母親との距離感 その2

今でこそ毎日のように顔を合わせ、それなりに仲の良い母親だが、やっぱり子供の頃は距離があったように感じる。

いや、こちらが距離を置いてたのかもしれない。

とは言うものの小学校低学年の頃などはそんな事も考えず、口うるさい母親の目を掻い潜り、いかにファミコンをやるかばかり考えていた。

相変わらずゲームに没頭していたある日の夕方、何やら台所で作業をしていた母ちゃんから呼ばれた。

知ってる、こういう時は大抵面倒な事を言われる時だ。

しぶしぶコントローラーを置いて台所へ行くと、母ちゃんは小さな棚を組み立てようとしている。
しかし工具が足りなくて難儀している様だ、そこでお使いを頼まれた。

「大家さんから『モンキーパンチ』借りて来て」

聞き慣れない単語だったが、恐らく今棚を組み立てるのに必要なモノなのであろう。

当時アパート住まいで大家さんは向かいに住んでいたので、自分は言われるまま大家さんの家にモンキーパンチを借りに走った。

「すみません『モンキーパンチ』貸してください」

大家さんは少し戸惑っていた。

モンキーパンチを何に使うのか聞かれたので「母ちゃんが棚を組み立てるのにモンキーパンチが必要みたいで、、、」と説明すると大家さんは「ああ」と納得して物置から銀色のモンキーパンチを手渡してくれた。

大家さんにお礼を言って受け取ったモンキーパンチは金属製で重量感のある無骨なモノだった。
螺旋の部分を回すと先が開閉し、何に使うかは分からないがそのガジェット感に心が躍った。

モンキーパンチ借りて来たよ!」と渡し、母ちゃんは「ありがとう」と言って棚の組み立てを続けた。



時は流れ、現在内装業をしている自分は、

工具箱にあるモンキーレンチを見る度にルパン三世を思い出す。

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