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2020年スワローズのキーマン(野手編)

さてオリックスに続いてスワローズの投打のキーマンを書いていきます。まずは野手編です。

早速ですが、@deltagraphsさんがアップロードしているスワローズの19年ポジション別得失点をご覧ください。

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山田哲人選手のいるセカンドと、バレンティン選手のいたレフトで高い得点能力を有する一方、三塁および右翼では攻守に大きなマイナスを背負い、スワローズのウィークポジションとなっています。また、バレンティン選手が退団したことでレフトの得点力も減少し、昨年ベースで考えれば青木選手が守るセンターを除く外野2ポジションがスワローズの弱みになると考えられます。さらに年齢的な観点では青木選手が38歳、雄平選手が35歳なので、3年後レベルの直近で考えても外野手は新陳代謝が必要なポジションになっています。

この状況を鑑みた上で、私が選ぶ野手のキーマンは3年目の塩見泰隆選手です。

■塩見選手を分析する

神奈川県の強豪武相高校から帝京大学に進学、その後社会人の名門JX-ENEOSを経て17年にドラフト4位で指名された塩見選手。今年は社会人3年目、27歳のシーズンとなり、まさに正念場の年を迎えます。

まずは昨年の基本的な成績を振り返ってみましょう。

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開幕を一軍出迎えたものの、3月・4月は24打席でわずか1安打と大不振。夏場は二軍で過ごすことになり、結果を残して再昇格。9月は41打席11安打1本塁打と、シーズンの最後でやっと2020年に向けて希望を残す成績を見せてくれました。特に9月10日の阪神戦で延長10回に代打出場しタイムリーを放ってヒーローになった試合以降、強い打球がヒットゾーンに飛ぶようになりました。

続いて、プロ入り後2年間の一軍・二軍の成績をそれぞれ見てみましょう。

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一軍ではまだ目立った成績を挙げられていない一方で、二軍では2年続けてOPS1.0越えと抜群の成績を収めています。19年のイースタンリーグで200打席以上たった打者は77人いますが、OPS1以上ある選手は塩見選手ただ一人です。ウェスタンリーグを含めても広島のメヒア選手のみですので、いかに二軍で無双しているかが分かるはずです。

さらに、年によって変動の少ないBB%、K%を見てみましょう。

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二軍でのBB%・K%が同じ数字になっていますが、誤りではなく、共に50個ずつです。一軍の投手に対しては三振が多く、四球をそこまで取れいていない一方、二軍では多くの四球をもぎ取り三振も少なくなっています

この2年間の二軍での数字を見る限り、既に二軍でやることは無く、あとは一軍の高いレベルの投手と対戦しどれだけ結果を残せるか、という次元にあると言えるでしょう。

19年の一軍成績はお世辞にもいいとは言えないものでしたが、18年に比べて改善している数値も勿論あります。その一つが以下のゾーン別スイング率/コンタクト率です。

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ストライクゾーンに来たボールに対するスイング率は前年+10%、逆にボールゾーンに対するスイング率は-6%で、ゾーンの見極めは前の年よりも向上したと言えるでしょう。ストライクゾーンのコンタクト率こそ前年-3%ですが、ボールゾーンのコンタクト率は+22%と大幅にUPしているので、今後さらにボールの見極めができるようになれば三振の減少と四球の増加につながりそうです。

ただし、ボールゾーンにもコンタクトができてしまうがゆえに凡打も増えており、打球のゴロ率は57.8%で前年より20%近く上がってしまっています。今後はボールになる変化球をファールで逃げる技術も身に着けていく必要がありそうです。

次に守備面です。センターでの出場が135イニングで最も多く、次いでライト、レフトと外野3ポジションすべてについています。センターでのUZRは+0.5でほぼ平均的な指標ですが、守る回数が少ないのでこれだけで判断するのは難しいです。昨年それなりに試合を見てきた中では、派手なプレーやずば抜けた強肩というものはありませんが、無難にこなしているという印象です。

導入に記載した通りスワローズの外野手陣は青木選手が38歳で、雄平選手が35歳なので、27歳の塩見選手がセンターやライトをリーグ平均程度守ってくれれば、ベテラン2人に休息を取らせることができます。

