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オリックス・バファローズ 荒西祐大投手の2021年前半戦を振り返る

こんにちは、シュバルベです✌︎('ω'✌︎ )

今回は2019年オフにオリックス・バファローズの投手のキーマンに挙げ、それ以降定点観測をし続けている荒西祐大選手について書いていきます。

ちなみに、シーズン前に昨年の荒西投手のまとめ記事を書きました。

長いですが、こちらもぜひご参考に笑

1.荒西投手の前半戦

プロ3年目を迎えた荒西投手ですが、前半戦終了時点で一軍登板は0に終わってしまいました。ルーキーイヤーから8先発を含む13試合に登板、2年目は中継ぎ専任となり29試合に登板したことからすると、これは本人にとっても大きな誤算だったでしょう。

今年の二軍での登板成績(前半戦終了時点まで)は次のようになります。

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リリーフでの登板を主としており、唯一の先発登板は7月9日に先発予定だった東投手がワクチン副反応で登板を回避した試合でした。この試合では4回を被安打2、無四球、5三振の無失点に抑えており、こうしたスクランブル時にも何事もなく自分の仕事をこなすところが荒西投手の良さだと私は考えています。

悟さんのサイトによる投球データをもとに、今年の二軍での荒西投手のピッチングを見てみましょう。

6月の球種ごとのゾーンマップはこちら。

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スポナビ野球速報で表示されていないですが、映像を見る限りストレートの中に速いシンカー(≒ツーシーム)が包含されているはずです。実際の映像とも照らしながら打者を打ち取る構成は次のようになります。

■右打者:内に食い込む速球と、外に逃げるカット・スライダーで左右を広く使って抑える
■左打者:外に逃げるストレート・シンカーと、外のボールゾーンからストライクゾーンに入れるカットで、外の出し入れによって抑える

昨年までの一軍の試合を観ていて、左打者の攻め方に変化が見られます。

かつてはツーシーム・シンカー系のボールでインコースのボールゾーンからストライクゾーンに曲げ入れるフロントドアを使っていましたが、今年の二軍のピッチングではデータ上でも映像でもあまり見られていないようです。

荒西投手が右打者より左打者を得意としている理由はこのインコースの使い方だったと感じていただけに、この攻め方の変化は気になるところではあります。勿論、一軍に上がった時に二軍と同じかと言えばそうではないので、これは昇格してからどうなるかという後追いが必要になるでしょう。

投球フォームでは、昨シーズンの後半から継続してアームアングルを下げて完全にサイドスローとなりました。2月の練習試合から並進時に左足で右手を隠すような動作を取り入れており、試行錯誤の痕が見られます。このアームアングルの変更は、よりシュート成分の強いボールを投げること、スライダー・シンカーといった左右の打者にとって逃げるボールの変化量を大きくすることが目的と考えられます。

二軍では着々と結果を出しているので、上でどうなのかに期待がかかりますね。

2.なぜ前半戦一軍に上がれなかったのか

二軍では好投を見せている荒西投手がなぜ一軍に上がれなかったのかを考えてみましょう。

一つ目は、荒西投手自身のコンディションの問題です。

故障なのかフォーム修正なのかは明らかになっていませんが、4~5月に大きく登板間隔を空けています。イースタン開幕後まもない3月24日に登板すると、次にマウンドに上がったのは5月23日。一軍では平野投手・ヒギンス投手が離脱した時期で最も中継ぎ運用で苦しんでいた時期に荒西投手も離脱してしまったのは痛手となりました。

二つ目は、オリックス一軍の先発投手の層の厚さに起因するものです。

山本由伸・宮城大弥・山岡泰輔・田嶋大樹・山﨑福也。高いクオリティーでゲームを作れる先発を5枚抱え、6枚目にはベテランの増井投手や竹安投手を起用してきました。オリックスの先発投手陣はリーグで最も安定した防御率3.14を誇り、先発投手の平均イニング5.9イニングもリーグで最も高い数字となっています。

ゲームを作れる先発が多い=リリーフの登板機会は減ることを意味しており、現にオリックスのリリーバーが前半戦で消化したイニング数はリーグ最少の243イニング。次点がソフトバンクの263イニングなので実に20イニングもの差があります。

昨年の荒西投手はビハインド時のロングから、中盤の僅差場面などで起用されてきましたが、今年に関しては今一軍にいるメンバーも含めてその役割の投手を抱える必要性が薄くなっています。これは良質なスターターを抱えている故の恩恵で、若く盤石な5枚の先発陣がいる限り、継続することになるでしょう。

