蛙亭の客席をひかせない塩梅

キングオブコント2021の感想。蛙亭について。

蛙亭のネタは、突発的で過激な描写をするものが多々ある。馬乗りになって首を絞めたり、走っている車の助手席からドアを開け外に飛び出たり、ビルのガラスを突き破って侵入してきたり、服をめくると腰にダイナマイトを巻いていたりと色々ある。
客席は一瞬「キャア」となるのだが驚きの笑いになっている。表現する上でここまでは攻められる。これ以上やったらひくという、イワクラのネタ制作の上でのバランス感覚がいいのと中野くんの演じる愛嬌のあるキャラクターがそれらの行為を行なったり、リアクションをするから拒絶せずに見ていられるのかもしれない。
2人の声も良い。声のトーンの低いイワクラと高い中野くんで緊張と緩和が生まれている感じがする。

キングオブコントでは、登場が強烈だった。ヌルヌルの中野くんが登場して口から液体を吐き出す。
これなのだが、中野くんはTシャツを着ている。リアリティを考えるのであればTシャツはおかしい、かといって全裸は放送できない。上半身裸にしてしまいそうなところだが白いTシャツという演出。
そこに蛍光黄緑の液体を吐き出す。白いTシャツの上に映えるし、培養液っぽさがあるし、不潔感がない。(赤っぽいと人の血を彷彿とさせるし、黄、オレンジだと吐瀉物、紫や青や緑でもその生物の体液や血の色という感覚がある。)
それを床にぶちまけずに自分のTシャツに塗り込むというのが良かった。口に入ったものを床にぶちまけるという行為も拒絶を生みやすいと思う。
劇場で色々試した末にこうなったのかわからないが最高の登場だったと思う。

ネタの内容も面白かった。SF映画だと製造工場から脱出したホムンクルスは冷酷、無慈悲と相場は決まっているが中野くん演じるホムンクルスには最初から愛嬌、人間味がある。
イワクラとの緊張感を保ちつつもハートフルなやり取り。拒絶していたものに対しての母性の目覚め。とテーマも深い。

一つ気になったところといえば、中野くんの脱出の目的がオムライスを食べに行く。とういことだったがそこに対する理由だったりオチだったりがあっても良かった気がする。
後半に何か蛙亭らしい過激さがもう一つあっても良かったのかなとも思う。(例えば敵の残党から中野くんが狙われたのをイワクラがかばって撃たれたり。もっと別のイワクラ側からの衝撃的なアクション、イワクラの腕にも製造番号が書かれていたりとか。)

しかし、とても面白く1発目にかましてやった感があって最高だった。

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