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救急外来の学習に使った書籍たち

はじめに

「救急外来の勉強のためにお勧めの書籍を教えてください」との問いに回答すべく、「私が勉強した感じでは、こんな流れで読むのがいいのではないかな?」と思った書籍たちをご紹介させて頂きます。但し、いくつか前置きがあります。

1)人によってフィットする書籍は異なると思われます。

書店で手にとって、これが勉強しやすいと思った本が、各人にとってベストの書籍ではないかと個人的には思います。なので、ご紹介の書籍は、私という個人に合ったものになります。

2)書籍以外にも学習手段があります。

今や、動画教材を始めとして、様々な学習教材にアクセスできる時代です。活字が合わなければ、他の手段を探すのも一計と思います。

3)病院ごとのルールやお作法があります。

これは、現場で臨床をしながら学ぶしかありません。医療の標準化が進んでいるとは言え、この病院ではこうしている、この先生はこうしているといったルールのようなモノは、その病院から、その先生から学ぶしかありません。

4)救急外来を乗り切るための書籍をご紹介します。

最後に、ここからご紹介するのは、病棟の勉強やICUの勉強のための書籍ではありません。また、私が小児救急に関わっていないため、こちらも割愛しています。というところまで飲み込んで頂けましたら、是非お付き合いください。

最初に買って読むといいなと思った3冊

1冊目:救急外来 ただいま診断中!

理由)救急外来でこれ以上なく大切なことは、①目の前の人を死なせないことと、②帰宅させると死ぬ人/重症化する人を帰宅させないことです。この書籍を最初の1冊として提案するのは、たとえ診断に至れなかったとしても、①&②を守るためにまず学ぶべき事項が詰まっていると考えるためです。
*本書籍の中で、心停止時の蘇生についても解説があります。心停止時の対応を知ることは、救急外来では必須ですので、より詳しい学習をしたい方は、下記のいずれかへ!

◇ACLSプロバイダーマニュアル(1)
ACLSコースのガイドライン。世界標準の心肺蘇生の教科書です。

◇ICLSコースガイドブック(2)
☞日本救急医学会の編集した心肺蘇生のガイドラインです。

2冊目:研修医・若手医師のための 外来必携

理由)よくある内科的な主訴に対する鑑別疾患をどう考えるのかについて教えてくれる1冊です。一般的なマニュアル本には、鑑別疾患が山と載っていますが(実際には、山と載っているわけではないのですが、不慣れなうちはそのように見えると思います)多すぎて情報の海に溺れてしまうように思います。この書籍の強みは、ある主訴に対して考える必要のある疾患の数を絞って話を進めていることです。情報過多になるのを避けながら、最初の土台作りを助けてくれます。

3冊目(★):問題解決型救急初期診療

理由)救急外来に出る際に、ポケットに入れておくと便利な1冊です。ちょこちょこ調べながら診療するために使用します。ポケットマニュアル的な書籍はいくつも出版されているのですが、使用してみて、「で、結局どういう薬をどれだけ処方すればいいのさ?」といった結論部分の記載が整っているように思いました。(ただ、現実的には書籍でいろんな書籍を見て、合うものを選択する!でよいと思います)

外科系強化のための3冊

4冊目(★):救急整形外傷学

理由)救急外来で診療する外科系疾患の大部分は、骨折等の整形外科領域です。本書は非整形外科医が必要な整形外科的知識を網羅しています。本書の内容をコンパクトにまとめた「救急整形外傷レジデントマニュアル」も出版されていますが、私は「コンパクトにまとめていない」ほうが記載が詳しく読みやすかったので、こちらをお勧めします。
*本書籍の中で、外傷初期診療についても解説があります。外傷初期診療の手順を知ることは、救急外来では必須ですので、より詳しい学習をしたい方は、下記へ!

