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『うちのかみさん』〜コンサートの一場面から読み取る朝鮮のあれこれ(動画付き)②

朝鮮の人気楽曲「うちのかみさん」の動画考察②です。
①は朝鮮社会における女性たちがおかれた立場について書きました。↓をご覧ください。

歌詞に隠された隠喩

朝鮮の楽曲といえば、最高指導者や党、国家、軍隊を称える作品が多くを占めるのはよく知られていることでしょう。
しかし「うちのかみさん」の歌詞は一見すると思想性とは無縁のようにも聞こえます。

歌の1番はこのような歌詞です。

私の心に春の光のように 暖かく忍び込み
私の心に歌のように 睦まじく抱きしめられた人
除隊して故郷に戻った 忘れえぬその日
花束を受け取った縁で 一つの家庭を築くことになった
ああ、私の愛しい人 睦まじい私の奥さん

妻への愛をうたった朗らかな歌詞で朝鮮の人々に愛される楽曲となりました。中国の東北地方に住む朝鮮族の人々にも人気があるそうです。

しかし2番の歌詞は以下のように続きます。

幸せの舟に一緒に乗って 生活のパドルを漕ぐ
照らす灯台を目指し 永遠に共に行こう

夫婦二人で生活を築いていく様子を例えていますが、朝鮮の芸術作品に触れたことのある方はすぐに気づくことでしょう。

「照らす灯台」とは人民を導く朝鮮労働党の隠喩です。
なお、最高指導者に対しては、金日成主席=太陽、金正日総書記=星 などという表現が多く使われます。

「名曲」には外せない思想性

金正日総書記は自身の著作《音楽芸術論》にて、音楽にとって大切なものは「内容が革命的」であること記しています。音楽が形式主義に寄らず内容によって「人々を革命的な思想で教育するのに寄与すること」が大切とされています。「うちのかみさん」のような大衆的な歌謡であっても思想性は重要視されるのです。


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