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オリックス・バファローズ シーズン半分を終えて

こんばんは、シュバルベです。8月もほぼ終わり、オリックスバファローズも全体の半分となる60試合を終えました。7月に1/4経過時点でのレポートを行いましたが、そこからどうなったのか書いていきたいと思います。

シーズン30試合=シーズンの1/4経過時点での記事はこちらをご覧ください。

まずは現在の順位表から。

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前回投稿時は5だった借金は18まで膨らみ、五位ライオンズとは5ゲーム差の最下位と低迷しています。ソフトバンクに2勝13敗、ロッテに1勝11敗と、この2チームに大きく負け越していることが響いています。

直近で最大のトピックスは監督の交代。8/19の試合後、借金16を抱えた責任をとり西村監督が辞任の要請を受け入れる形で退任。中嶋二軍監督が一軍監督代行に昇格し、それに伴い大幅なコーチ陣のシャッフルも行われました。

監督交代による影響については最後に書くとして、チーム全体の成績としては防御率4.31でリーグ4位チーム打率は.242で6位得失点差は-62で、30試合経過時点での-19から悪化の一途を辿っています。前回4勝8敗だった一点差ゲームはここ30試合で1勝4敗。1点以上の点差がついて負けてしまうケースが多く、接戦にすらならないという苦しい状況が続いてしまいました。

それでは、投打別に以下詳しく見ていきましょう。

2-1.先発投手

現在のローテーションは、山本→田嶋→山岡(7/27復帰)→山﨑福也→張→アルバースとなっています。開幕時の先発ローテーションは山岡→田嶋→山本→アルバース→K-鈴木→村西でしたので、開幕からローテーションを守っているのは山本由伸・アルバース・田嶋の3投手となります。3人で28試合177イニングを投げており、これは先発投手全体の55%。調整期間が少ない中でも開幕から2か月超、彼らは良くやってくれています。山崎福也投手は開幕ローテーションからは漏れたものの、開幕後2カード目からローテに組み込まれています。各投手のここまでの成績はこちら。

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30試合経過時点では3.66でリーグトップだった先発投手の防御率は現在4.31。勝ち負けでは1/4終了時点で8勝9敗だったところから大きく転落し11勝23敗で、先発投手で借金12を背負ってしまいました。この30試合で先発投手に3つしか勝ち星が付いていない点は現在の順位に直結していると考えられます。ちなみに、最も先発投手に勝ち星が付いているのはソフトバンクで23勝14敗で貯金9です。

一方、勝敗は当然ですが投手の能力と一致するものではありません。インフィールドに飛んだ打球は野手の守備や球場の影響を受けるからです。投手の個々の能力を最も単純に見ようとしたときに、私が参考にしているのが奪三振率(K%)・与四球率(BB%)・被本塁打率(HR/9)の3つの数値です。チームごとに3つの数値を見てみると以下のようになります。

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オリックスの先発投手陣はK%ではリーグ4位の19.4%BB%ではリーグ6位の10.5%HR/9ではリーグ3位の1.04となります。各指標は必ずしも上位チームと大きく離れているわけではなく、少なくとも先発投手の能力からすれば30試合中3試合しか白星がつかない事態は想像できません。ここから個々の投手を見てみましょう。

勝ち頭で日本を代表する若手右腕となりつつあった山本由伸投手ですが、直近5試合は30イニングを投げて0勝1敗防御率4.80。4被弾を浴び、17の四死球を出すなどらしくない登板が続いています。それでもK%は昨年の23.0%から28.2%に良化、BB%も7.0%で昨年と大きく差はありません。最も大きく変わった数値は何か。いくつか指標を見たところ、ゴロ率の低下が一つ挙げられます。18年・19年と57~58%あったゴロ率が今年は46.2%。昨年と比べて平均球速や球種割合も大きく変わっておらず、特に球速は昨年よりも若干増している中で、球種別にみると今年はフォーシームの被打率が.338被本塁打5

