リカレント教育が日本で広まらない理由

当たり前です。誰にもメリット無いから。
たとえば40過ぎまで弁護士をしていた人が、AIに仕事を奪われて心機一転コンピュータサイエンスの勉強をしたとして、45歳で十分な資格とスキルを身につけたとしましょう。ただし経験なし。新卒22歳とどっちを採用します?

日本だけではないのですが、中途採用ではとくに経験が重視されます。
これ応募者にとっては実に理不尽で、その職種の経験が無いと採用されない、採用されないから経験を積めない、の堂々巡りになりがちです。チケット売り場が改札口の向こうにある状態。切符買えないから入りようがない。

これをどうにかする経験が日本社会全体に不足しています。新卒一括採用では未経験が前提ですから、そこを気にする必要が無い。「チケットを買って改札を通る」ことができるのですが、一度このレールから外れると途端に難しくなります。改札の外に出て、チケット売り場に到達できないことに気づきます。すでに手にしたチケットで行ける範囲をうろつくしかない。

採用側もこの矛盾に気づかないか、気づいていてもあえて火中の栗を拾うことはしません。本来リカレント教育は「改札の外のチケット売り場」として機能することを期待されるものですが、なかなかうまく機能しません。

実のところ、改札の向こうのチケット売り場にアクセスする裏技、バックドアは時々現れます。
・ 入った会社が急成長し問答無用で昇進→管理職の経験を積めた
・ 新規事業が当たって畑違いの職種に飛ばされた→ITの経験になった
・ 思いがけず知り合いから良いポジションを紹介してもらえた
などなど。

戦後~バブルまでは、日本全体が急成長していたため頻繁にバックドアが開く状況で、それをバックドアとも思っていなかったわけです。新卒採用はだいたい誰にも開かれた入口ですし(大学名フィルタなどあったようですが)、それなりに働けばだいたい課長くらいにはなれました。

バブル崩壊後はバックドアも入口も絞られてしまって、氷河期世代を生み出してしまった、ということでしょう。わずかなチャンスを突破して就職し勤続20年、いまだに若手、という氷河期世代は珍しくありません。リカレント教育で学位や資格を取得したところで、転職市場では「管理職経験なし」「**経験なし」市場での競争です。

で、どうしましょう?

誰もがアクセスできるバックドアには誰もが殺到します。確率は低いですが、必ず誰かがチャンスをものにできます。

チケット売り場も改札口もバックドアも自分で作る、つまり起業するという手段もあります。ユニコーン企業にするのは至難の業でしょうが、家族の食い扶持程度を稼ぐ人ならたくさんいます。

八方ふさがり、改札は開かないしチケット無い、バックドアも無い…
と思っているのはマインドが見ている幻覚で、本当は広大な原野が広がっているのかもしれません。

そうだったらいいなあ。
私自身はまだ幻覚を見破ることができずにいます。

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