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オリックス新外国人A.ジョーンズはこう使え!

昨日、オリックスが正式に獲得報道をしたアダム・ジョーンズ(Adam Jones)選手。2017年WBCの日本対アメリカ戦では2番センターで出場、決勝点を記録されたほか、アメリカ対ドミニカの決勝ではホームランキャッチで魅せ、記憶にも新しい選手ではないでしょうか。オリオールズの印象が強く、今年はMLBを追えていなかったため移籍していたのも知らなかったですが、巨人ジェラルド・パーラに続く大物メジャーリーガーの来日は純粋に楽しみです。ここではジョーンズ選手の現在地と、オリックスでの起用法について考えていきたいと思います。なお各データはESSENCE of BASEBALL(https://1point02.jp/op/index.aspx)、nf3(http://nf3.sakura.ne.jp/index.html)、アメリカ大手データサイトのfangraphs(https://www.fangraphs.com)を参考としています。

■ジョーンズ選手の現在地(打撃編)

今年34歳になったジョーンズ選手。右投右打190cm/102kgのスラッガーで、メジャー14年間で通算282本塁打。2013年にシルバースラッガー賞を獲得、守備でもセンターで4度のゴールデングラブ賞を獲得するなど攻守に優れたバリバリのメジャーリーガーです。それこそ同じ"AJ"をイニシャルに持つ元楽天アンドリュー・ジョーンズ選手はキャリアの最後を日本で過ごし、13年に楽天優勝のキーパーソンとなりましたが、アダム・ジョーンズ選手はどうでしょうか。まずは今年の成績を見てみましょう。

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今年もメジャーで137試合に出場、ホームラン16本を放ち長打率.414と全盛期に比べれてパワーの衰えも見られますが、来日する打者としては十分強打者と言えるでしょう。また、打球方向を以下にまとめましたが、引っ張ったレフト方向〜センター方向が圧倒的に多いプルヒッターです。

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もちろん日米の違いはありますが、Pull%(引っ張り方向への打球)=43.9%は日本で言えば中村剛也やウィーラーが近い数値です。右のプルヒッターということでメジャーではシフトをしくことも多かったですが、日本でもこれだけ極端だと三塁よりに内野はシフトを敷きそうですね。(シチュエーションは考慮されていませんが、今年メジャーではシフトなしだと打率.312、シフト有りだと.273となっています。)下の図はジョーンズ選手の打球をゴロやフライ、ラインドライブなどに分けてフィールド上にプロットしたものですが、ゴロは悉く三遊間に集まっています。捉えたラインドライブは逆方向も多く、ホームランはレフト〜センターのみとなっています。ツボに入ったボールは引っ張ってホームラン、パワーを活かしてヒット性は満遍なく左右に、という傾向が見えますね。

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次に注目したいのは出塁率です。打率.260で出塁率は.313と低く、三振も101となっていて、このあたりに今年メジャーではなく日本を選んだ理由が見えてきそうです。実際、四球割合5.9%、三振割合19.1%で、BB/Kは0.31と三振は来日外国人の中で少ない方なのですがゾーンの見極めが良いとは言えません。なお通算でBB%=4.5%、K%=18.6%、BB/K=0.24と、多くの選手同様、三振と四球の傾向は大きく変わらないです。

細かく見てみると、ジョーンズ選手のスイング率(Swing%)は54.1%と極めて高い数値となっています。ちなみに15-16年は60%を超えており、これは日本でフリースインガーの代名詞的な選手であるSB松田選手の56.2%より高くなっています。余談ですが、スワローズのMr.フリースインガー雄平でも51%です。下表はストライクゾーンとボールゾーンのスイング率とコンタクト率をまとめたものです。

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積極的にスイングしていますが、ストライクゾーンのコンタクト率は86.9%と悪くなく、ゾーン内で勝負してくる状況に持ち込められれば本来の力を見せられるでしょう。問題はボールゾーンのスイング率41.4%です。コンタクト率は悪くないものの、NPBでもっとも高かったロペス選手でも38.7%なので、ゾーンの見極めはある程度できないものとして寛大な心で見守る方が賢明でしょう。甘いゾーン内のボールを引っ叩いてレフトにぶち込んでくれればいいんです。なお、各ゾーンのスイング率、コンタクト率から、NPBで近い打者を敢えて挙げるならロペス選手です。(ちなみに来日前のロペス選手の3A成績が、ジョーンズ選手のMLB成績とかなり似ています。フォーシームに対応できず、カット・カーブに強かった点まで似ているので不思議なものです。)