今年の被弾はすべてフォーシームを打たれており、各球団がフォーシームに狙いをつけてフライ性の打球を上げることで山本投手攻略の糸口としているのではないかと仮設が立てられます。もっとも、今の山本投手の成績はリーグでも当然トップクラスで、殊更にフォーシームの質を気にしたり配球を変えたりする必要はないと思います。ただし、今後も継続して活躍していくためには他チームの研究に対する進化が求められるのは間違いありません。セリーグNo.1等者である菅野投手を例に挙げると、彼は球種の割合が毎年変動しており、今年であればカットボールの割合を10%程度減らしスライダーに充てています。今年の変化は必要ありませんが、来年どのようなピッチスタイルになるかは気にしていきたいところですね。気が早いですがw

防御率で山本投手を上回る3.02を記録しているのが3年目左腕の田嶋投手。いまだに被打率.201whip1.07クローザークラスの対打者コントロールができています。フォーシーム平均は140kmで、シーズン1/4時点に比べ約2kmUP。今年から計測されている平均137kmツーシームを7%程度投じており、Pitch Valueでも+1.9とプラス指標となっています。今年は全ての試合を3失点以内に抑えており、QS率70%は素晴らしいの一言。数字通り今最もオリックスで安定した投手だと言えるでしょう。

アルバース投手は8/16SB戦で2回4失点でマウンドを降りた試合が響き前回投稿時より数字を落としてしまいました。それでも直近5試合中2試合でQS達成、ここまでの全登板で4失点以下とやはり大崩れすることなくゲームメイクができています。基本的に若月選手とバッテリーを組んできましたが、8/23西武戦では初めて伏見選手とバッテリーを組み5.1回を3失点。この試合はテレビで観ていたのですが、西武の徹底した高め狙いとそれに対するバッテリーのインコースボールゾーンの使い方は大変面白かったです。

10試合登板し100球を超えたのは1試合で、やはり年齢から来るスタミナの部分が気になるところではありますが、貴重な先発左腕として怪我さえなければ稼働してくれることを改めて示したシーズンとなっています。

2014ドラフト1位指名で獲得、プロ入り後は先発・中継ぎと立ち位置が安定しなかった左腕の山﨑福也投手は今年先発に定着。8/14,21と2試合続けて7イニングを投げており、球数は115球,100球と比較的少なく抑えています。指標としては昨年と大きく乖離しているものはなく、昨年中継ぎで投げていたボールを先発として今年は再現できていると言えるでしょう。

山﨑投手のマナーピッチはなんといってもこのカーブ。105km前後の膨らみの大きいスローカーブと115km前後で垂直方向に落ちるカーブの二種類を使い分けています。

ここまでチームでイニングを稼いでいる上位四人の先発投手を見てきました。いずれの投手も五回登板すれば三回は試合を作れるだけの投球をしています。故障明けの張投手も2試合投げ昨年と同様に145km前後の強いフォーシームを投げており、復帰後早々に勝ち星をあげました。

吉田一将投手が2カード続けてショートスターターとして登板しましたが(この点はシーズン終了後にでもオープナー2020記事として書きます)、山岡投手の復帰により元の中継ぎ起用に配置が戻ると想定されます。山岡投手が本来のピッチングをできれば先発陣には大きな支えとなるでしょう。

2-2.リリーフ投手

次にリリーフ陣を見てみましょう。リリーフ全体で205イニングを投げ防御率は4.26。前回投稿時は4.76だったため、今もリーグ最下位とはいえ大きく良化しました。K%・BB%・HR/9はこちら。

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前回投稿時にリーグ5位の日本ハムにも2%近く差を開けられてしまっていた奪三振率は16.8%→18.2%となり、HR/9も1.04→0.97と共に改善されています。こうしてみると首位に立つソフトバンクは先発・リリーフとも奪三振率で1位・HR/9も1位で投手の選手層の厚みを感じさせますね。

クローザーにディクソンセットアッパーにヒギンスという勝ちパターンの構成は変わらず、ディクソン投手は8セーブ、ヒギンス投手はチームトップの11HPをあげています。開幕から長くAチーム(僅差での登板)としてリリーフを担ってきた山田修義投手が8/23に今季初めての登録抹消、若手の吉田凌投手齊藤投手が結果を出し序列を上げています。Bチーム(ビハインド・ロングでの登板)として荒西投手がここまで定着し、入替で上がってきた富山投手や漆原投手ら若手投手もまずはビハインドのショートイニングで経験を積んでいるというのが現状です。個人の成績を見てみましょう(人数が増えてきたので5試合以上かつ5イニング以上の起用がある選手に絞りました)。

