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全身全霊を懸けた吉田正尚で振り返るリーグ優勝とその先【福宗正杉・合同note企画vol.3】

こんにちは、シュバルベです( ^ω^ )

今回、twitterで仲良くさせてもらっているいっちさんの「福宗正杉・合同note企画」に吉田正尚枠で参加することになりました。オリックスファンにはお馴染みの用語となった「福宗正杉」。これは今シーズン、オリックスのリーグ優勝の原動力となった上位打線の田周平/佑磨/吉田尚/本裕太郎の名前から取ったものです(チーム内に複数吉田姓がいるので、ファンからの呼称でもある「正尚」の方から取ったんですかね)。

過去のプロ野球でもタイガースの「JFK(ジェフ・ウィリアムズ/藤川球児/久保田智之)」、古くはジャイアンツの「ON砲(王貞治/長嶋茂雄)」など、頭文字を取って主にスポーツ紙が見出しをつけてきました。漢字4文字のネームは珍しいので、却って目を惹くのかもしれません笑。

このnoteで私が書くのは、オリックスの誇る「福宗正杉」のうち「正」である吉田正尚選手についてです。

「福」はいっちさんが、「宗」はyoさんが既に執筆済みですので、ぜひご覧ください↓↓

以下で吉田正尚選手のシーズン成績、昨年との変化、ポストシーズンでの働き、今後の展望について書いていきたいと思います。

1.シーズン成績で振り返る吉田正尚

まずは今シーズンの吉田正尚選手の成績はこちらです。

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どの数字をとってもシンプルに素晴らしいの一言です。これで初めて規定打席に到達した2018年から4年連続でOPSは.900を越え。今年に関しては95試合で3番打者として中軸を担い、チームのリーグ優勝に大きく貢献を果たした1年となりました。

打率.339、出塁率.429、長打率.563、OPS.992と世の中に広く知れた打撃指標の率はすべてリーグトップ。2年連続首位打者のタイトルに輝いたのは、パリーグでは2002~03年にかけての小笠原道大氏以来の快挙です。

正尚選手の素晴らしい点は、これだけ長打を放っていながら三振が極めて少ないという点です。5.7K%は12球団でもトップの数字で、455打席26三振というだけで異次元さは伝わるでしょう。20打席(=約4試合)に1度しか三振しないわけですから。

これを可能にしているのが打席での選球眼ゾーン内のアプローチです。直近3年間のストライクゾーン、ボールゾーンでのスイング率とコンタクト率がこちら。

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この表で言えることを端的に3つで纏めるとこちら↓

①ストライクゾーンの球は高い確率で当てる
②ボールゾーンの球は振らない
③ボールゾーンの球も振ったら当たる

一般的に、こうした傾向はコンタクトヒッターに多いです。例えば「福」を担う福田周平選手のストライクゾーンコンタクト率は96.2%で12球団トップ、この項目の常連です。同選手はボールゾーンの球は振らない(スイング率19.5%)、振っても当たる(コンタクト率79.7%)で、正尚選手のスイング・コンタクトに近しい数字を残しています。

しかしながら、正尚選手は球界を代表するパワーヒッターでもあるわけです。ボールに当てるし、当たれば飛ぶし、そのくせボール球には手が出ない。これほど恐ろしいバッターが居るでしょうか?

本人の意識としても次のように日刊スポーツのコラムで語っています。

三振しないことを取り上げてもらうことがありますが、入団時から三振数より四球が上回ることを心掛けています。僕は、最終的に、塁に出ることが「打席の中での勝利」だと思うんですよね。ヒットでも、四球でも。毎打席、何かコトを起こすために、打席に向かってます。ここまで経験してきた中で、それが一番必要なんだと。カウントを追い込まれたら、しっかり逆方向にも。ゾーンを広げて対応して、その積み重ね。2ストライクになれば、相手のウイニングショットを打っていかないといけない。まずはカウント勝負。自分を優位に持っていければ、ヒットを打てる確率も上がっていく。そんな心掛けでやっています。

2.吉田正尚の昨年との違い

昨年・一昨年も正尚選手自身はOPS.900を越える打棒を発揮していましたが、チームは2年連続最下位に沈みました。それが今年は下剋上のリーグ優勝。正尚選手の打撃内容にも2020シーズンと2021シーズンで違いがあったのか、見ていきたいと思います。

まずは打撃指標の変遷です。

打率/出塁率/長打率/OPSの変遷
2020年度  .350/.453/.512/.966
2021年度  .339/.429/.563/.992

打率・出塁率については20年よりも数字を落としましたが、長打率は.051と大きく数字を伸ばしOPSは前年を上回りました。その最大の要因はホームラン数の増加です。

2020年は492打席で14本でしたが、2021年は455打席で21本。前年より打席数が減ったにもかかわらず、本塁打の数は7本も伸ばしています。さらに打点は64打点から72打点に増加しました。打席数が減ったにもかかわらず本塁打・打点共に数を増やしたのはなぜか。

