアンスのワンマンを過去に何度も見た人なら、特に目新しさは感じなかったと思うが、それだけに積み上げた経験による安定感があり、初見の方にも安心して見てもらえたと思う。演劇部分について、自分は舞台俳優の方の演技を見ると、どうしても照れてしまうのだけど(それでも最後はグっと心を動かされるのは流石だけど)芸人であるオジマアローと寺田寛明の両氏のパートは、それを感じず自然に楽しめた。彼らが台本を書いた影響もあるのだろう。また、彼ら目当てで来場した客も多く、個人的には影のMVPはお二人だと思う。

終わってみれば、演劇部分とライブ部分のバランスも良く、内容的にも今まで積み上げてきたモノの到達点にふさわしいワンマンだった。過去のワンマンでは、演出過多でライブ部分の盛り上がりに満足出来なかったこともあったのだが、数を重ねて無駄な部分がそぎ落とされた感じがした(とはいえ、演劇部分はもう少し削っても・・・という気持ちも正直ある)。


メンバーについて、今回のワンマンを含めて今までに思っていたことを。

稀咲 妃菜

高身長で立ち姿が美しく、ダンスもパワフルで凄く舞台映えしていた。子供の頃からミュージカルなどの経験があり、現在も大学の演劇科に通っているため声もよく通り、セリフも一番聞こえやすく存在感があった。ただ、逆にその「いい声」が曲によってはまだ馴染んでないなと感じる部分もあった(『雨粒』で、みおが担当していた箇所など、あのかすれるような小さな声がグっと来るポイントだったので)。

元々アイドルには興味が無かった彼女がヌュアンスと出会い、県民ホールの舞台に立ったことは彼女にとっても素晴らしい経験になっただろう。ヌュアンスの特徴でもある「演劇」という要素をさらに成長させる存在だと思う。

汐崎 初音

細身の体形や声質など全体の雰囲気から、初期のヌュアンスっぽさを初披露の時から感じていた。アニメやアイドルが好きというところも、それらがサブではなくメインカルチャーになった現在では普通なことで、そこが「横浜に住んでいる普通の女の子」という初期のヌュアンスのコンセプトとも合っている(他のメンバーは、なんだかんだで普通ではないと思っているので)。今回のワンマンでも『Love chocolate?』などの初期曲がとても似合っていた。

小文字のnuanceから大文字のNUANCEになった現在、小文字の空気感を引き継いでいるのは意外と新メンバーの彼女なのではないか、と思っている。

蓮水 恭美

ヌュアンスは初期メンバーから比較的に真っすぐ歌う人ばかりだったので、ややクセのある力強い彼女の歌い方がグループには合ってないと加入時は思っていた。しかし、ソロでの弾き語りなどを配信で見ているうちに、本人のユニークなキャラクターも相まって、その歌声にもだんだんと慣れてきた自分がいた。新曲が彼女の声に合った明るめの曲調だったのも良かった。歌い出しが彼女の声だと、グッと気持ちを捕まれる人も多いと思う。

この先、マスに向けてシンプルに「歌が上手い」と思わせるボーカルがヌュアンスには必要だと思っているので、その面で引っ張っていって欲しいし、運営は彼女の声にあった曲をどんどんと制作して欲しい。

川井 わか

唯一残った初期メンバー。ここまでヌュアンスを引っ張ってくれて本当に頭が下がる思い。大学の建築科に通っており、卒業するタイミングで脱退するのだろうな・・・と思っていたのが数年前。そこから大学院に進学し、二級建築士の資格も取得したので、このワンマンのタイミングで卒業発表があるかも・・・と覚悟していたが、そんなお知らせも無く公演は終了した。

失礼ながら、歌やダンスが飛びぬけて凄いわけでもなかった彼女が、ライブMCを担当し、曲中には観客を煽ったり、メンバー変更による振り付けの直しや、はたまたグッズなどの制作物にまで係わる姿を見て「成長する過程を見守る」というアイドルの魅力を体現しているのが彼女だった、と再確認した。そして、本人が持っている「わちゃわちゃ感」が今のヌュアンスのカラーでもあり、初期にあったグループの空気感とは別物になっているのは、彼女のキャラクターによるものが大きいと思う。


プロデューサーであるフジサキケンタロウは、ワンマン前日に以下のようなツイートをしていた。

2023年4月21日のツイート

フジサキ氏は「メンバーの変動はあったが、初期メンバーから現メンバーへ、ストーリーを紡いできた」と述べていたが、やはりメンバー脱退やグループ名の表記の変更(2022年4月1日にnuanceからNUANCEに)などがあると、小文字の「nuance」とは別物になってしまった感があった。

なので「商店街イベントのテーマソングを歌うために、横浜に住んでいる普通の女の子たちによって結成されたアイドル。なのに楽曲はめちゃくちゃクールで、写真はハービー・山口が撮影している」という自分の好きだった「nuance」は神奈川県民ホールには結局たどり着けなかった・・・と思っている。

しかし「NUANCE」という違う姿になったとしても、フジサキ氏にとって神奈川県民ホールはたどり着きたかった場所なのだ。横浜で生まれたアイドルが、その舞台に立つ意味の重要さは、横浜で生まれ育った自分には理解できる。

結成から6年間もの間、紡いできた「nuancen」のストーリーは、県民ホールによって「第一部・完」になったと、自分はハッキリと思った。ここから「NUANCE」の新たなストーリーが始まっていくのだろう。


以下、新体制になってから発表された新曲。今後はこういう曲風がメインになっていくのでは?と思っている。

nuance時代には少ないタイプの明るめの楽曲。作詞は児玉雨子。

サウンドプロデューサー佐藤嘉風のバンド、NIHONGO DANCEのカバー。今のメンバーの雰囲気に非常に合った楽曲。オリジナルメンバーでは出せない良さがある。

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