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外へ外へ向かうー nuance(ヌュアンス)『botän』

「ああ、新しいファンを本気で獲得しに行く気なんだな」

これが『botän』を初めて聴き終えたときの感想。前作『town』は横浜を強く意識したアルバムで、歌詞の中にも横浜の実在する地名や施設を思わせる箇所が散らばっており、それを読み解くのが楽しくもあった。歌詞についての自分の考察も、このnoteで過去に書いている。

『town』を抜け出して紡ぐ、7つのストーリー。というのが『botän』のキャッチフレーズなのだが、まさしく横浜という『town』から飛び出して、今より大勢の人にアピールするためのアルバムなのだ。botänの意味については、プロデューサーのフジサキ氏がnoteで説明している。

また、フジサキ氏は「受け入れてもらえるか心配だった」とも言っており、新しいファンを意識したため、既存のファンの反応が気になっていたのだろう。しかし実際は自分も含めて大絶賛の声ばかりだった。

ポップで明るい曲が多いし、特に『ピオニー』や『きっといつか』などのポジティブな曲調は、過去の楽曲には無かったと思う。とにかく「ヌケ」が良い。ただ、前作『town』の世界観が好きな自分みたいな人間には、そのヌケの良さにかなり面食らってしまった。「え?これヌュアンスなの?」と。しかし批判する気は全くなく、ただただ「新しいファンを獲得するぞ!」という腹の括り方に感動してしまった。

前作『town』のように、ここで歌詞の考察など書こうとは思わない。そういったマニアックな楽しみ方をする気分には、あまりならないアルバムだった。それは、より多くの人に向けて制作した作品だから、という証拠でもある。

内に内に向かう『town』、外へ外へ向かう『botän』・・・まるで対照的な二つのアルバムを2019年の一年間で出せたのは、ヌュアンスがクリエイティブの一つのピークを迎えたのではないか?とさえ感じさせてくれた。

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