ダイヤXの定理
ダイヤXの定理
1、
「あなたのコレクションは何ですか?」
困った事にコレクションがない。この手の質問が恐いぐらいだ。日々の始終がこの質問のような疑問のような問いにかられている訳ではないが、時に心が捕らわれる。
だがもしかしたら人より多くは心が不安になる事が多い方かも知れない。かなり周囲のコレクションの話に敏感だし、そういった話に参加するのを避けようともしている。しかしそれでいて、その手の話に興味津々なのだ。
「わたしミッキー集めてるの」
それが聞こえた瞬間、右の耳が斜め上に上がる。
「どれくらいになった?」
「部屋ん中いっぱいだけど次買ったら部屋ん中置けなくなる」
〝そんなにミッキー集めてどうすんだよ〟
心の中で吐き捨てる。だが心の中で貶しても、話のその先が聞きたい。
「ドナルドとかはいないの?」
「いない。ミッキーだけ」
「ミニーも?」
「ミニーはいる。でもちょっと」
ミッキーの何がこの子にコレクションさせるのか、全く判らない。
「行きたいね。ディズニーランド」
「次に買うのは決めてるけど…行ったらまた迷いそう」
別では。
「ルパン三世の物集めるのが好きでさ」
「へぇ」
〝へぇ、ルパンねぇ〟
「DVDをボックスで買っちゃったよ」
「幾らした?」
「へへ…」
「銭形のとっつぁんが好きだな。とっつぁんの何か持ってる?」
「そうだな…キーホルダーに下げるフィギアならやってもいいかな」
「ハハ、いらないよ」
〝そうだな、いらないよな〟
「銭形のジッポーなら?」
「ん?それ考えるなぁ…くれるの?」
「やらないよ」
「何だ!」
こういう話を聞いている分には良いが、ハタと我が身を振り返ると何もない。
集める情熱が沸かない。ミッキー、ルパン、知ってはいるし楽しんだがそれらの付随物を集める気が起きない。
そこで無理矢理何かを収集してみる事にした。
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