◇外傷初期診療ガイドライン(3)
☞多発外傷、重症外傷を診療する際の基盤となるガイドラインです。

5冊目(★):マイナー外科救急レジデントマニュアル

理由)救急外来で診療する外科系疾患で、「整形外科領域ではない」部分まで含めて網羅している書籍となります。救急整形外傷学と本書の2冊があれば、外科救急についてはほぼ全体がカバーされますので、あまり困ることはないように思います。

6冊目:骨折ハンター

理由)外科系救急では、レントゲンを読む能力が診療クオリティーと直結します。本書は非整形外科医のためのレントゲンの読み方から始まって、整形外科医にどのように繋ぐのかについて解説されています。
*ちなみに私は初期研修医のとき、この本を読んでもちんぷんかんぷんだったので、先に下記の2冊を読みました。その後、骨折ハンターを読むと、「ナルホドね」となりました。どっちもお勧めです。

◇当直でよく診る骨折・脱臼・捻挫(4)
☞症例ベース、対話形式で読みやすく、局所外傷の基本を学べます。

◇フローチャート整形外科診断(5)
☞非整形外科医のための鑑別の流れが記載されています。

内科系強化のための3冊

7冊目:心電図ハンター(実際は2冊ある)

理由)最大の理由は、心筋梗塞や致死性の不整脈を見落とさないようにするためです。STがしっかり上がっていたりすると、ピックアップできると思うのですが、STが上がっていなくても危ない心電図はあります。胸痛、動悸、息切れ、高齢者の吐気……。そういった場合に多用される心電図がストレスなく読めるようになるために有用な2冊だと思います。
*ちなみに私は初期研修医のとき、心電図が分からな過ぎたので、以下の2冊を先に読みました。合わせてご紹介。これらも、お勧めです。

◇ほぼ初めての心電図(6)
☞まさに手取り足取り、心電図について教えてくれます。

◇3秒で心電図を読む本(7)
☞心電図をどう理解するか、心電図をどう読むかを教えてくれます。

8冊目(★):すぐ役立つ救急のCT・MRI 改訂第2版


理由)今日の救急外来は、画像診断なしには成り立たないものになっていると思います。従って、画像診断を学ぶことは不可欠です。本書は典型的な疾患の画像を集めた画像集です。また、初学者にはありがたいことに、取り上げられている疾患について、最低限の要約が記載されているため、読みやすく、勉強しやすい1冊だと思います。

9冊目(★):研修医のための内科診療ことはじめ

理由)内科救急診療(と、内科病棟対応)に必要な知識が大変に分かりやすく、理由も添えてまとめてある書籍だと思います。今回紹介する書籍の中では、最も分厚い1冊ですが、非常に読みやすく、頭の中も整理される1冊です。内科救急を深めるために強くお勧めする書籍です。

手技強化のための1冊

10冊目:ねじ子のヒミツ手技(実際は2冊ある)

理由)救急外来では、採血やルート確保を始めとした基本的な手技を学ぶ場という側面もあると思います。手技に関する書籍があまたある中で、これらが勉強しやすいと感じたのは、①マンガ調のイラストで読みやすいことに加えて、②手技のステップが細かく解説されていて「この、ステップと次のステップの間ってどうなっているの?」という疑問がほとんど湧かないこと、そして、③手技がそのような手順になっている理由や、気を付けることの記載が充実していることなどでしょうか。

おわりに

ここまでで、タイトルに(★)がついた本が5冊あったかと思います。これは、実際に救急外来で働く際に、「これどうだっけ?」というときに調べるために、持ち歩いている(というか休憩室に置いている)書籍になります。
私は勝手に書籍を、理解用(例えば疾患や診療について学ぶもの)と検索用(現場で調べるのに使うもの)に分けています(というか、読んでいる間に分かれていきます)。今回上げたものは、私の中では★付きが理解用&検索用のもの、★がついていないのは純粋な理解用です。

さて、10冊に抑える予定で、結果的に20冊近くご紹介してしまって恐縮です。と言いつつ、最後にもう1冊だけご紹介します。仮にも人にお勧めするというスタンスで筆を進めているため、番外になってしまっているのですが、私が最も長時間お世話になった1冊です。

◇ER実践ハンドブック(8)
☞何がよかったのかは、正直よくわかりません。ただ、私にとっては最も合った1冊でした。手垢がつくほど、(というか実際にページが取れたりして、買い替えるほど)お世話になりました。是非とも手に取ってみてくださいね!

以上、私にとって使いやすかった書籍になります。ご自分に合う部分だけ、摘まんで参考にして頂けたら嬉しいです。では!



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