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【妄想新書】 超うんちく力

はじめに

現代人にとって最も重要な事は何か。

この問いに私は絶対の自信を持ってこう答える。

それは 「うんちく力」 である と。


物知りである事は、良い事である。物知りになりなさい。物知りな人は凄い。

幼い頃から、周りの大人達にこんな事を言われながら育った人は少なく無いだろう。

小さな子供は、自分が持っている知識を披露すれば、大人達から「すごい!そんなことも知っているんだね!」と褒めてもらえる。そして、知識を持つことは偉いという価値観を更に深めていく。

脳化指数*1 の高い我々人類からしてみれば、知識を追い求めると言う行為は価値観というより寧ろ、本能によるところが大きいのかもしれない。

大量の知識は、太古の人類が種として他の生物との生存競争を勝ち抜く上で、必要不可欠であったのだ。

しかし、今や種としての生存競争から離脱している現代人にとって、知識を得ると言う行為は何を意味するのか。

本書の目的は、その意味を解き明かしながら、「うんちく力」の重要性をできる限り多くの人に理解していただく事にある。

*1:脳の重さと体重から、 式 [EQ] = [定数] × [脳の重量] ÷ [体重]2/3 で算出される値

個としての生存競争

種としての生存競争を勝ち抜き、地球の覇者となった人類にとって、もはや脅威となる物は今の所存在しない*2。ただ、残念ながら競争そのものから解放されたと言うわけでは無い。地球の覇者である現代人は未だに、個としての競争、いわば人間同士の争いを続けている。

同じ種同士で争うのは現代人に限った話では無い。例えばカニは縄張りを守る為、爪の大きさで争い、シャコは己の持つハンマーの様な腕を振りかざし他のシャコを威嚇する。

ただ、これらの生物同士の争いと、現代人同士の争いでは決定的に異なる点がある。それは、「何で勝敗が決まるか」と言う点だ。

例に挙げた様に、現代人以外の生物の争いは、体の大きさや力の強さで勝敗が決まる。

では、現代人の争いは何で勝敗が決まるのか。

それは「うんちく力」である。

現代人は、「うんちく力」を武器に個としての生存競争を繰り広げているのだ。

*2:本書執筆時はコロナウイルス流行前であった。

チャグフォードの言い争い

なぜ現代人は、物理的な大きさやパワーでは無く「うんちく力」で争うのか。

実は人類は最初から「うんちく力」を武器に争っていたわけでは無い。むしろ、「うんちく力」で争うようになったのは、ごく最近の話である。

現代人が「うんちく力」で争う様になるきっかけとなった事件がある。それは、第三次産業革命の真っ只中、1969年10月18日に、イギリスの田舎町 チャグフォードで起きた「チャグフォードの言い争い」だ。

2人の青年が「知っている紅茶の淹れ方の種類の数*3」を競い争ったこの事件は、殴り合いなどの戦闘型の争いが主流であったこの時代において、かなり異質なものであった。

この2人の争いを最初は冷めた目で見ていたチャグフォードの住民達もやがて、「紅茶の淹れ方うんちく」披露合戦を始め、それがイギリス全土へ広がり、そして世界中へ広がっていった。

この一連の流れが現代まで続いており、今では社会的な地位の争いにおいて物理的な大きさやパワーが介入する余地はもはや無い。戦争では未だ物理的な闘争が行われているが、近年ではその姿を急速に変化させている。戦争から「暴力性」が排除されるのも時間の問題だろう。その結果が、今よりも悲惨でないと言う保証はどこにも無いが。

*3: この二人の青年は実は紅茶の淹れ方を一つも知らず、競いあっていた「うんちく」は全てでっち上げであったと言う事が後に証明されている。

うんちくはうんちでは無い

前章で述べたように、現代人は「うんちく力」を武器に競い合っている。つまり、現代社会では「うんちく力」がある者が正義だと言う事だ。

このように、現代社会において過剰とも言えるほどの影響力を持つ「うんちく力」であるが、実際本当に「うんちく」を理解している人は驚くほど少ない。

私が会長を務める日本うんちく協会(JUA)が3年前に実施した、東京都在住の20〜30代を対象に行った調査の結果、実に対象者のおよそ6割が「うんちく」を誤解しているといった結果が出た。

