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「YOKOHAMAどっちも定期」、JRでも可。

6月13日、相鉄が「YOKOHAMAどっちも定期(以下、どっちも定期)」の適用区間の拡大する方針を発表しました。どっちも定期自体が以前の新横浜駅開業に合わせて対応させた施策であることは記憶に新しい人も多いのではないでしょうか。今回は、どっちも定期の概要を読み直していることとこのサービス実施への仮説を書いてみます。


どっちも定期とは

『「相鉄新横浜線 西谷駅~新横浜駅」を含むIC通勤定期乗車券をお持ちのお客さまは、追加運賃をいただくことなく、相鉄本線 横浜駅での乗降が可能となる新サービスです。(注:新横浜駅開業時点での情報です。)』

相鉄本線 横浜駅での乗降も可能とする新サービス名称「YOKOHAMAどっちも定期」に決定!【相模鉄道】 | 相鉄グループ (sotetsu.co.jp)

『相鉄グループの相模鉄道㈱(本社・横浜市西区、社長・千原 広司)では、2025年3月(予定)から、相鉄本線 横浜駅で乗降できるサービス「YOKOHAMAどっちも定期※」の対象を拡大します。この機会に、便利でお得な「YOKOHAMAどっちも定期」をぜひご利用ください。
(中略)
これまで対象であった「西谷駅~新横浜駅」を全て含むIC通勤定期乗車券に加えて、新たに「西谷駅~羽沢横浜国大駅~JR線区間」を全て含むIC通勤定期乗車券についても、対象を拡大します。』

「YOKOHAMAどっちも定期」の対象を相鉄・JR直通線の定期券にも拡大!【相模鉄道】 | 相鉄グループ (sotetsu.co.jp)

この「どっちも定期」は何がすごいのか


 今回発表されたどっちも定期の改革のすごいところは次の2点にあります。
・相鉄に発生する不利益を受け入れた点
・Suica(≒JR東日本)エリアとの間で発生するはずの利害問題を克服した点

①相鉄に発生する不利益を受け入れた点


 この不利益とは、相鉄の運賃では「横浜経由」よりも「羽沢横浜国大経由」が安くなることです。実際に6か月定期の条件で検索してみると、二俣川~横浜は48600円に対し、二俣川~羽沢横浜国大では46230円となり、後者は前者より安くなっています。これは他の駅でも見られる現象で、いずみ野発着なら羽沢横浜国大経由が横浜経由よりも1620円安くなります。勿論、これは自社線内で起こる現象であり、区間を直通先伸ばしてそれらを合算すれば羽沢横浜国大→JR線経由が高くなることが殆どです (実際に、相鉄・JR直通線の運賃(合算)は小田急線との運賃と所要時間において劣勢であるとして、開業前から根強い批判がありました)。
 どんな事情があれ、私企業としては「自社にとって安い方を売る」行為は売上高が減る行為であることには間違いありません。しかし、相鉄はこれを超える利点があるからこそこの決断をしたのでしょう。

②Suica(≒JR東日本)エリアとの間で発生するはずの利害問題を克服した点


 今回の施策はJR東日本管内においても大きな出来事ではないでしょうか。例えば、公式発表では次のような文があります。

JR東日本としては異なる経路が発生しやすい環境下ゆえ、どっちも定期のサービスでは利用統計が正しく取りづらく、正しく取れても横浜経由と羽沢横浜国大経由の二つのデータから常に発生しうる変動を加味して調査する必要がある以上、輸送改善は難しいのです。これに対してJR側がそのリスクを受け入れる代わりに相鉄がオフピーク定期の技術を受け入れて対応していると言うのが真相ではないでしょうか。