走塁面では、4盗塁で失敗は1つなので成功率80%でした。二軍では23盗塁をマークしており、盗塁の技術を持っているスワローズには貴重な選手といえそうです。スワローズは昨年、合計62盗塁していますが、そのうち33盗塁が山田選手でした。盗塁は得点に対する貢献度はそこまで大きくないというのがセイバーメトリクスでの評価ですが、成功率の高い盗塁ができることは勿論チームにとってプラスになります。

盗塁を除く走塁指標の一つであるUBRは+2.4で、走塁面においても塩見選手は足を活かしたプレーができるので、青木選手・雄平選手と差別化ができています。また、同2選手が左打なのに対し、塩見選手は右打です。坂口選手(昨年は怪我で、二軍でも主に一塁についているため来年のポジションを首脳陣がどう考えているかわかりませんが)、山崎選手、上田選手といった外野のライバル選手のほとんどが左打なので、塩見選手が今年一軍で結果を残すことはチームの選手層に厚みを加えることに直結します。同じ右打で長打力のある2年目の中山選手より走塁・守備面では優れているため、今年は出場機会に恵まれるのではないか、と予想しています。

■今年一軍で活躍するためには

昨年の基本的なデータを踏まえたうえで、今年”一軍で”活躍するためには何が必要か考えてみましょう。既に記載した通り、塩見選手は二軍でこれ以上やることはありません。一軍で経験を積み、結果を出してレギュラーを取るタームに入っています。そのために必要なことと、その目標値を3つ考えてみました。

1.三振を減らす

昨年のK%=24%は、今後主に1番・2番を担っていく選手として考えると高すぎです。セリーグの1番打者で最もK%が高かった神里選手が370打席で27%でしたが、次に高い山田選手と阿部選手は20%です。特に塩見選手はコンタクト率を上げ、一軍のボールに昨年慣れ始めていると考えられるので、まずK%=20%まで下げることを一つの目安にしたいところです。

2.打者優位のカウントで振り切る

塩見選手の昨年のカウント別打撃成績を見ると、ボールが先行するいわゆるバッティングカウントでの成績が芳しくありません。

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これらのカウントではストライクゾーンに投げてくる確立が高く、狙い球を絞りやすいのでしっかりスイングをして長打を打ってほしいところです。俊足を活かし、ツーベースやスリーベースを積極的に狙い、目安としてシーズンでの長打率.400を一つのバーとして設けたいですね。

3.守備走塁を怠らない

スワローズのデプスを再掲しますが、守備指標でプラスを出しているポジションがほとんどありません。外野に関しては青木選手・雄平選手・坂口選手とも30代後半で、やはり足の衰えは隠せません。彼らの後を担うためにも、塩見選手は20代のうちに足と守りでいいところを見せる必要があります。守備ではセンターでのUZRを通年通してプラスで終わらせること、走塁面では20盗塁と通年通したUBRプラスを目安として見たいです。

■さいごに

バレンティン選手が退団し、青木選手・雄平選手が選手としてのピークを過ぎている状態で、塩見選手は怪我さえしなければ多くの出場機会を得ることができると考えています。二軍は勿論、18年のオフに参加した台湾ウィンターリーグでも打率・本塁打で1位となっただけに、あとは一軍での経験と実績だけ。オープン戦次第では開幕スタメンも十分あるのではないか、と思います。

稀代のヒットメーカー青木選手をレフトに回し守備負担を減らしたり、好不調の波の激しい雄平選手を長打のある右打の中山選手とローテーションできたりと、塩見選手が活躍することによるチームの戦術の多様化は計り知れません。

まずは怪我無く、そして基本を忠実にこなし、今年回ってくる打席でしっかりと成績を残してくれることを期待したいですね!


※各データは

・ESSENCE of BASEBALL(https://1point02.jp/op/index.aspx)

・nf3(http://nf3.sakura.ne.jp/index.html)

・アメリカ大手データサイトのfangraphs(https://www.fangraphs.com)

を参照しています。

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