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まずクローザーのディクソン投手について。前回も指摘した通り、奪三振率が昨年25.3%→15.6%に大幅にダウン。与四球率は前回より改善されたものの、凡庸な数字となっています。それでも防御率は2.04と奮闘できている要因は何でしょうか。数字を見ている限りでは、奪三振能力が下がった一方で、ゴロを打たせる割合は67.9%(昨年64.4%)と極めて高くなっています。球種割合では昨年もっとも投じていたのはナックルカーブで投球の58%を占めていましたが、本年は43%に割合を減らしています。代わりにフォーシームの割合が19%→29%、チェンジアップが1%→4%と割合を上げており、さらにチェンジアップはPitch Valueで+0.3とプラス指標となっています。前回投稿時にはこの変化は見られなかった(カーブの割合は48%でした)だけに、直球系とカーブのツーピッチスタイルでは三振が思うように取れなくなったことで、投球スタイルを模索し、130km台中盤のチェンジアップをアクセントとして加えるようになったと考えられます。

セットアッパーのヒギンス投手は前回投稿時から大幅に指標を改善しました。K%は21.4%→24.5%、BB%は16.7%→12.8%となり、ここまで22イニングを投げ被弾0という素晴らしい成績となっています。シーズン1/4時点ではランナーを毎回出していたので揺り戻しの可能性に言及していましたが、見事払しょくしてくれました。素晴らしい!!

平均150kmのフォーシームと130km中盤のチェンジアップの2球種で投球の90%を占め、120km台のカーブボールをアクセントとするというピッチングスタイルは、ディクソン投手に類似しています。チェンジアップは上の動画だとバットが下を潜るような形の空振りが多く、金子千尋投手が得意とした落ちないチェンジアップに近いものなのかなぁ、とも思います。リリーフ投手として最も避けなくてはいけない本塁打を未だ浴びていない点はチームにとっても大きく、リードした展開で8回を迎えればヒギンスーディクソンの2投手で逃げ切れる可能性がかなり高いと計算できますね。

リリーフのAチームとして支えてきた山田投手は8/23に再調整として登録抹消。2度の三連投など開幕からフル回転してきました。8/19~22の間に3度登板し66球を投じていたこと、特に22日に27球を投じ失点を喫したことから疲労を考慮されての抹消ではないかと考えられます。指標的にも与四球率が前回9.1%→14.4%と悪化し、得意としてきた右打者の被打率も.083→.227となっていました。

山田投手の抹消をベンチワークとして可能にしたのが齋藤綱記投手と吉田凌投手の20代前半の若い2人の台頭です。昨年までは思うような結果を残せていませんでしたが、ともに7月に一軍昇格を果たしてから徐々に序列を上げて今やリリーフのAチームとして活躍しています。前回投稿時に次のように書いていました。

不安を抱える中で、直近で上がってきた左の齋藤投手が7試合を投げ自責点3とまずまずのピッチングをしており、同じ左の山田投手の負担を軽減させることができればリリーフの運用も多少は楽になってくる気配があります。四球を1つも出していない制球力を今後も発揮してほしいですね。現状、一軍と二軍の入れ替えが激しく、リリーフという役柄上も短期間での結果が求められる段階で齋藤投手に続くピッチャーが求められています。

齋藤投手はその後も制球力を遺憾なく発揮し、BB%は5.1%。10イニング以上投げている投手でこれよりBB%が良い選手はSB森・SB嘉弥真・L増田・M有吉・M唐川の5人だけです。彼も山田投手と似ていて、左投手でありながら被打率は対左.282対右.250と右打者を得意としています。投球の56%を構成するスライダーは左右どちらにも使える武器となっており、齋藤投手の成長が山田投手に休息を与えたと言えます。

吉田凌投手も左右の別はあるもののスライダーが投球の58%を占めており、ヒギンス投手同様ここまで被弾0に抑えています。フォーシームは平均143kmと右投手としては遅い部類ですが、twitterでも話題になっているように2種類のスライダーを制球良く投げることで被打率は驚異の.106。BB%は15%ありますが、8/20西武戦から4試合連続で無四球と改善の気配もあります。