・IC通勤定期乗車券の有効区間に「西谷駅~新横浜駅」もしくは「西谷駅~羽沢横浜国大駅~JR線区間」が全て含まれていれば、購入時における特別な申請をすることなく、サービスをご利用いただけます。
※定期券の発駅もしくは着駅が西谷以東(上星川駅~平沼橋駅間)の場合でも、有効区間に「西谷駅~新横浜駅」もしくは「西谷駅~羽沢横浜国大駅~JR線区間」が全て含まれていれば、サービスが適用されます。
西谷駅~横浜駅間の途中駅で乗降される場合には、所定の運賃が必要となります。
・JR線区間が「オフピーク定期券」の場合には、入場駅の自動改札機をピーク時間帯に通過されますと、サービス対象外となります。

「YOKOHAMAどっちも定期」の対象を相鉄・JR直通線の定期券にも拡大!【相模鉄道】 | 相鉄グループ (sotetsu.co.jp)

輸送面で見れば導入されていて当然だったかもしれない


 とは言え、輸送面で言えばどうでしょうか。通勤時間帯でこそ一定の需要が満たされている相鉄・JR直通線ですが、完全な通勤通学ラッシュに依存しており、羽沢横浜国大 (~鶴見) ~武蔵小杉の輸送人員自体は他区間よりも少ないと言われています。そこで、このサービスを用いて相鉄沿線~JR線内の駅への輸送を少しでも相鉄・JR直通線へ動かすことが目的と考えられます。神奈川東部方面線は現在の目的は「横浜駅のパンクを防ぐため、通過利用者を少しでも別ルートに流すこと」が目的なので、目的からして当然の対応でしょう。

小田急へのささやかな宣戦布告とも取れる

 現在の相鉄において最大のライバルと言えるのが小田急です。(小田急は相鉄直通より混雑する傾向とはいえ)相鉄より安く早く新宿に向かえる状態の小田急にしびれを切らしていると言うのも理由ではないでしょうか。

「横浜駅西口大改造計画」への完全な布石か


 なぜ運輸関係のサービス改変を半年以上も前から告知したのか。この施策の根底にあるのは「横浜駅西口大改造計画」と考えられます。

大改造計画の裏で減便、番線削減か

 この大改造計画によって現在の相鉄横浜駅が建て替えをされるかは定かではありません。しかし、今の新相鉄ビルですら築50年を経過している以上はその可能性は高いでしょう。
 そこで使うのがこのどっちも定期。どっちも定期で川崎市中部、都内への移動需要を出来る限り直通線に転移させて横浜方面を更なる減便に追い込んで番線を減らして工事が出来るようにする……、と言うシナリオがあるのかもしれません。

横浜駅関連の工事の話題が不穏だ

 近年の横浜駅の話題は不穏です。

①相鉄横浜駅の有人店舗が大幅削減

 2024年3月に星のうどんが閉店したことを代表するように、相鉄横浜駅の1階のお店はかなり少ない状況です。 現存するお店についても仮設店舗のような配置や無人店舗となっており、早晩閉店するような構造になっています。

②THE YOKOHAMA FRONT TOWER、ゆめが丘ソラトスの完成

 先に挙げた2つの物件は今年の7月中には完成し、相鉄の不動産の大事業が一段落することになります。

③みなみ東口の再開発準備組合が設立

 今年の6月にはJR東日本、京急、日本郵政、崎陽軒と言ったみなみ東口エリアの主な地権者からなる再開発準備組合が設立されるなど、横浜駅の工事については再び不穏な空気が漂っています。今夏には「横浜駅西口大改造計画」を公表する旨が発表されているので、近いうちに「東洋のサグラダファミリア」の名前が更新されることでしょう。

おわりに

 今回は「どっちも定期」についてお話ししました。相鉄ジョイナスが誕生してから50年以上経つ今、ついに相鉄横浜駅に大鉈が振るわれるのかもしれない。そんな一報に感じました。

画像引用元

表紙絵:「YOKOHAMAどっちも定期」の対象を相鉄・JR直通線の定期券にも拡大!【相模鉄道】 | 相鉄グループ

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