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【どこよりも詳しい】オリックス新外国人ジェイコブ・ワゲスパック投手徹底分析

こんにちは、シュバルベです( ・∇・)

12月17日、オリックス・バファローズは一気に3名の新外国人獲得を発表しました。ジェシー・ビドル投手、ジェイコブ・ワゲスパック投手、ブレイビック・バレラ選手です。

どんな選手か気になりますので各選手について記事を書きあげていきます!
第一弾:ブレイビック・バレラ選手はこちら↓↓

第二弾:ジェシー・ビドル投手はこちら↓↓

最後となる今回は、先発右腕として期待のかかるジェイコブ・ワゲスパック投手です。

1.ジェイコブ・ワゲスパック投手の成績

ジェイコブ・ワゲスパック(Jacob Waguespack)投手は現在28歳、198cm107kgの大型右腕で今年はトロント・ブルージェイズに所属していました。現ジャイアンツの山口俊選手と2020シーズンは同僚でした。

今シーズンは残念ながらメジャー昇格は無く、1年通じて3Aに在籍し次の成績を残しています。

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24試合中10試合に先発登板、防御率は2点台でWHIPは1.21と好成績を残しました。25.3K%と奪三振が多い一方、与四球は7.2BB%、被弾は3本のみで優秀なスタッツでシーズンを終えたと言えるでしょう。

直近4年間のMLB/MiLBの成績は次のようになります。

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メジャーデビューは2019年。初登板は4イニングのロングリリーフで7奪三振無失点と結果を出すと、同シーズンにMLB16登板(うち13先発)し防御率4点台。3Aでの登板も合わせると年間130イニングに登板しました。

更なる飛躍を期する2020シーズンでしたが、一転して11試合すべてリリーフ起用で防御率8.15と厳しい結果に終わり、マイナーリーグ開催が無かったために上がるきっかけを作れませんでした。

18年・19年は3Aで防御率5点台でしたが今年は2点台と大きく良化しており、簡易的な指標でも好成績をマークしています。28歳という年齢を考えると今が脂の乗った時期かもしれません。

次の項目では投球内容について詳しくみていきましょう。

2.ジェイコブ・ワゲスパック投手の投球内容

2-1.球種構成

ワゲスパック投手はどのようなボールでピッチングを組み立てているのか。こちらは2020年MLBで投げた11試合での球種構成および球速・被打率等のデータです。

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フォーシームと速いシンカーで投球の半分近くを占めています。残り半分は中間球のカットボール、オフスピードボールのチェンジアップとカーブの3球種が同じぐらいの割合で投じられています。

フォーシームは平均148.9km/h、高速シンカーは146.8km/hでリリーフとしてはやや物足りない球速ですが、フォーシームの被打率は.206。追い込んだ時やボールカウントが先行した際はフォーシームを多く投じており、ワゲスパック投手が最も自信を持っている球種となっています。

メジャー登板のあった2019年と球種割合を比較したのがこちらです。

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リリーフ転向という与件があったためフォーシーム割合が10%近く増加、19年に投げていたスライダーは封印し、チェンジアップの割合を増やしています。球速帯の異なるボールを4つ持っているので、基本的には先発向きと考えてあげたほうがいいように思えます。

2-2.ホークアイで見る球質の考察

ワゲスパック投手の課題は変化球です。2020年はすべての球種で被打率.400越えと散々な成績でした。各球種の被打率は2019年→2020年でこのように悪化しています。

チェンジアップ:.167→.444
カットボール:.260→.455
カーブ:.146→.600
シンカー:.271→.400
スライダー:.389→投球無し

19年に打たれていたスライダーを封じましたが、他のすべての変化球で大幅に被打率を増やしてしまいました。

こちらはワゲスパック投手の各球種の変化量とリーグ平均を図表化したものです(左が2019年、右が2020年でともにMLBでの結果)。

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どの球種を見てもリーグ平均より横変化は少ないですが、概ね平均値に近い変化量を持っています。フォーシームおよび高速シンカーは2年ともホップ量が平均よりやや多く、チェンジアップとカーブは19年より20年の方が垂直方向への変化は大きくなりました。

こうして各球種を見ると変化量に関してはMLB投手の平均に近い能力を持っており、落ちない/曲がらない→打たれた、という図式ではなさそうです。MLBよりも均一性の高いボールをNPBでは使用することになるので、変化球の質が打たれている割に悪くないというのはプラス材料でしょう。

2-3.フォーシームの球質と組み立て

Baseballsavantをみていくと、一つ気になることが出てきました。回転数です。こちらは各球種の回転数です。

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ワゲスパック投手の特徴として、回転数が少ないことは挙げられるでしょう。

