SS ケーキ

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蓋を開けるとケーキはぐしゃぐしゃになっていた。
「ケーキは電車の揺れで大きく崩れていた。」だから崩れたのだ。
大切な人のために、買ったのに、なんてことなんだろう。
どうしよう、という思いで心がいっぱいになり、苦しくなった。
怒ったら、どうしよう。そういうことがいっぺんに頭を巡り、
嫌になってしまった。

失敗ばかりする私ってなんだろう。そう思って、泣きたくなった。
こんなケーキじゃ会いに行っても仕方ない。調子が悪くなったって連絡して、
キャンセルして、私は家に帰って、カモミールを飲みながら泣こうと思う。
声を大きく出してなくんじゃなくて、泣くに任せて、涙がすっと頬をつたう。そんな泣き方で。

結局、あわないことにした。私のものにあるのは、崩れたケーキとカモミール。そして、寂しい心。



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