大学教員の有給休暇はどう取得する?(有休取得義務違反書類送検)

令和3年7月8日、愛知県の津島労基署は給食管理業の栄屋食品株式会社を書類送検しました。皆様もご存知のとおり、平成31年4月から労働者の有給休暇5日取得が義務化されています。

判決の意義

愛知県では同制度施行後初の書類送検ということです。今回は事業所が複数ある会社の中でも、10人以上の労働者がいて、有休の時季指定権を行使できるにも関わらず、怠ったという理由での書類送検となっています。どうやら、この会社は令和3年6月にも賃金の未払いに関する書類送検を受けているようで、労基署も警戒していたのではないでしょうか。

時季指定権を怠る不作為

「不作為」は使用者側が一番気をつけなければいけないことです。気づいていたにも関わらず、配慮しない、あるいは見過ごしていた結果、労働者に不利益が発生しつ続けている状態を指しますが、結構あるあるではないかと感じています。

というのも、特に日本の文化に近いものなのかもしれませんが、細かいことは置いてけぼりになりがちで、とにかくみんな納得しているんだから大丈夫だろうという風潮が少なからずどの会社にもあるのではないでしょうか。

例えば、労働時間の丸めなんていうのはよくある話です。本来労働時間はきっちり一分単位で記録することとされていますが、15分単位まで丸めて就業週報が作られるところや、ひどいところだと30分というのも聞いたことがあります。

さて、このような使用者側の「不作為」というのは労働争議になった際には負け確定の要素になりますので、気がついた時にはすぐ対応することが必要です。今回のケースでは、有休で休んだ人の代わりに店長が穴埋め出勤しなければならない現実があったらしく、店長らがそれを嫌って有休を取得させなかったことが原因となっています(書類送検はその店長ら3名)。

大学教員の有休はどう捉える?

私が聞きたいぐらいですが、大学業界では非常に難しい問題なのではないでしょうか。なぜ難しいかというと、教員という職業自体が労働者性とは程遠い存在であるからで、それは時間が決まっている「教育」という仕事と、理系の一部以外ではかなり自由裁量となっている「研究」という仕事の二つの性格を有する労働を担っているからです。

私は先生方の仕事を否定するつもりはありません。学生時代に夜中ほどレポートの筆が乗る経験もしていますし、やはり知的財産を生み出す仕事ですから、労働時間よりも研究成果の方が遥かに重要である観点からすると、我々事務職員のように法定労働時間8時間のような業種ではないわけです。

とはいえ、文科省もそのあたりには何も言及しないので、社会一般的にはやはり「労働者」として扱うしかないのです。これについては不満しかありませんが、運用で解決するしか今のところはありません。

では、どこで取得するのか?

運用で解決しようとすると、どうしても無理が出てきてしまいます。多くの場合、一斉休暇中等の数日にこの有休休暇の時季指定を行うパターンではないでしょうか。これが最も平和的であり、実態を考慮すると限界なような気がします。残りの部分を私用等での休講時に活用するなどすることで穏便に解決が図られるように思います。

しかし、この問題は先生方の仕事の仕方が、やはり一般的な労働者的性格とは大きく違うことが原因であり、現在の厚労省の施策が労働者保護に向いていることを思うに、我々人事屋さんはまだまだ頭を悩ませる問題が出てきそうですね。

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