全盛期ではストレート系のボールに滅法強かったですが、ここ数年は年齢もあってマイナス指標となっています。それでもどの球種に対しても大きなマイナスはなく、カッターにはプラス指標、カーブにも対応しているので、MLBよりストレートの遅い日本の野球はジョーンズ選手にとってやり易い環境になりそうです。もっとも、先のスイング/コンタクト率表を念頭におくと、日本の投手はストライク・ボールの投げ分けで勝負する選手が多く、重要なことにストライクゾーンも広いので、多くの外国人選手同様、4月〜5月は苦しむこともありうるでしょう。

また、左右関係なく打てるので、長いシーズンでスタメン出場するには大きなアドバンテージとなります。19年、ジョーンズ選手は右投手からはOPS.728、左投手からはOPS.726。ここまで左右で差がない選手は珍しいでしょう。

■ジョーンズ選手の現在地(守備・走塁編)

WBCをはじめ、センターのイメージが強いジョーンズ選手ですが、今年はセンターでの出場は1試合に留まり136試合はライトについていました。直近5年のポジション、試合数、守備範囲を測るUZRと、送球の貢献度を測るARMをまとめたのが下表です。

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2016年度からセンターとしてUZR、ARMともマイナス指標に落ち、特に17年18年のセンターでのUZRはマイナス二桁と大きく下落しています。16年はちょうど30歳になったシーズンで、年齢的な要素が強いのかなと考えられます。18年からライトでの出場もするようになりましたが、このポジションでのUZRはマイナスの値も小さく、肩も他の選手と比べて悪くありません。流石は元ゴールドグラブ賞センターだけあって、ベテランの域に差し掛かっていてもライトは問題なくこなせそうです。オリックスの今年のライトUZRは-2.1でパリーグ二位でしたが、そこにほぼそのまま入ることを考えれば守備に破綻をきたすことはないと言えます。

走塁面について、まず盗塁はキャリアハイの12-13シーズンで16個、14個と決めていますが、ここ5年間では年間2〜3個と少なくなっています。最も、ジョーンズ選手は盗塁を期待されているわけではないので、それ以外の走塁面も見てみましょう。盗塁を除いた走塁の指標であるUBRと、併殺をどれだけ阻止し得点に貢献できたかを図る指標であるwGDPの数値を直近5年間でまとめたものが以下です。

走塁指標

さすがに19年はUBRがマイナスで出ていますが、NPBで450打席以上たった外国人の最高値が楽天ブラッシュの-0.4であることを考えると、外国人選手の中ではかなり優秀な走塁能力を有する選手となります。プルヒッターのためwGDPは低く出ますが、これは仕方ないでしょう。

これら守備・走塁のデータ面から、ジョーンズ選手はライトとして起用すれば平均程度の守備をこなし、走塁については外国人選手の中でもかなり頑張ってくれるコアプレイヤーになりうるといえそうです。

■オリックスはジョーンズ選手をどう使うべきか

これまで打撃・守備について書いてきましたが、ジョーンズ選手の偉大な点の一つは2008年にレギュラーを掴んでから12年間、すべてのシーズンで100試合以上出場し500打席以上経験しているタフネスさです。これは今年戦力外になってしまったロメロ選手(今季3度怪我で離脱、81試合331打席に留まった)との大きな違いで、年間通して計算できる強打者の加入を意味しています。それではオリックスは2020シーズン、どのようにジョーンズ選手を運用するべきか考察してみましょう。

まず決まるのはポジションで、守備編に記載した通りライトがベストでしょう。これまでのイメージでセンターと言いがちですが、UZRを見てもARM指標を見てもライトでの起用以外選択肢として挙がってこないです。ジョーンズ選手はこれまでも外野手としてメジャーで出場し続け、怪我の不安も少ない選手であるため、ライトでスタメン固定することができるのはオリックスにとって大きなプラス要素です。オリックスは2019年、ライトの起用に苦しみスタメン出場を経験した選手だけでなんと12人。最も出場が多かったのはなんと内野が本職の中川選手で41試合ですので、オリックスにとってのウィークポイントの一つであるライトにジョーンズ選手が入ることでむしろストロングポイントになりえます。

次にファンが最も気にしているであろう打順についてです。19年Dバックスで最も多かったのは4番でした。4番として51試合、5番として26試合、1番および6番としての起用が23試合と、メジャーでも中核打者としていい打順に配置されています。なお、18年オリオールズでは2番として57試合、4番として55試合、3番として32試合でそれ以外の打順では1打席も立っていません。今年オリックスの打撃はパリーグの中で最も悪く、チーム出塁率.309、長打率.353、OPS.662と3つすべての指標でリーグ最下位でした。そこからオフにロメロ選手(打率.305、出塁率.363、OPS.902)が抜け、このままでは圧倒的な火力不足に陥ることは歴然としている中で、ジョーンズ選手に期待されているのは長打力です。打撃編でも述べた通り、ジョーンズ選手はおそらく球界屈指のフリースインガーとなりますので、どれだけストライクゾーンに投げざるを得ないシチュエーションを作れるかが実はカギになってきます。実際、19年ジョーンズ選手はランナーがいる状況のほうがほぼ全ての指標が良いというデータがあります。