縁の下の力持ちというべきBチームを担っているのは荒西投手。7/26~30にかけての4試合連続登板や、8度の回跨ぎに代表されるように、多少雑に運用しても大きく調子を崩さない頑丈さとメンタリティーはチームの投手運用を楽にしています。HR/9=1.72はかなり悪い数字となっていますが、SB・M・Eの上位3チームとの対戦では18.2イニングで7失点(防御率3.37)と健闘しています。私としてはシーズン前から球速をビルドアップして先発で見られれば、と言っていた選手ですが、残念ながらフォーシームが143.8km→141.4km、カットボールが133.8km→132.1kmとむしろ遅くなりリリーフに落ち着いてしまいました。7月後半のワンポイント的な使い方は三振を多くとるタイプではないため危険で、直近登板3試合のように2イニング前後のロングリリーフとしてゲームを立て直すor落ち着かせる役割が適任でしょう。

8月6日に昇格した澤田投手は昨日28日の試合で自己最速の153kmを記録するなど、昇格後8試合7イニングで2失点と安定したピッチングを見せています。奪三振率18.6%はこのタイプとしてはやや物足りなく、Aチーム入りにはまだ時間を要するかもしれませんが、ビハインド場面を中心に結果を重ねて序列を上げてほしいところです。オフには次のように三振へのこだわりを語っています。

バットに当てられるよりは三振のほうがいいです。バッターも三振はしたくないでしょうし......。そのためには、ストレートの質をもっと上げていかなくてはいけないと思いました
澤田圭佑の顔に充実感。藤浪晋太郎の盟友が体を絞ってオリックスを救う

直近3登板では打者8人に対戦して5三振を奪うなど、球速のUPが結果に結びついているのでぜひ継続させてほしいですね。

その他トピックとしては昨日、小林投手が阪神の飯田選手とトレードとなりました。現在、リリーバーの中で左腕は齋藤投手と上がってきたばかりの富山選手の2人で、中堅左腕の飯田投手は早々に出番があるかもしれません。

ここまで先発・リリーフと投手陣を見てきましたが、リリーフについてはシーズン1/4経過時点に比べて齋藤・吉田の2投手の台頭やヒギンス投手の安定化により良化しています。先発もイニングを稼いでいる4投手を筆頭にゲームメイクはできています。現在の借金18という惨状の原因は投手陣ではなく野手陣に依るのではないか、というのがここまでの分析結果から推測されます。

3.野手陣

続いては野手のここまでの結果を見ていきましょう。パリーグのチームで打率/出塁率/長打率/OPS/ISOをまとめた結果はこちらです。

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チーム打率は.242でリーグ最下位。それでも前回投稿時が.224であったことを考えると2分も良化しソフトバンクと並んでいますが、ソフトバンクとの最大の差は長打率・ISOを見てわかるように長打です。本塁打についてSBは72本でリーグトップに対し、オリックスは41本で最下位。31本もの差はあまりにも大きいと言えます。@Deltagraphsさんが8月23日時点でUPしたポジション別wRAAはこちら。

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さて、ポジションごとにみていきましょう。

3-1.捕手

正捕手の若月選手が8月に入ってから16試合で打率.105と低迷。前回投稿時にはOPS.726あったのですが、現在はOPS.634。8月はここまで38打数で15三振と三振が大幅に増加してしまっています。長打もツーベース1本で、四球も2つだけと何一つ上手くいかない不調の時期に当たってしまっています。ストライクゾーンのスイング率・コンタクト率はともに昨年から5%以上上がっている一方、ボール球のスイング率が5%上がりコンタクト率は5%下がってしまいました。つまるところ、現在はボール球に手が出るし、当たらないという状態です。

逆に8月に8試合でスタメン出場を果たしている伏見選手が若月選手の不調を埋める形で打撃好調。65打席と少ないながら、打率/出塁率/長打率のスラッシュライン.317/.338/.460と好成績を残しています。特に長打率は50打席以上立っている選手の中では吉田正尚選手に次ぐチーム2位で、若月選手の不調の間は打撃重視で伏見選手のスタメン起用が更に増えていく可能性があります。但し、昨年アキレス腱断裂という大怪我を負い、今年はそこからのスピード復帰イヤーになるため、DHと交互に使うぐらいで丁度いいのですがチーム事情が許してくれないのが辛いところです。ただ、開幕遅延により怪我の完治はできている様子なので、慎重になりつつもこの長打力はやはりスタメンで使っていきたいですね。

