End Gameを目指して!自作キーボード「Ergo The End」を作った話
この記事はキーボード #1 Advent Calendar 2022の21日目の記事です。
この前の記事はhsgwさんの「PYTHONだけでキーボードを作る」でした!
#2も含めてここまでの記事もとても興味深く拝見しています!!
今回初めてのアドカレ参加になります、YMGWorksと申します!
夏ぐらいから、左右分割キーボード 「Ergo The End(以下、TheEnd)」を設計、頒布を始めました。
21年ごろから自作キーボードと出会い、そしてTheEndの設計・そして頒布を通じて、自作キーボードの魅力にすっかりと、憑りつかれてしまいました。
「基板設計はさすがにハードル高そう・・・でも気になる!」
「TheEndってどんなキーボードなの?」
そんな方々の目に留まればと思います!
自作キーボードとの出会い
2021年の冬、「ここからはじめる自作キーボード」に付属のhifumiを作ったことがきっかけだった。
WEB会議用のショートカットキーが押せるような、専用スイッチがあると幸せなんじゃ?というのが理由だった。
しかしながら
「作ることがすでに、楽しいぞ・・・」
「キースイッチ?、軸?、迷うぞ・・・」
「キーキャップのプロファイル?、迷うぞ・・・」
「LED、光るぞ・・・」
「これが自作キーボード・・・」
そんなわけで、界隈で「沼」と呼称される入口に達してしまった
こうなれば、マクロパッドだけでなく、普段使いのキーボードがほしい。
特に、市販品には珍しい割れたキーボード、つまりは左右分割型のデザインに、ただならぬロマンを感じてしまい、最初の1台としてcorne(crkbd)のキットを手にした。
SpaceやEnterを親指で操作するのがロマン
TRRSケーブルで左右の機体が通信してるロマン
40%の少ないキー数のコンパクトな配列のロマン
特に今まで、何してましたっけ?的な親指の活躍頻度が上がったことは、新鮮だった。
40%キーボードであるcorneを最初に手にしたことで、ホームポジションから全く動かない、なぜならそこにキーは存在しないから・・・という、そこそこに、振り切れたスタンダードを受け入れることができた。
遊舎工房さんのキットを眺めながら、数字行もあって、初見でも安心そうなLily58を購入たいなーと思っていたのだが、気が付けばcorne(crkbd)を手にしていた。
でも結局Lily58も買ってしまう、それが沼・・・・・
Ergo The Endの基板設計を決意
・もう少し親指近辺にキーを増やしたい
・IrisやErgoDoxがカッコイイ
・ホットスワップ対応にしたい
・TRRSケーブルを親指近辺から生やすとかっこいい?(笑)
色々な欲が出てきたしまった・・・
この欲と折り合いをつけるには、何かを妥協するかさもなくば、基板設計?ということで、後者の道を選び、自キ活沼の深淵に向かう運びとなった。
何から始めてよいのやら・・・という悩みはこの1冊がほぼ解消してくれた。自作キーボード設計入門 foostan[著]
また日本最大のキーボードコミュニティDiscord(Self-Made Keyboardin Japan)の皆さんには、数々の助言をいただき大変感謝している。
配列のコンセプト
さっそくKeyboard Layout Editor(KLE)で理想の配列を煮詰めにかかる。
ざっくりと以下を意識した。
crkbdやLily58でしっくりきていた、カラムスタッガードがベース
数字行はカット
親指の円弧をイメージして最下段内側のキーを並べる(0°、15°、30°の弧になってる)
視界の内側にキーを集めてサムクラスター(親指まわり)を形成
サムクラスターのキー数を充実させ使用者の自由度を担保する
(最悪キーが余っても極端に邪魔にならないデザイン)最大のキーサイズは1.5uまで(スタビを使わず、部品点数を抑える)
見た目の通り、TheEndはサムクラスターに特徴を持たせた設計としている。また、サムクラスターにより、視野の内側のキーが充実している点、感覚値ではあるが、完璧なブラインドタッチが苦手な私にとっては、打鍵時の安心感・安定感につながている。
こうして、サムクラスターの出島と、40%ライクな配列に62個のキーが並んだ。スチレンボードのモックアップで、干渉や打鍵しにくいキーがないか確認。実体化すると、それなりに感動がある。
外形のコンセプト
基板や外形の設計はKi-Cadを使用。シンプルで設計しやすいサンドイッチケースを採用。ポイントは以下、デザイン面と機能面を半々ぐらいで織り込んだ(織り込めたかな・・・?)。
サムクラスターのくびれ(笑)をつくり、独立感を出す
