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§.5 A:Assessment【災害医療学講座】


<CSCATTT、今回取り上げるのは、これ!>

C: Command & Control
S: Safety
C: Communication
A: Assessment←今回取り上げるのは、これ!
T: Triage
T: Treatment
T: Transport

<Assessmentとは何をすることか>

アセスメントについては、イメージすることが難しいように思います。概念としては、情報分析をして戦略を立てるとか、PDCAサイクルを回すとか表現することはできますが、う~ん、という感じですよね。ですので、ここでは例を挙げる形とさせて頂きます。

<調整本部要員、Assessmentする>

 例えば、地震災害の発生直後をイメージしてください。まずはCSCAに従って、県庁に調整本部が置かれるでしょう。あなたは本部要員として仕事をすることになります。発災から少し時間が経過すると、調整本部には、EMISを通して各病院の被災状況や現在稼働できるのかどうかという情報が少しずつ集まり始めます。また、各県からも続々と医療支援チームが集まってきます。ここで、調整本部は下記を決めないといけません。

【本部は立てたけど、情報がない。どうする】

到着した医療支援チームには、現地で医療活動を行ってもらいたいところではありますが、初期段階では、どこの病院がどれだけの被害を受けているのか、何が足りないのかは判明していません。従って、この段階では派遣どころか作戦を立てる段階にもありません。先に情報分析を行うために情報を収集する必要があります。だから、「情報を収集する」ための方針が必要です。到着した医療支援チームのメンバーに対して

1)本部に残って、被災状況が分からない病院に連絡を取ってもらう。
2)被災状況の分からない病院に派遣して情報収集してもらう。

このあたりが最初の動き出しとなるでしょう。その上で、病院の情報が集まり出したら、その中には、倒壊の危機にある病院や、物資が枯渇しかけている病院からのSOSが含まれていたりします。従って次は……

【病院が倒壊しそうで、患者を全員避難させたい病院がある】

☞患者情報を把握したうえで、①どこの病院に、②どのような移動手段とルートで、③誰が患者を搬送するか決定する。

【物資(医療ガスや薬剤)が枯渇しそうな病院が多数ある】

☞どの病院を優先して、どのような物資をどのような方法で補充するのかを決定する。また、補充に関しては、医療の手だけではどうにもならないため、行政や自衛隊とどう連携するかを決定する。そして、物資を送った後は、きちんと届いているかも確認する必要がある。

といったところが必要になるでしょう。さらに、災害規模が予想より大きいことが判明してくると

【傷病者が多数発生している】

☞患者搬送の流れ(例えば、被災地内だが使用可能なA空港に一旦患者を集めて被災していない隣県のB空港に空路で移動し、そこから近隣の病院に分散して搬送するフローを作る)を作成する必要がある。

災害対応が長期化してくると、こんなことも発生します。

【どうやら、避難所で感染症が広がっているらしい】

☞アルコールやトイレ、段ボールベッドといった物資をどうやって確保し、どうやって送り届けるのかを決定する。感染症対応の専門家に情報を共有して、必要な対策を行う必要がある。対応を行った後は、感染症の発症が減っているかを検証する必要がある。

【隣県の福祉施設がパンパンで、福祉施設からの避難者の受け入れ先がない】

☞大きな体育館を借りて、一時的な福祉施設を作るという戦略もとれますし、遠方の福祉施設にも搬送するという作戦もあり得ます。また、社会福祉士といった調整が得意な医療職を増員して、調整速度を上げるという手もあります。どの手が最適かは、収集した情報から判断する必要があります。

<再度、Assessmentとは何をすることか> 

 恐らくAssessmentとは上の例のような「発生している問題に対してどう対応するのか」を決めることと考えてしまってよいでしょう。
 そして、対応を決めるために必要なのは情報です。医療チームを派遣しようにも、物資を送ろうにも、どこに何が足りていないのかが分からなければ、動き出しようがないためです。
 また、動き出した後も、動き出しっぱなしではいけません。動き出した後は、現在の方針・戦略で適切に活動ができるかを検証し、必要部分を見つけ出し、方針と活動に反映させる必要があります。ようやく、PDCAサイクルというやつですね。

<Column>

 Assessmentと書くと難しいですが、変な話、Assessmentはそこら中にあります。
 例に挙げた【病院が倒壊しそうで、患者を全員避難させたい病院がある】というケース。本文では、本部からの視点でとらえたので、どこにどう搬送するかという話でしたが、その手前にあるのは、各病院が行ったAssessmentがあります。
 つまり、建物の状態や物資の残量、入院患者さんの状況から、
①緊急で患者全員を非難させる必要があるのか
②緊急でないが患者全員を非難させる必要があるのか
③物資の補給をしながら現状の入院・診療体制を維持するのか
④被災が少ないので、むしろ他院のぶんも頑張る意味で、診療体制を拡張するのか
いずれの方針にするのかをAssessmentしなければならないのです。このAssessmentが完了して初めて、関係機関と協力して動き出すことができます。このように、1つ1つの決定それ自体が、情報に基づくAssessmentと言えるでしょう。


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