フォーシームはMLBで2200~2300回転が毎年平均ですが、ワゲスパック投手のフォーシームの回転数は2020年1,990回転。平均を大きく下回っています。変化球も軒並回転数が少なく、19年→20年で回転数はすべての球種で減っています

フォーシームに関しては、東京ヤクルトスワローズが今年から導入したホークアイのデータを一部公開したことでNPBでの比較もできるようになりました。

こちらは、①ワゲスパック投手のフォーシームの変化量 ②今年来日し好成績を収めたサイスニード投手のフォーシームの変化量(MLB/NPB) ③スワローズの右投手のフォーシームの平均変化量 ④山口俊投手のフォーシームの変化量 をプロットしたものです。

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サイスニード投手のフォーシームはMLBではカットボールと判定されるぐらいシュート成分の少ない球でしたが、ワゲスパック投手のフォーシームも同じぐらいシュート成分の少ない球質です。ホップ成分は多く、同僚だった山口俊投手とは対極に位置するような球質のフォーシームを投げていることが分かります。

サイスニード投手は神宮球場で登板した際にシュート成分・ホップ成分とも増加し、上の表で「CySneed(2021)」という位置に来たのですが、ワゲスパック投手のフォーシームもこれに近しい変化が起きる可能性は高いです。

ただ、サイスニード投手の場合フォーシームの回転数は2,300回転を超えているので、この点はワゲスパック投手との違いです。逆に2,000回転行かないのにホップ成分が出るというのは不思議ですね。ワゲスパック投手がMLBでもフォーシームの被打率が低いのはこの特殊な球質ゆえかもしれません。実際、回転効率は92.8%と高く、スピン量は少ないですが変化量にしっかりと反映されるフォーシームを投げられています。

この特殊なフォーシームを高めに投げることでワゲスパック投手は多くの三振を取っており、高めのフォーシーム×低めのチェンジアップ・カーブが基本の攻めになることになります。カット、シンカーは球速が出ているのでフォーシームに偽装することも可能ですし、チェンジアップの横変化量はフォーシームとほぼ等しいのでNPBで有効に働きそうです。

高めのフォーシームはこんな感じです。

ボールの下をバットが通るような軌道ですね。

低めのチェンジアップはこんな感じ。

回転数が少ない分、チェンジアップ系のボールはデータで見る以上に落ちているように見えませんか?

オリックスの捕手陣は伏見選手を筆頭に高めのボールも効果的に使いたい意図を持った配球をするので、ワゲスパック投手のパフォーマンスを最大化できるのではないかと思います。

3.ワゲスパック投手に期待すること

ここまで書いてきましたが、大事なのは彼が来年からオリックス・バファローズにどのような貢献をしてくれるかです。

起用法としては、先発で運用されるでしょう。オリックスは山本由伸投手を筆頭に、山本・宮城・田嶋・山岡・山﨑福の5人が(万全なら)ローテーションをがっちり守ります。ワゲスパック投手はまず6番手を山﨑颯一郎投手、増井投手らと争い勝ち取れるか、それがキャンプ~OP戦での見極めになります。

今年優勝したとはいえ、オリックスの外国人投手はヒギンス投手以外ほぼ貢献できず外国人投手が活躍することはチームの力のUPに繋がります。ジェシー・ビドル投手は中継ぎ専門職、バルガス投手は独立L出身ということで、先発として優先起用されるのはワゲスパック投手になるため、期待値も高いでしょう。

一方で、1年目から先発として活躍できる外国人投手は年々減ってきています。まずは次のKPIをクリアするところからかなと思います。

シュバルベ的KPI
・先発10登板以上で70イニング越え
・防御率3点台
・10BB%を切り、20K%を超える

これぐらいできれば勝敗はともかく来季の契約が見えると思います。

ワゲスパック投手は、19年に多くの投手が苦手とする初回の失点が少なく、1イニング目の防御率は2.77。立ち上がりに崩れないという点は、決して攻撃力が高くないオリックスにとってありがたい部分です。逆に5イニング目に最も多くの失点が嵩んでおり、スタミナという点に関してはどうなのかなと思うのでうまく運用したいですね。

今回獲得したブレイビック・バレラ選手、ジェシー・ビドル投手に比べて少し安い7,000万という契約ですが、球質や投球の組み立てなど見てきた感じで実はこのワゲスパック投手が一番期待できるのではないかと期待しています。結果を残せれば来年は億プレイヤーです。がんばれ!!

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