3-2.内野手

シーズン1/4時点と同様に、ショート以外のポジションはすべて打力で他球団に劣っているというのが現状の内野手。特に一塁と二塁の攻撃力は低くなっています。

まずはファースト。前回投稿時ではロドリゲス選手とT-岡田選手で9本の本塁打を放っていましたが、それから30試合が経過した現在はまだ12本。30試合で二人で3本しか本塁打を打っていません。特にロドリゲス選手は深刻で、8月は32打数で0本塁打。長打も0でシングルヒット6本のみと完全に攻略され、登録抹消も経験しました。現在のスラッシュラインは.216/.281/.358と長打が無くなり、怖さが消えた分四球も稼げなくなっています。コンタクト率67.7%、ボール球スイング率37.5%という数字はともにリーグで最も悪い部類に入っており、ボール球に手が出るわ、当たらねぇわ、という状態です。T-岡田選手は8月に若干持ち直し2本塁打。スラッシュラインは.246/.330/.402とまずまずの数字になっています。四球で出塁が稼げる分、一塁手争いという観点で見れば守備面も含めてT-岡田選手に軍配が上がります。

セカンドについては、7/31にケガで離脱していた福田選手が初昇格。ここまで15試合でセカンド、6試合でサードを守っています。23試合96打席で.284/.389/.407と昨年よりも出塁率を上げた好成績を残しており、ショートを守る安達選手と並んで内野手の中では打撃力を発揮しています。

最も多くセカンドとして出場しているのは守備力を買われている大城選手打撃面では福田選手が.284/.389/.407に対し、大城選手は.200/.271/.206で圧倒的に福田選手にアドバンテージがあります。大城選手が昨年並みの長打力を発揮できればいいのですが、フォーシームを強くたたくことができないせいか今年は引っ張り方向の打球が大幅に減少(Pull%は26.9%→17.6%)しています。ここまで長打はツーベース一本はあまりに寂しい。一方、守備面では大城選手の極端な守備シフトに救われた試合は多く、特にライトにジョーンズ選手が入るときには大城選手の高い運動神経を活かしたダイナミックなプレーが必要になります。実際、今年の大城選手のセカンドUZRは+4.0とリーグでも屈指のものです。ただ、昨年セカンドで固定起用した福田選手の堅実なプレーも十分魅力的であり、サードに少し打てる選手が入れば大城選手の起用機会は減少するでしょう(今のところ現れませんが)。

問題のサードはやはり固まらず、これまで8人もの選手がスタメン起用されています。最も起用されているのは宗選手で、27試合サードで出場。昨年は主にセンターで起用されていましたが、今年は242イニングをサードで守りUZR+2.8としっかり守れています。センターは40イニングでUZRー1.1なので、今後も三塁手としての起用が中心になりそうです。打撃面ではスラッシュライン.215/.275/.298と低空飛行。7/25の楽天戦でランニングホームランを達成するなど高い身体能力を持っていながら未だ活かしきれていません。

170打席ちょっととはいえ出塁率.370あった昨年との差の一つが、ボール球のコンタクト率の低下(72.1%→59.3%)。スイング率はストライクゾーン・ボールゾーンともほぼ変わりませんが、ボール球に手が出たときにファールで逃げることができていません。タイミングを右足で取っているのですが、練習試合~今に至るまで毎日のようにタイミングの取り方が変わっており、試行錯誤を重ねていますがいまだ迷走中という感じに見えます。

8/28に西野選手が一軍に昇格し、昇格即サードスタメン起用で結果を残したため、宗選手がスタメンを勝ち取るためには打撃で結果を残すしかありませんね。

ショート安達選手がスラッシュライン.285/.351/.336とまずまずの打撃成績を残しています。前回投稿時は.338/.397/.380だったのですが、BABIP.390との乖離が大きかったためある程度下がることは予想の範囲内でした。UZR+4.3と相変わらず守備面での貢献度が高く、それは練習の時から様々な選択肢を試す姿勢に基づくものでしょう。

