コープス・コーア


 死の荒野の土は黒く、バイオ生物の頭骨が転がっていた。辺境地域における最後の盾である生協の武装バンが不毛の荒野を疾走していた。その走行風景は野生のチーターを思い出す走りだった。
「兄弟、目的地にはいつ到着するんだ?」
 重サイバネ武装職員のチューマは相棒のドロイドドライバーに目的地の到着時間を訪ねた。生協の輸送業務は基本的にツーマンセルだ。すなわちドライバーとボディガードである。生協職員は基本的にメガコーポの保護の外にある辺境地域に出向くことが多い。辺境にはレイダーや危険バイオ生物が多く生息しているので必要な措置だ。
「そう急かすなよ……もうすぐ危険地帯だ。ベテランの生協職員もここで命を散らすこともある。周囲に注意を向けろ」
 ドロイドは機械的にチューマに注意を促す。空には不穏な黒雲が広がり遠くの方には雷鳴が聞こえた。チューマは気を引き締めて何かが出てこないか注意した。

都市と辺境の境界近くにある人気のない丘の上に双眼鏡片手に道路の動向を探るものがいた。
 その存在は下半身がヘラジカで上半身が人間という冒涜的な異形だ。その姿は神話に出てくるセントールのようだ。一度の狩りのために何時間でも粘る真の狩人であるセントールは、朝から死の荒野を走る自動車を通りかかるのを待ち続けたのだ。恐るべき忍耐力だ。やがてセントールの視界に生協の武装車両が入った。セントールは角のアンテナで仲間たちに獲物が来たと連絡した。地響きが遠くから響き渡りセントールの群れが集結し始めた。

一方、生協の武装車両は不穏な気配を感じ始めていた。チューマは無言でソードオフ・ショットガンの弾薬を確認し始めた。
「ドロイド、そろそろレイダーが来る……レイダーの処理で時間を食いたくない。手早く終わらせるぞ」
 チューマがそういいきらないうちにセントールの群れが生協の武装車両に向かって突撃を仕掛けてきた!

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