見出し画像

「含み損バリア」から見る長期/短期戦略

4月からのハイグロ暴落相場。日々の下落で気が滅入る毎日ですが、「含み損バリア」という言葉をご存知でしょうか。

「含み損バリア」とはNUKさんが提唱された概念で、「『1日で-10%下げた』と聞くと辛いが、すでに買値から-20%下落しているため、実際は-8%しか減っていない(から気持ちを強く持とう?)」という考えです。
https://twitter.com/nukkunnuk/status/1524385804856197120

この「バリア」はどれほどの威力を持つのでしょうか。
指数関数的に増える/減る現象は直感的に捉えづらいので、もう少し具体的に見ていきます。

ロングポジション

上昇時

まずは前提条件として、上昇相場を見てみます。実際の計算結果は以下の通り。
B列の回数だけ+10%, +10%, +10%……と増えていく時に、資産が何倍に増えていくかをC列に表示しています。そしてその1回だけを取り出した時、実際に建値の何%増えている計算になるのかをD列に示しています。

例えば、13行目を見ると、+10%を9回繰り返した頃には、資産は2倍になっており、最後の1回は、株価的には10%の上昇にもかかわらず、建値から計算すると17.72%の上昇を受け取れていることが分かります。

28行目まで進むとその差はさらに広がります。+10%を25回繰り返すと、資産は約10倍まで増えています。いわゆるテンバガーというやつですね。ここから+10%上昇すると、建値相当では98.5%、つまり約2倍の上昇を受け取れるのです。株価が10%上がるだけでバガーが1つ増えると考えるとすごい事ですよね。
これが俗に言う「複利の力」。長期投資の旨味はここにあります。

下落時

ここからが本番。-10%ずつ下がっていった場合の実際の損失率を見てみます。

例えば、12行目。-10%を8回繰り返した頃には、資産が半分になっています。そしてこの時に株価が10%下落したとしても…建値から計算すると-5.3%しか減らないのです。なんだかちょと得した気分…?これが「含み損バリア」です。

27行目まで進むと、もはや資産は元値の1/10にまで落ち込んでしまっています。ここまで行くと、ここから株価がさらに10%下がったとしても、自分の資産は1%しか減らない計算になります。うーん喜んでいいのかどうなのか 笑。

上のC列とE列をグラフに表したものが下図。「複利の力」としてよく見るものですね。

横軸:±10%の回数
縦軸:建値からの倍率

「含み損バリア」のグラフ(F列)も掲載しておきます。

横軸:±10%の回数
縦軸:実際の損失率

ショートポジション

言わずもがなですが、ショートポジションではこれが完全に逆になります。

+10%を9回繰り返すと資産はゼロに。そこからは坂を転がり落ちるように借金が増えていきます。
グラフはこちら。

横軸:±10%の回数
縦軸:建値からの倍率

損失は青天井なのに、利益は最大でも2倍。ショートポジションを長く持ち続けても旨味は増えず、短期勝負を繰り返すしかない。ショートが難しいと言われる所以ですね。

結論と私の見解

ここまで「含み損バリア」について見てきました。逆説的ではありますが、「含み損バリア」の恩恵(?)を受けるということは「損切りのタイミング、時すでに遅し」であることを示している、と言えると思います。

というのも、建値から計算して%が減らないということは、裏を返せば、「額」で見れば既に十分建値から下げきってしまっている(これ以上下げる余地がない)ということだからです。

具体的に言うと例えば、100万円のエントリーでスタートした場合、

 ・100万円→50万円→25万円→12.5万円

という半減期の中で「額」に注目すると、1回目の半減期では50万円も減るのに対し、2回目の半減期では25万円しか減りません。この資産の目減りの経緯を通して「前回は50万も減ったのに今回は25万しか減らなかった」と喜べますか…? でもこれが「含み損バリア」の正体なのです。

そしてこれは「含み益バリア」にも同じことが言えます。十分な厚さの含み益バリアがあると思っていても、削られるダメージは最初の方が大きいといえるでしょう。

👺さんも

「鬼滅の刃」より

「判断の遅さは命取り」と言ったように、利確も損切りも「迅速な判断が最重要」ということを再認識させられました。

ここから先は

0字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?