3-3.外野手

ポジション別最後は外野手。打線の軸でありパリーグを代表するバッターに成長した吉田正尚選手のスラッシュラインは.374/.475/.573と圧巻。本塁打こそ9本ですが、現在首位打者。選球眼が段違いで、昨年と比べてもK%は10.5%→5.4%、BB%は13.0%→16.3%となっています。211打数で14三振というのは長距離ヒッターとしては異常な少なさです。高低どちらのボールに対しても崩されないスイングパターンを持っており、ストライクゾーンのコンタクト率は96.0%。オリックス打線にあって一人別格と言えるでしょう。守備ではチーム事情からライトを守ることが増え、ライトで231イニング、レフトで200イニングを守っています。肩があまり強くない(ARM-1.2)こともあり、ライトのUZRは-2.6で、本来ならUZR+0.9のレフトに固定したいところです。

メジャーリーガーとして鳴り物入りで入団したジョーンズ選手は、前回投稿時点で既に守備の破綻が明確で、8月はほぼ指名打者としての出場になりました。右足踵の故障もあり、8/25は途中交代するなど身体も気になります。スラッシュラインは.254/.326/.433とオリックスの中では上位の成績で、8/21~23の3試合で4発の本塁打を放つなど長打率が上がってきました。

昨年のMLBでのスラッシュラインが.260/.313/.414だったので、本当にこれぐらいに収束しそうです。引っ張り方向への打球が46%と本来のプルヒッターぶりを遺憾なく発揮しています。

ジョーンズ選手についての事前分析はこちら↓から。

センターには8/18の昇格以降まさかの中川選手がスタメンで起用されています。昨年、ライトで329イニングを守りUZR-6.3。肩もレンジもきついものがある中で、キャンプでセンターを練習していたので何を愚かな…と思っていたら本当にセンターでシーズン起用してきました。現在84イニングを守りUZR-1.2です。昨年は.288/.334/.382と素晴らしい成績をルーキーで残しましたが、今年はマークもきつくなることもあってできれば打撃に専念しやすいポジションで起用してほしい(一塁または指名打者)と思っていました。

チーム事情からそれは難しく、また打撃もシーズンに入ってから現在まで.132/.193/.197と低迷しています。ファームでは打率.317をマークし、4番を任されていただけに中嶋代行監督の信頼は厚く、「俺は無敵の中川(圭太)を見てきた」と実際に話しています。

監督交代後、7試合続けて4番に起用されるも残念ながら思ったような結果は出ていません。それでも直近3試合は連続で安打が出ており、少しずつ復調傾向にあると信じたいですね。

4.残り60試合の戦い方

大幅な首脳陣の入れ替えによりベンチの雰囲気は一変した、と言われています。実際に三連勝した時の記事はこちら。

しかしながらこちらの記事で書かれているように、「“明るさ”だけで勝てるほど甘くはない。」というのがプロ野球です。監督就任後3連勝するも、その後は4連敗。相性の悪いソフトバンク、ロッテと続くカードで苦戦を強いられています。

それでも、二軍で中嶋監督が起用し結果を残してきた杉本選手・中川選手・松井佑介選手の昇格はチームにとってプラスに働くと信じています。二軍は若手の育成の場であるとともに、一軍で活躍するための中堅~ベテランの調整と競争の場でもあります。特に杉本選手はパワーツールに長け、二軍での長打率は驚異の.617です。杉本選手は昇格後21打席で2安打とまだ結果を出せていません。それでも8月23日西武戦では同点打を放ち、お立ち台に上がりました。

「(中川)圭太が打ったので、俺も打ってやろうと思って打席に入っていました。僕も圭太もファームで頑張ってきたので、2人で点に絡むことが出来てめちゃくちゃうれしいです」

このように二軍で結果を出した選手が普通に一軍に昇格し、一軍で活躍することでチームの士気はあがるのでしょうね。

投手に関しては齋藤選手や吉田凌選手の台頭は西村監督の成果の一つですし、先発として昨年榊原投手・張選手を起用し今年も山﨑選手のように結果を残している点も評価すべきポイントです。逆に、投手陣の整備が出来ていながら大きな得失点差が開いてしまっているのは打力と采配部分に原因があるはずで、そこを改善できなかったのは西村監督の責任です。勿論、これまでの編成や外国人の目利きなどフロント主導の部分についても責任はあります。打者が育っていない、というか長距離ヒッター自体獲得してこなかったのは歴然としているので。

