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某テレビ局での打合せにて

今いちばん勢いがあると言われている某テレビ局の打合せに向かう朝。

東京歴が片手で収まらなくなって数年経つけど、新橋駅のSL広場も渋谷のスクランブル交差点も、未だに新鮮味が消えない。

田舎者の少年の心がいつまでも僕の胸の中にある。実家にしばらく帰ってなくてもそれは棲み着いていて、忘れた頃に顔を出してくる。

「打合せ」って便利な言葉だと思う。会議ほど堅苦しくもなくカジュアルに話す時間を指したり、逆に重要な取り決めが議論される場でも「打合せ」と称してカモフラージュできたりもする。

部屋の奥にある会議室に向かうため、局内の制作フロアを通り抜ける。

室内は至るところに視聴率の数字が書かれた紙がこれでもかと壁に貼られている。最先端の情報発信地なのに、ここでは清々しい程にペーパーレスの趨勢は感じられない。

受付ロビーから一般的なオフィスとは異なる空気が漂っていた。金剛力士像を四隅に配置してもまだ十分に余白があるスペースに、いわゆる業界人っぽい人が視界に一人は見切れる。

ネームバリューという言葉が好きではないが、珍しい場所に赴くという事実に浮き足立っていたのかもしれない。予定時刻の一時間も前に着いたのはきっと気分が高揚していたからに違いない。

放送局とはいえ、一流の有名人や僕の憧れの芸人さんたちにとっては定期的に通うの仕事場。入り口ですれ違った方は、毎週聴いているラジオ番組の放送作家の人の顔によく似ていた。

エレベーターで一緒になった人や社内ですれ違う方々が若くて仕事ができそうな人ばかりに見えた。ここには輝いたオーラが満ち満ちている。

都心を見渡せる上階層の角部屋で、長期的な見通しを共有する打合せが執り行われた。

結局、「今の状況では明確なことは何も分からない」ということをただ確認し合うに留まった。

今の仕事は本当に有難い。一人では決して到達できない景色を見ることができる。仕事自体は決して華々しくはないけど、社会の需要の受け口となっていて色んな人を支えている実感が持てる。

「田舎者でも東京で仕事ができるんだよ」と本ばかり読んでいた頭でっかちの青年に教えてあげたい。長く生きるのも悪くはなさそうだ。


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