4月の日記

4月1日(金)
・大量のヒトに抜かされながら歩くのが好き。後ろからぞわーっとした平行移動に巻き込まれる。動物の群れ、速度の違い。

・新幹線の中でコーヒーやお弁当を売るお姉さん。実家に帰るみたいなだるい後ろ姿。はたらく電車の中で、はたらかない人間って感じでよかった

4月2日(土)
・あか、きいろ、あお、しろのビニールシート。なんであの色の組み合わせなんだろう。そのうえで、お花見を終えたマックのゴミを不幸せそうに片付けるママがいた。がさがさとハンバーガーの包みを丸め、ビニール袋に放り込んでいく無表情

・今日は水辺でカニを見つけた女の子と遊んだ。「やっぱり死んでた」と言いながら石にカニを置く。「なんかきれい」と太陽に透かす。「ハサミもあるね」と情けない返しをする

・公園のベンチでセブンのサンドイッチを食べながら小学生男子のケンカを見守った5分後にアンティークの家具に囲まれてコーヒーを飲んでいます。ふふ

4月3日(日)
・薬局へ向かう。雨。空から大量に水滴が落ちてくることにすっかり慣れたね

・木いちごのクリームサンドと、ピスタチオのメロンパンでうんうん悩んだ。木いちごを連れて家に帰る。ピスタチオのメロンパンって、人間って欲張りで努力家だな

4月4日(月)
・炭酸水をコップに注ぐ。ころころと泡が跳ねる音がする。

・イライラした気持ちなんてかすかな温風に変換されればいいのに。

・極細ポッキーに「おいしさ次々50本(※1)!」と書かれている。注釈が切ない。「※1 1本あたりの重さにより、まれに本数にばらつきがあります。」49本でもいいよ。おいしさは50本くらいです

4月5日(火)
・なま春巻きよりパリ春巻きがすき

・貼るサロンパスじゃなく春ゆたんぽがいい

・心が疲れたら、勝手に心のほうからあくびしながら出てきてさ、やあやあ言いながら天日干しでもしてくれんかね、と言わないだろうか。

4月6日(水)
・エリンギを裂く。フライパンにオリーブオイルを気持ちが落ち着く分量だけ入れる。裂いたエリンギをポイポイとフライパンに放っていく。弱火。じょわーっと音がする。森の奥から聞こえたら怖そう。

・算数に出てくる円柱みたいなガラスのコップに、ろうそくの光が映る。キャンドルライトよりも美しい。感じている美しさは刷り込まれたもののような気がして、残念。

・タリーズのマロンパイは、カステラの一番下のザラメがトップコートになっていた。ザラメのお菓子、もっと増えて欲しい。単体では成立しない感じが愛おしい。ザラメ、チョコレートスプレー、アラザン。

4月7日(木)
・100均の風呂桶を使い始めて丸4年。真ん中に「OLIVE」とシンプルな書体で書かれているのを見たとき、店舗でしばらく買うのか悩んだ。えー。OLIVEって、お風呂に合わない気がする。まあいいか、OLIVEって。LIVEって書いてあるし。と思ってから丸4年。生きた。

4月8日(金)
・まいたけ。オリーブオイルぽとり。じゅーじゅー言ってる。12時半のまいたけよ。おひさまに照らされたキッチンが想像より暗い。

・八百屋のおじさんにブロッコリー買っていきなよ、と急に話しかけられる。「はいっ」と今週一番はっきりした返事をしてしまう。「水につけるんだよ」「水につけたからね」のどっちかの言葉が続いたと思うのだけど、わからなかった。

・おとなになっちゃったな。ファイル名に「0409_やさい株式会社」とかつけるとき思う。半角スペースの存在を見えるものにしようとする。

4月9日(土)
・飲食店にあるアクリル板。こころの壁の見える化のよう。ぎょっとする光景が日常になじんでいたのに気づけなかった。

・ビールの味よりも、昼ビールを飲んじゃったことに価値がある。ホットケーキの味よりも、夜ホットケーキを焼いちゃったことに価値がある。

・ふとん。あったかい。やわらかい。朝を知らせるスマホもせめてふかっとしてほしい。さわりごこち、さわられごこち。

4月10日(日)
・ハニーレモネードのレモンの薄さがうれしい。四角い氷とレモン。見つめてしまう。

・あんまりはっきりしたかたちで認識したくない気持ち。あんまりにもはっきりした言葉への疑い。

・あしたもキーボードを叩くよ。虚しくても怖くても怒ってても嬉しくても呆然とするわけでも震えるわけでも泣くわけでも踊るわけでもなくキーボードを叩くよ。レモンの薄さを忘れてはたらくよー

4月11日(月)
・「塩バタかまん」を食べる。パッケージを読む。

さっくりとした塩バターのクッキーでまろやかなカマンベールチーズのクリームをサンドしました。フランス産ロレーヌ岩塩使用。約12個入り
(重量で管理しているため、個数は異なる場合があります)


「約12個入り」の表記にときめく。いつぞやみた極細ポッキーのコピー「おいしさ次々50本(※1)!」の虚しさを思い出す。

・「さっくりとした塩バターのクッキーでまろやかなカマンベールチーズのクリームをサンドしました。」この文章が誰かの日記にも見える。
「2021年、まろやかなカマンベールチーズのクリームは、さっくりとした塩バターのクッキーにサンドされて世に出てしまいました。」なーんて。

4月12日(火)
・電車の窓が大きく空いていて、風の流れを読みたくて目を閉じる。座っている人間が横向きに高速移動している感じが好きだ。風と音ではここがどこかわからない。人間を信じて大人しく運ばれる自分。なぜか、ショートケーキを見ればいつでも、白い部分は生クリームだと信じていることを思い出した。あの部分が歯磨き粉だったらどうしよう、と考えた

4月13日(水)
・おさめた怒りの分だけ言葉が美しくなるのかな。

・愛しいコロッケそばミニカレー丼つき。サクッと揚げられたコロッケをつゆに浸す背徳感、じゃがいもが溶けきる前に食べきる使命感、つゆをすくったれんげでカレーを食べる満足感。おおコロッケよ、しょうゆ、みりん、かつお節、そして立ち食いカウンター、ありがとう。

4月14日(木)
・豚汁。とん汁。ぶた汁。豚トロをぶたトロと読むか、とんトロと読むか。

・おみやげの通りもんがおいしい。なごやんと似てる。ひよことも似てる。それでも好き。ウェブサイトを読んだら、必ず「とおりもん」と読ませたい意思を感じてなおさら好きになる。

福岡・博多名物のお土産として、お取り寄せのお菓子/和スイーツとしてたくさんの方に親しまれている明月堂の「博多通りもん(とおりもん)」
お客様が感動してまた食べたくなる、そんなお菓子(おまんじゅう)を作りたい!というお菓子づくりへの強いこだわりから始まった博多通りもん誕生のストーリー。

4月15日(金)
・マフラーをしてこたつに入る。しあわせ。目を閉じる。

・朝風呂。目を閉じる。ぱっと世界が黒くなる。真四角の浴室が慣れない空間に感じ、楕円にくり抜かれた入れものに、自分をそっと置いたような気になる。雨の音より24時間換気の音のほうが大きい。

・まばたきが好き。ろうそくや星空を見つめるとき、さらさら時間が過ぎていくのを、ちょっとだけ引き止める感じ

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