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『団地のふたり』書店員さんの感想をまとめてみました!

U-NEXTでの先行配信も好評で、満を持してお届けする、藤野千夜さん『団地のふたり』。
発売前にゲラ(校正刷り)を読んでくださった書店員さんからの温かいエールをまとめました。
みなさんから共通して得られたキーワードは、「うらやましい」「あこがれる」「なつかしい」でした!


気の合う女ともだちと、のんびり過ごす毎日は、なんてほんわかしてくるのだろう。
好きな場所へ行き、趣味を謳歌し、美味しい食べ物と飲み物で、人生楽しく過ごしたい。
団地のふたりに流れる時間が最高だ!
現代女子の理想の最新系が描かれていて、正直うらやましいです。
(うさぎや矢板店 山田恵理子さん)


売れないイラストレーターのなっちゃん、非常勤講師のノエチは幼馴染み。
アラサー、独身、昭和の匂いが漂う古びた団地に住んでいる。
もう、この辺りの設定だけで読みたくなりますね。
何か大きな出来事が起こるわけでもなく
ノエチがなっちゃんの住んでいる団地の部屋に訪れて一緒にご飯を食べて、しゃべってる。
ほんの些細なことで、ちょっとだけ会いに来なかったりでも、なんとなく仲直りできてしまう。その互いに良いところも悪いところも知っている、なんとも言えない絶妙な関係がほっこりとします。
いつか、ぼんやりと思い描いている夢が現実となったらいいねとその先も読んでみたくなるような物語でした。
これ、かもめ食堂のように小林聡美さんで映画どうでしょう?なんて思ってしまいます(笑)
行間から滲み出る、懐かしい光景も人情も穏やかで癒されてしまった。
大好きな物語でした。
これは大人女子絶対に好きだと思います!!
(未来屋書店大日店 石坂華月さん)


まさに理想の生活がここにあるー!
奈津子とノエチの付き合い方の温度、ぬるま湯加減が最高です‼︎
憧れるなぁ、この生活。
ホントこういう生活がしたい!
友と近い距離に住んで、気が向いた時に訪ねあって喋って出掛けて……。
なんて素敵!夢の生活、憧れる〜‼︎
団地、最高!
まさに団地ならではの距離感。
ふたりの距離もそうだし、ご近所のおばさま方との距離も。
補い合える関係性って良いですよね。
良い事ばかりでもないのはわかるけど(笑)
そして空ちゃん。彼女がいるからこそ、奈津子とノエチが一緒にいる。
『団地のふたり』まさにタイトル通り、団地のふたりを堪能しました‼︎
(文真堂書店ビバモール本庄店 山本智子さん)


ほのぼのさが溢れていて癒されました。
時にはケンカもあったりするけど、ふたりのマイペースさと仲の良さにはうらやましくなりますね。
『本日の売り上げ』や『本日のお買い物』も面白くてちょっとクスッてなりました。
たくさんの美味しいお料理は食べてみたくなるのばかりでお腹が空きますねー!
でも夜寝る前のリラックスに読むのをオススメしたくなる本だと思います!
(コメリ書房鈴鹿店  森田洋子さん)


少しずつ、でも確実に昭和の頃に建てられた団地は姿を消し、新しいマンションなんかに建て替えられている。
子供のころ、ほんの一時期は横浜の団地(名前は忘れた)に住んでいたし、父方の祖父母も生前は柏市の豊四季という古くからの団地に住んでいて、小学生までは夏休みなどに1週間くらい田舎から電車を乗り継いで遊びにいくのが習慣だった。
エレベーターはやはりついていなくて、たしか3階だったか4階まで階段を上がる。
鉄製のドア(ピンクだった)を開けると、妙に段差の低いたたきがあり、右は小さなトイレと浴室(風呂釜にボイラーがくっついているタイプ)、左に二間つづきのリビングキッチン(6畳ずつ)と、寝間の4畳半。
祖父は比較的無口で朝早くシルバー派遣の駅前の自転車整理をしていて、祖母は歌と料理がばつぐんに上手い、でもどこにでもいるような老夫婦の穏やかな生活。
大好きな二人だった。
今でも、団地独特の生活感のようなものを肌で思い出せるし、建物の前の植え込み(空いたところにいろんな野菜や花がばらばらに植えられていた)や、祖母と買い物に行った団地の敷地内にあるスーパーや商店街の賑わいはよく覚えている。
「団地のふたり」は、ときどき買い物などに都心を訪れる以外は、そとに出ようとしない(出れない)奈津子と、大学の非常勤をしているのでそとには出るが、団地での生活から一向に抜け出す気配のない太田野枝の2人の幼馴染のたわいもない日常と会話を綴った物語だ。
物語といっても、起承転結らしいこともほとんどなく、ただただ穏やかにページが過ぎていく、風景画のような小説だ。
でも、これが藤野千夜という作家の真骨頂でもあったりする。
「団地のふたり」は藤野千夜の、とくに初期のころの小説に似た味わいがあった。95年の「午後の時間割」、96年の『少年と少女のポルカ』、98年の『おしゃべり怪談』、99年の「恋の休日」、そして2000年の「夏の約束」の頃までの作風。
なにげない日常を淡々と描写しながらも、ときどきドキリとするような細かな心理を掬い取ったりする。
登場人物について、生活や職業、ちょっとした所作なんかを敢えて微に入り細を穿つような描写を重ねることで、書いていない部分の人となりや、物語のテーマがほんのりと浮かび上がってくるから不思議だ。
老朽化した団地、断捨離、ネットオークションに出される使い古された物たち。
亡くなった幼馴染の思い出、人生の仕舞い支度の束の間、時間が止まっているかのような老いた住人たち、そして世の中から半分はぐれたような、出戻りの2人。
軽妙な会話や、長いセンテンスなのに軽く読みやすい文体に、ついほのぼのした小説だと思いがちだが、そこに、古くなって忘れ去られようとするモノたち、時間や世間に少しずつ置いてけぼりにされていくモノたちへの深く優しい著者の視点、どこかに必ず必要とする人がいたり、覚えてくれている人がいることの「救い」を丁寧に描いているように思うのだ。
--老朽化の著しい、コンクリの階段をゆっくり下りながら、奈津子は団地の他の棟や、そのまわりのゆったりした敷地、植え込みや菜園、さらにそれを取り巻く、外の大型マンション、ビル、幹線道路のまばゆい光を見た。
「なんかオアシスみたいだよね、ここって」
一度離れたから、余計そう思うのかもしれない。
あるいは、いずれは出て行く場所。もうじきなくなりそうな場所だからだろうか。--
かくいう私のささやかな団地での記憶が、鮮やかなまま消えていないのは、今よりももう少しなにもかもが呑気で、ゆとりがあり、希望があり、適当だった当時の時間を、もう戻れないオアシスのようにまぶしく感じているからかもしれない。
(有隣堂 STORY STORY YOKOHAMA 名智理さん)


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