マイコンは基板裏に配置(基板表はキーキャップを主役にしたく、マイコン専用スペースをつくりたくなかった)
LEDは単眼、インジケーターとして配置(ただただ、スリットを怪しく光らせたく)
ロゴはパワポで描画
TRRSケーブルはサムクラスター上部から生やす(デザイン半分、狭いデスクでタブレット画面等に近接したときケーブルやコネクタの取り回しがしやすいという機能面半分)
マイコンへの給電は筐体横出し(こちらも狭いデスクでの取り回しを考慮)
イベント参加・頒布をきっかけに
実は最初は完全に自分用にするつもりだった。ErgoTheEndなんて大仰な名前もつけちゃったしな・・・(笑)という気持ちもあり。
きっかけになったのは2つのイベントだった。コロナ禍から自キ沼勢の自分にとっては、初のイベントでもあった。
一つ目はCluster(メタバース)上で開催という革新的なイベント@sirojake(ginjake)さん主催のキーボード博覧会。The Endの爆誕自慢をしてみよう!ということで、LTにエントリさせていただいた。
二つ目はコロナ禍で中止されていたというリアルイベントの復活、
@salicylic_acid(サリチル酸)さんのキー部1%。完成したThe Endを実際に触ってもらう機会をいただいた。
イベントに参加してみると、本当に皆さん強いこだわりをお持ちで、基板やケースの設計をする方、キーキャップをデザインしている方、極上の打鍵感を追求する方、論理配列を極める方・・・話が尽きないし、楽しみ方を自由に、多様に表現されている皆さんに刺激を受けた。
私も私なりの楽しみ方を表現して、もしそれが誰かに届いたり、その人の楽しみ方を知ったり、そこからまた新しいものが生まれたりしても、しなくても・・・
少なくとも、もっと自作キーボードのことを理解して、もっと楽しめるだろうなーと思い、準備を進めた。
2つほど、嬉しかったことがあった。
ひとつは、はじめてビルドログやKEEB_PDへ投稿していただいたとき。
これは、ほんとに、モノづくりやっててよかったー!!の瞬間。https://twitter.com/Sonetto_9999/status/1573975604499824642?s=20&t=SwYAp-3mTWoS1SiZsLRKnA
もうひとつは、コミュニティでのやり取りが生まれたことである。
コンスルー不足や私の未熟な部分もあったのだが、以前ビルドされた方が、ビルドで困っている方をTwitter上で支援してくださったり、ゲーミングに特化した独自配列、チルトの研究、普段使いに合わせたサムクラスターの活用を検証していただいたり、設計者の意図や想像をどんどん超えていくのを感じた。
設計や機能に妥協せず、それでいて、コミュニティの皆さんと成長・進化していく余地をもったキーボードというのも、自作であることの醍醐味の一つかもしれないと思った。
The End of The Begining・・・・
@salicylic_acid(サリチル酸)さんの週報に取り上げてもらったとき、1.5u以外のサイズ対応の確認がきっかけで、サムクラスターの自由度について、考えるようになった。
分割キーボードを組む時には、キーキャップセットであまりガチなISOエンターをサムクラスターに寝かせて配置してみたら?いわんや、ロータリーエンコーダーをや、である。
また、ちょうど同じころ@4py1(パレットシステム よっぴさん)のから、1uサイズのトラックボール「AZ1UBALL」が発表された。
ちょうど1uサイズのポインティングデバイスとしては、アナログスティックの検討も始めていた。
また割れたキーボードの次は折れた配列である。ラフスケッチとモックアップベースでAliceライクな物理配列の研究も始めた。
更には光ったらかっこいいのではという、魔界へのいざない笑もあり・・・
と、End Gameどころか、沼を急速潜行である(笑)
まずはサムクラスターのISOエンター対応、ロータリーエンコーダー対応、LEDまでをErgo The End Customとしてβ版基板を開発。
色々と改善点も見えてきたが、何とかカタチになりつつはある。
(AIR-Cのスケスケ具合が目立ってしょうがないのだが笑)
ポインティングデバイス対応と配列改変は、外形も含め見直した次回作(仮称:End To End)へ託すこととした。
”終わりの始まり”・・・・当分自作キーボード沼の底は、見えそうにない。来年も自キ活ライフにどっぷりと!
この記事は「Ergo The End」を使って書きました。
皆さんよいクリスマスをー!
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