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2019年2月の記事一覧
あたしのソレがごめんね⑥
第六章 -もう一つのトラウマ-
私の目の前で朝美が蛾次郎くんに飛び掛かった。
「蛾次郎あんた夕希に何したの!!!!」
「朝美やめて!蛾次郎くんは何も悪くないの!!!」
私は後ろから抱きかかえて朝美を止めた。
ソレが強く朝美に当たる。
直って。お願いだから元に戻って。
蛾次郎くんから離れた朝美はソレが見えないように私をかくまってくれた。
「で、なんで夕希が泣いてんのよ」
朝美は蛾次郎くんを睨み付
あたしのソレがごめんね⑦
第七章 -新しい道-
あたしが蛾次郎に飛びかかった日から蛾次郎はボート屋に来なくなり、夕希は今まで以上に感情を表に出さないようになった。
周りにあたししかいない時でさえ前みたいに笑ったりむくれたり呆れたりしない。
「そうなんだ」「知らなかった」「よかったね」
どんな話題にも当てはまりそうな相づちをプログラミングされたみたいに返してくる。
いまどき人工知能だってもっと人間味のある返事をすると思う。
あたしのソレがごめんね⑧
第八章 -雑音-
私が感情を捨ててから少し経った頃、朝美は驚くほど勉強をするようになった。
ボート屋のバイトが終わった後も一人で小さな映画館に行って古い映画を観て、本も沢山読むようになった。
朝美がこんなに文化的な人間だと思っていなかったので正直かなり驚いた。
それと同時に今まで何となく感じていた生きづらさが少し軽くなったのを感じた。
朝美が別の何かより私のことを優先するたび、私は生きる歓びを強
あたしのソレがごめんね⑨
第九章 -見えている星-
夕希に「うるさ」と言われた翌日、あたしは高校に入って初めての期末テストで学年一位をとった。
あたしが勉強が出来るような風貌じゃなかったからか、周囲はとても驚いていた。
特に母親はあたしのカレーにハンバーグを乗せるくらいはしゃいでいた。
知ることは面白いし、やればやるほど進められるのが楽しくて仕方なかった。
初めての感覚だった。
この体で、頭で、どこまでもいけると思った