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これゆえ、ジョーンズ選手はWBCをはじめ2番で起用されることも多かったのですが、現在のオリックスに入ることを考えると最も長打力があると見込まれるジョーンズ選手は4番に配することがベストと考えられています。さらにメジャーで4番を任せてもらっていたジョーンズのプライドとして、実際4番以外の起用をすることは難しいと考えられます。4番ライトジョーンズ選手、は非常事態が起きない限り確定路線でしょう。打撃編で述べたように、左右どちらの投手に対しても成績を残せる点はスタメン選手としてとても心強いものがあります。さて、今年のスタメンから来季組みそうな打順は以下のようになるのではないでしょうか。(※各ポジション最多出場選手から出した予想です!!)。

1番(二)福田

2番(遊)大城

3番(左)吉田正

4番(右)ジョーンズ

5番(指)ロドリゲス

6番(一)中川

7番(三)小島

8番(中)西浦

9番(捕)若月

一番に俊足の福田、二番に小技もきく大城、三番に「最強打者」を入れ、四番・五番にパワーヒッターとスタンダードな打順構成のように思えます。しかし、これは本当に良い打順なのでしょうか?大里隆也氏のコラム(http://archive.baseball-lab.jp/column_detail/&blog_id=15&id=39)によれば、初回を終えた時点で1点リードしていれば勝率.656、2点なら勝率.796となっています。また、どのチームも最も失点が多いイニングは初回であり、初回に何点を取れ、何点に抑えられるかは試合の趨勢を決めるのです。上記の打順は初回に点を取りに行くときに最善でしょうか?1番福田は出塁率.342、2番大城は出塁率.329です。リーグ平均の出塁率が.326であることから、この出塁率は決して高いものとは言えません。1番、2番の出塁率が低い=3番吉田正に回るときランナーがいる確率が下がる、ということになります。初回により多くの点を取るためにはどんな打順を組むか…私の組み方はこんな形です。

1番(中)宗

2番(左)吉田正

3番(指)ロドリゲス

4番(右)ジョーンズ

5番(一)中川

6番(遊)安達

7番(三)大城

8番(二)福田

9番(捕)若月

1番宗選手は反対も多いかもしれませんが、177打席で打率.270ながら出塁率.370と高い出塁能力を有し、足もある選手です。37%の確率で出塁する宗選手の次にOPS.956の吉田正尚選手を入れたのは、ランナーがいれば長打で返し、ランナーなしでも.413の出塁率があるので高確率でワンアウト一塁以上のシチュエーションを作れます。ランナーがワンアウトで出ることが出来れば、3番打者が併殺を打たない限りランナーがいる状態で4番ジョーンズ選手に回すことができる、それが上位打線の狙いです。守備負担の少ない一塁には中川選手を入れ、5番に入れ打撃に専念させたいという意図です。実際、中川選手の一塁起用時のOPSは100打席で.920と極めて高い数値で、初回から複数点を取りビッグイニングを作りたいという意味で入れました。

打順の組み方は9人決めていても36万通り以上あるため、いろいろな考え方がありますが、上に書いたのは私の中でオリックスが最も点を初回に取れる確率が高そうだという意図で組んでみました。やはり打順組みを予想するのは楽しいですね。2番ジョーンズ、もとても面白いと思うのですが、右打者のため併殺も増えやすくなりますし、やはりプライド的に無理だと判断しました。それに吉田正尚選手以上の出塁率はジョーンズ選手に残せないと思われるので、より多く打席を回したいのは吉田選手かな、と考えました。

■さいごに

ジョーンズ選手が加入したとはいえ、東京オリンピックに出場する気持ちを表明し福良GMもそれを認めているため、オリンピック後の再調整など様々な変動要因が考えられます。高い打撃成績を誇ったロメロ選手は今季ほとんどが指名打者だったため、彼が抜けた穴を新外国人のロドリゲスが埋められないとプラスマイナスゼロに近くなってしまいます。DH吉田正尚選手でも、今度はそこにあいたレフトを誰がやるのかと言えば、佐野選手や西浦選手と言った守備型選手になってしまいます。そこも含めた上でFAには参戦して欲しかったのですが、今からできることはレフトを守れる新外国人の獲得と各個人のレベルアップしかありません。佐野選手、西浦選手だけでなく、小田選手、後藤選手、西村選手ほか、外野のレギュラー争いを苛烈にし、ジョーンズ選手加入による外野全体の攻撃力のアップを目指して欲しいですね。まずはバリバリのメジャーリーガー、ジョーンズ選手を観に行きましょう!!

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