この結果を知らされた時、私は全身が硬直してしまった。この事実を私の脳は処理しきれず、身体中の筋肉に電気信号を送る事すらままなら無くなってしまったのだ。「うんちく」を正しく理解していない6割は、一体どうやって厳しい現代の生存競争を生き抜いていくつもりなのか。

JUAはこの問題を正しく把握するために、東京都在住のランダムに選ばれた150人に対し、簡単なアンケートを実施した。

その内容は「あなたのうんちくに対するイメージを教えてください」といったものだ。

このアンケートの主な回答を多い順に5つ紹介しよう。

1. 物知り 

2. うざい 

3. 汚い

4. 臭い

5. 上田晋也

回答ベスト5のうち2つが「うんちく」では無く「うんち」のイメージである。これはもはや誤解という次元を遥かに超えている。ちなみに、回答者の約2割に登る人数が「うんち」に対するイメージを回答していた。

また、「物知り」「うざい」「上田晋也」という回答も、うんちくの本質とはかけ離れている。

「うんちく」とは単なる知識では無い。披露されてうざいと感じる「うんちく」は「うんちく」では無い。上田晋也はもはや「うんちく王」では無い。



「うんちく」とは何か。



「うんちく」とは、「バックストリートボーイズ」である。


バックストリートボーイズになる

ここまで読んでいただいた読者の方々には、「うんちく力」の重要性について十分ご理解頂けただろう。本章では、「うんちく力」の高め方について解説していく。

誤解している方も多いが、「うんちく」とは単なる知識ではない。単純に知識豊富だからといって、それは「うんちく力」が高いとは言えない。

前章でも述べた様に、「うんちく」とはバックストリートボーイズである。

つまり、「うんちく力」を高めたいなら、がむしゃらに知識を付けようとするのではなく、バックストリートボーイズになる事を目指すべきだ。

そうは言っても、なれと言われて簡単にバックストリートボーイズになれる人など、バックストリートボーイズ以外にいないだろう。

そこで、以下では3ステップで誰でも簡単にバックストリートボーイズになれる方法を紹介している。


ステップ1. 「嫌われる」

バックストリートボーイズは、嫌われている。

だから、あなたもバックストリートボーイズになり、「うんちく力」を高めたいのなら、嫌われるべきだ。

しかし、ただ単純に嫌われれば良いというわけでは無い。あくまでもバックストリートボーイズの様に嫌われなければ「うんちく力」は高められ無い。

バックストリートボーイズの様に嫌われるとはどう言う事か。バックストリートボーイズはなぜ嫌われているか。

簡単である。それは、ダセェからだ。

バックストリートボーイズは、ダセェ。

あなたも一刻も早くダセェになり、嫌われよう。


ここまでできれば、あなたは既に一人前のバックストリートボーイズだ。

なので、ステップ2、3は割愛する。


「うんちく力」は一朝一夕で身に付けられるものでは決して無い。

しかし、本書の内容を理解し、そして実践すれば必ず現代社会で勝ち残れる骨太な「うんちく力」を獲得できる。

JUA会長として、多くの人のうんちくをコンサルしてきた私が保障しよう。

本書を手に取った全ての人が、「うんちく力」で幸せを手にする事を願っている。

おわりに

この本の構想を練りは始めたのは、実に4日前にも遡る。当時私は、JUA会長に就任したばかりで、多大なるプレッシャーを感じていた。

どうすればより多くの人々に、「うんちく力」を身につけて貰えるか。

その時に考えたアイデアの一つが、本書である。

始めは、出版のノウハウが全く無い状態から、どうやって本書の販売まで漕ぎ着けようか頭を悩ませていたが、結果的に多くの方や企業にご協力いただき、何とか無事この本を出版することが出来た。

ご協力いただいた全ての方、企業、JUAのメンバーにこの場をお借りして感謝を伝えたい。

本当に、ありがとうございました。


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