昇格した杉本選手・中川選手もここまで残念ながら良い結果が出ていません。中嶋代行監督礼賛の流れも負けが込めばきっと薄れていくでしょう。結果が全てのプロ野球ですから。長打力は瞬時に上がるものではないので、打力不足からくるパリーグ内での劣勢は簡単には覆せません。やはり各ポジションで打力でレギュラーを掴んだと言える選手がいない点が致命的です。センターラインは特にそれが顕著で、キャッチャー・セカンド・ショートいずれも守備面ではリーグでもトップクラスですが、そこに打力もあるコアプレイヤーが上位球団には存在しています。サインプレーも多く、コミュニケーションの多さを考えても日本人でないと賄えないこの3ポジションについての補強はマストです。ドラフトで上位を割くのも一つですし、FAに参戦するという選択肢も当然あります。

脱線しましたが、残り60試合の戦い方は難しい。最下位脱出をまずはチームとして掲げ、勝ちを目指さないとずるずるいきます。幸い、けが人が続々と復帰し福田選手や西野選手ら打力もある程度あり守備もできる選手が増えています。秋口には若手選手の抜擢もあるかもしれませんが、2017年スワローズを見ている身としては勝利という成功体験無しに得るものはないと断言します。若手を起用した結果、エラーや失敗を犯し、他の中堅~ベテラン選手が補えずに負けると失敗体験として逆に残ってしまいます。ミスしても勝った、自分の活躍でチームが勝利した、そんな成功体験無しに選手は育ちません。中嶋代行監督はインタビューで次のように語ります。

若い選手を使いたいという気持ちはもちろんあるんですけど、今いる選手が、しっかりとした壁になって、それを超えたら使いたいと思います。ただ若いというだけでは、力がつきませんので。チャンスはもちろん与えますけど、それを超えてこないのであれば、また違うと思うので。

この考えは極めて重要で、ただ使えば育つなんていうのは幻想です。壁となる現状レギュラーいてこそ、下でじっくり基礎を身につけることができ、失敗してもリカバリーしてくれるのです。中嶋監督がこう考えているのは一つ安心材料だと思いますね。

オリックスについては投手がしっかりしていますし、リリーフも序盤に比べて安定しました。打撃陣が先制点を取り、点を重ねていけば確実に勝利をものにできるはずです。吉田正尚選手という至宝がいるので、彼の前にどれだけアウトを少なくランナーを増やすかが得点期待値と得点確立を上げることに繋がるので打順組は中嶋監督に目いっぱい頭を使ってほしいですね。

他人事がすぎる冷たい書き方を反省し、今のメンバーで明日私が監督ならどんな打順を組むか少し考えてみました。

1(二)福田
2(三)西野
3(右)吉田正尚
4(指)ジョーンズ
5(捕)伏見
6(左)T-岡田
7(遊)安達
8(一)中川
9(中)小田

うん、難しすぎますね。指名打者と一塁に置きたい打者が渋滞し、攻守のバランスが揃いません。ここまで一度も名前を出さなかったですが、小田選手は今年スタメン起用僅か4回。苦手としていた左投手相手に6打席ですが3安打放っており、ここまでの出塁率.310。コンタクト率が75%→80%と向上し、Pull%は33%→40%なので内容的にも悪くないかもしれんなぁと思います。センター守備もUZR±0近辺で毎年推移していますし、打てればレギュラーもつかめるかもしれませんね(毎年言われている気もしますが)。

一瞬でも監督気分で組んでみると大変さが痛感できます。ここに各選手の思いやフロントの思惑が加わり、打順組で選手の年俸や人生が決まりますからね。大変な仕事だと思います。

辛いシーズンになりつつありますが、中嶋代行監督の今後を見守りたいと思います!

■出典

・ESSENCE of BASEBALL(https://1point02.jp/op/index.aspx)

・nf3(http://nf3.sakura.ne.jp/index.html)

・アメリカ大手データサイトのfangraphs(https://www.fangraphs.com)

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