三つ目は、同カテゴリーの熾烈な一軍争いです。

開幕間もないころ、オリックスは平野投手・ヒギンス投手という強力なリリーバーを欠く試合が続き、漆原投手や富山投手ら20代前半の若い投手をクローザーにも起用しました。右のパワーピッチャーという制圧力に長けたリリーバーが不在だった一方で、荒西投手と同じサイドスローの枠にはベテランの比嘉投手と大卒2年目の村西投手が入っています。

一般的に左打者に弱いとされる右サイドスローの投手を3枚一軍に抱えるのはバリエーションの面でメリットが薄く、6月~7月にかけて荒西投手が二軍で好投を見せても上がれないという現状はこの希少な枠争いに依るものです。

4.後半戦の展望

大前提として先発の枚数が揃いそれによって中継ぎの登板数が抑えられていることはチームにとって望ましいことです。3章で挙げた5人の先発投手がしっかりとローテーションを守っている限り、昨年荒西投手が活路を見出したロングリリーフやビハインドでの試合繋ぎという役割の必要性は薄れます。

しかしながら、6月22日の日ハム戦で山岡投手が1イニングで降板、その後の検査で右肘の関節炎が判明しました。それ以降、現在行われているエキシビションマッチでも登板はありません。

山岡投手の離脱後、山崎颯一郎投手・本田仁海投手の2人の若手投手が揃って一軍初先発で好投を見せたものの、穴を継続的に埋めるのは簡単ではありません。

こうした状況下では、先発/中継ぎ/ロングリリーフと経験を積んでいる荒西投手のようなピッチャーが求められる可能性があり、後半戦の出だしは一軍昇格のチャンスです。

オリンピック期間中に行われているエキシビションマッチは昇格に向けて最大のアピールの舞台で、7月27日のスワローズ戦に登板。1イニング目はオスナ選手を三振に取るなど三者凡退に抑えますが、回跨ぎとなる2イニング目はヒット2本で1失点。

試合後の中嶋監督は次のように評価しました。

試合後、中嶋聡監督は、2番手として2イニングを投げた荒西祐大について「悪くなかったですよ、1イニング目は」と評価しつつ、「何が課題かというところ。何のために2イニング目を行かせたのか? 2イニング目はどうだったのか? 複数イニングを任された投手は1イニングだけよくてもね。内容が悪かったとか、そういうのではないけれど、求めてるところはそこ。2イニングをどうまとめてくれるのかというのはある」と続け、起用の意図と課題を指摘した。
2021年7月28日付BASEBALL KINGより)

ご覧いただいた通り、厳しめの評価だったと感じます。1イニング抑えられることは当然で、複数イニング任せているからにはそこまでしっかり抑えて帰ってきてほしいという期待をされていた分、十分応えられなかったのは残念でした。

荒西投手と同じサイドスローというカテゴリーで括った時に、今年の比嘉投手・村西投手はともに対左の被打率が対右よりも悪く、左打者に対しても強みを持つ荒西投手は残り2か月の戦いの中で一軍の戦力にしたいという思いはあるでしょう。荒西投手にはどうにか結果を出して一軍昇格の日を心待ちにしたいと思います。

5.さいごに

オリックスは前半戦を首位で折り返し、24年ぶりの優勝に向けて残り2.5か月余りを戦います。残り試合は56試合。少ないようですが、各球団なりふり構わず戦う後半戦は一層熾烈な戦いが増え、主力選手の疲労も蓄積していくでしょう。

特に前半戦に多くのイニングを消化した先発陣が後半戦でもパフォーマンスを継続できるか、そして若い選手で構成されたチームがどこまでプレッシャーに耐えきれるか、相手チームからの研究を乗り越えられるかは未知数です。

後半戦の戦いは荒西投手だけでなく、吉田一将投手や海田投手など様々な経験を積んできたベテラン~中堅選手の働きが1試合の行方を左右するかもしれません。若手とベテラン、そしてその間を繋ぐ中堅選手の献身的な働きが嚙み合って、やっと優勝という文字は現実味を帯びてきます。

中嶋監督のエキシビションマッチでのコメントは厳しいものでしたが、キャンプ直前にケガをして開幕二軍スタートだった宗選手が不動の三塁レギュラーになったり、福田選手が4月~5月の長い二軍生活を糧にセンターで輝くなど、監督が選手を見捨てることは無いことを私たちは知っています。

荒西投手も結果を出し続ければきっと後半戦で必要とされる試合が一軍で来るはずです。私たちファンが出来ることは応援することぐらいですが、来るべきその日を心待ちにしましょう。

オフの一年まとめ記事ではその活躍を描けることを楽しみにしています。

■出典


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