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【OAK】プロスペクト紹介〜メイソン・ミラー〜

 MLBのオタクをやっているとお気に入りのプロスペクトの一人や二人できることもあるわけですが、それがあまり有名じゃない選手だったりするとちょっと寂しいですよね。そんなわけで僕の好きなプロスペクトを皆さんに知っていただこうという記事を書くことにしました。もしシリーズ化したら記念すべき第1回ということになる今回は速球派投手のメイソン・ミラーを扱います。

選手としての特徴

 ミラーは身長6フィート5インチ(約196cm)、体重200ポンド(約90kg)の体格から最速103マイルのハイスピンでシュートライズ方向に変化する剛速球と80マイル台後半でプラスピッチ候補のスライダーを中心に、改善中でメディアによって評価の分かれる90マイル程度のチェンジアップを投げます。statcastはカッターも投げていると言っていますが変化量や回転数、球速を見る限りスライダーがなぜか一部だけカッター扱いされているようです。

 先発に残れるかはチェンジアップの出来次第と言われているほか、制球も悪いという評判こそ多くは聞かないものの未知数な状態です。何より懸念すべきは耐久性。肩のケガの影響などで、AFLでの登板を含めてもドラフト指名後2年合わせて36イニングしか投げていません。また、登板は長くても3イニングとかなり慎重に起用されておりスタミナ面も正確な実力はわかりません。

 しかしそのしっかりした体格と球速、しっかりした変化球の存在により、投げればかなり多く三振を奪うことができており、22年シーズン末期に昇格しやや打ち込まれたAAAでも少ないサンプルながらK%は38.9、BB%も5.6と悪くない内容を見せています。もし順調に成長してモノになったらと思うとかなりワクワクする選手であることは間違いないでしょう。


経歴

 ミラーは21年のドラフト3巡目、全体97位で指名を受けて契約し入団した選手です。本来のドラフトイヤーは20年で、何人かのスカウトの注目も集めましたがコロナでドラフトが短縮された影響で指名されず、ドラフト外での契約オファーも届いたものの断って残留し、翌年に3巡目での指名をつかみ取ることができました。来てくれてありがとう。

 さて、その球速と共にミラーを特徴づける最大の要素は彼が1型糖尿病であることでしょう。1型糖尿病は何かしらの要因でインスリンを分泌する膵臓のランゲルハンス島のβ細胞が破壊されることにより発症する、自己免疫疾患の一種とされる病気です。日本球界では元阪神の岩田稔投手などが患者として知られています。一口に糖尿病と言っても、一般に生活習慣病として知られるのは2型糖尿病ですね。

 ピッツバーグ生まれのミラーは高校を卒業後、そこから南に50マイルほど行ったところにあるウェインズバーグ大学に進学します。ディビジョンIIIに属するこの大学のチームで、ミラーはピッチャーとしてプレーしていました。2018年、2年次のミラーは防御率7点台と苦戦し、同時に体重減少に悩まされます。特別ダイエットをしたわけでもないのに年間10kg以上痩せ、理由はわからない状態でした。

 そのような状態ですから当然卒業後の仕事としては野球選手以外を模索することとなり、その一環として病院を運営する団体でのインターンシップに参加しました。この出来事がミラーのその後を劇的に変えることとなります。
 それはインターン先での新人研修でのこと。研修の一環としてドラッグの使用有無などを確認するため尿検査を受けたミラーに、1型糖尿病の診断が下りました。これにより体重減少を中心とするコンディション面の問題の原因と対処法がわかるようになり、失った体重を取り戻したことでミラーは3年生のシーズンを11先発で防御率1点台の好成績をマーク。ウェインズバーグにはスピードガンがなく、球速が90マイル中盤まで上がっていたことにミラーが気づいたのはパイレーツが開いたワークアウトに参加した時だそうです。

 ミラーはコロナ禍で野球のシーズンが中止になった後、ミラーは金融の学士を取得した状態で先述のインターン先で就職するつもりでいました。しかし、NCAAディビジョンIガードナー・ウェッブ大学のコーチに勧誘され、ガードナー・ウェッブでの1年間でのMBA(経営学修士)取得プログラムの存在にも背中を押されて編入を決意。そこでもウェインズバーグでディビジョン3の打者相手に記録した数字と遜色ない成績を残して評価が上がりました。ドラフトコンバインでも速球が平均98マイルを計測するなど好投したようです。

23年シーズンに期待すること

 まず第一に、本人もLocked On A'sでインタビューを受けた時に語った通り、健康でいてほしいですね。これだけ素晴らしい球を投げる選手ですから、本当に怪我さえしなければ順調にメジャーへの階段を上ってくれるはずです。

 次にイニングをこれまでより多く投げること。具体的には1登板あたり5イニングくらいは投げてほしいなと。22年シーズンのように短いイニングでは先発投手としては使いにくいです。球威と制球を両立した先発投手になるポテンシャルはあるわけですから、焦らずゆっくりとでいいのでイニングを伸ばしてエースへの道を歩んでいってほしいと思っています。

終わりに

 メイソン・ミラーという投手は、パワー変化球制球力に加えて本人が得意だというプレッシャーとの付き合い方野球に対する真摯な姿勢を兼ね備えた素晴らしい選手です。ぜひ、メジャーに昇格した際には一緒に彼の投球について語り合いましょう。

追記:2023/04/20

こちらでミラーの2022年のトラッキングデータについて扱っていますのでぜひお読みください。

(ここまで追記)


 最後に僕が彼のファンになるきっかけとなった22年最初の実戦登板の映像を貼っておきます。お時間のある方はこちらもご覧ください。お読みいただきありがとうございました。



本文中にリンクのない出典・参考文献
FanGraphs
baseball-reference
The Athleticの記事
Gardner-WebbのYouTube動画

(ヘッダー画像はMLB Pipelineのツイートから引用)

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