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おっ、あかりが点いた。 俺はソワソワして、こっそり辺りを見渡した。やっぱりみんなもソワソワしている。 でも、こういう時は緊張で赤くなったり、青くなったりしては行けない。 真白く、つるんと、気高くツンと。 昨日は隣のヤツが選ばれたから、今日はきっと俺に違いない。 ___ついにその時がきた。 頭の上の透明な屋根がパッカリとあき、じっと見つめられる。なんだか、黄身まで見透かされるような気分だ。 あまりの緊張にあやうく白身を飲みかけたところで、頭を掴まれた。初めて感じる
目の前に白いボタンがある。 「押さないでください」 との注意書きも特になく、真っ白な壁にただボタンがある。 僕は押したくなった。 でも、押さないでいることにした。 ひたすら押さなかった。 どのくらい押さないでいたのかも分からなくなった。 _____ピンポーン。
ある人は、胸の中にあるという。 またある人は、その人の全てだという。 ものを作る人は、手に宿るものだという。 ものを売る人は、言葉で伝えるものだという。 歌が好きな人は、揺さぶられるものだという。 歌を歌う人は、声にのせるものだという。 学問を教える人は、砕くものだという。 学問を学ぶ人は、耕すものだという。 夢を追いかける人は、正直でありたいという。 夢を与える人は、暖かく柔いという。
ふぅ、やっと玄関が出来た。 でも焦って取り付けたせいで、向こう側に鍵穴がある。 鍵は私の掌の中。 誰かこの手を取って、向こう側から鍵を開けてくれないかな。 やっとやっと、開(ひら)けそうなんだ。