一つ要因を挙げると、正尚選手の次を担う強打者、「杉」こと杉本裕太郎選手の存在です。

こちらは2020年と2021年で起用された3番打者と4番打者の先発試合数を選手別に出したものです。

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いろいろと興味深いですが、やはり昨年はジョーンズ選手・正尚選手の2人で分け合った4番を、今年杉本選手がほぼフルシーズン担えたことは大きな違いとなっています。

この結果、3番・4番打者のOPSは2020年と2021年で次のようになりました。

3番打者と4番打者のOPS比較
2021年:3番OPS.852、4番OPS.843
2020年:3番OPS.951、4番OPS.730

こうなると一目瞭然で、昨年は3番打者がOPS.951と極めて打てた一方で4番打者はOPS.730と打力に欠け、今年は3番・4番共にOPS.850前後の高い打力を有しています。

2020年は、正尚選手を迎えても次の打力に劣る4番打者で勝負されるケースが圧倒的に多いシーズンでした。フォアボールでもOKという考えの基、厳しいコースで攻められた結果、正尚選手の本塁打数は伸びなかったのではないでしょうか。逆に2021年は後ろに杉本選手がいることで、正尚選手で勝負せざるを得なくなったということが改めて言えるでしょう。※杉本選手の凄さは「杉」担当のARAさんが書いてくれます!(プレッシャー)

これを端的に表しているのが敬遠四球の数で、正尚選手の敬遠は2020年17個、2021年6個です。敬遠数が半分以下になり、正尚選手の打点は昨年より40打席少ないにも関わらず8打点も多く稼いでいます。改めて打線とは1人のスペシャルな選手だけでなく、線になる必要性を感じさせますね。

もちろん、前にいる福田選手、宗選手の高い出塁率にも大いに支えられているので、まさに「福宗正杉」は理想的な1ー4番として機能していたと言えるでしょう。

3.オリンピック・リーグ優勝・ポストシーズンを経て新たな”境地”へ

今年の正尚選手は激動の1年だったと傍から見ていても感じます。

開幕からチームの主軸を担いリーグ優勝。7月~8月には東京オリンピックに侍ジャパンの主力選手の一人として参加し金メダルを持って帰りました。

ただ良いことばかりではなく、9月5日ソフトバンク戦で「左太もも裏の筋損傷」で登録抹消。全治6週間はかかると見られていましたが懸命なリハビリで同月26日に復帰するも、10月2日ソフトバンク戦で「右尺骨骨折」を負い再度登録抹消。

シーズン終盤の優勝争いにチームの柱となる自身が離脱し、しかもそれでリーグ優勝を果たした。これは正尚選手にとっては嬉しさもあれば、悔しい気持ちも大いにあったでしょう。

全治2か月と診断された骨折でしたが、クライマックスシリーズファイナルステージ初戦の11月10日に復帰。指名打者としてスタメン出場を果たしヒットも放つなど、驚異的な回復力と気持ちの強さを感じさせました。日本シリーズでは全6試合にスタメン出場、東京ドームではレフトでのスタメン起用も果たします。

日本シリーズでは初戦にサヨナラタイムリーを放つも6試合で27打数6安打。打率は.222と本来の状態ではなく、それを象徴したのが三振6という数字です。スワローズの投手陣もよく研究し、高低と緩急を使っていましたが、やはり怪我の影響は大きくバットも通常とは異なるものを使用したとのこと。

日本シリーズでは本来の状態と比べると確かにオフスピードボールへの対応が悪かったのですが、それでもヤクルトファンの目線ではとても怖い打者であることに変わりはありませんでした。

今年の正尚選手は2年連続最下位のチームの選手会長に就任、チームを名実ともに引っ張ってきました。かつてはスピーチやインタビューでも真面目な受け答えが多かったのですが、シーズン最終戦では「有休が残っている人は使って、家族や友人と一緒に僕たちと戦っていきましょう」と語るなどユーモアも発揮。

一年を通して全身全霊を懸けて戦い抜き、リーグ優勝とクライマックスシリーズ勝ち抜きは見事としか言いようがありません。

来年こそ、今年を越える結果、日本一を目指してまだ見ぬ境地へチームを導くと信じてやみません。

最後に吉田正尚選手の応援歌を。

力を求める限り 幾多の困難乗り越え
前人未到(ぜんじんみとう)の境地
辿り着く男の名は
正尚正尚正尚正尚

歌詞通りの活躍を見せた今シーズン。さながら来シーズンは「境地ver」といきましょうではありませんか。

■出典






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