金太郎:キング・オブ・スモトリ

足柄山山中、中央の威光も届かない辺境の地にその闇スモウが存在しました。
 一晩に大金が縦横無尽に動く闇スモウですので、観客は真剣な表情で土俵を見つめています。
 場のムードを盛り上げる雅楽演奏が鳴り響きメインマッチの開始です!
「東、赤兜丸!」
 野性的な目を携えたスモトリが土俵入りしました。明らかに闘志に燃えています。
「西、金太郎!」
 アキレスめいた偉丈夫スモトリが続いて土俵入りし、観客が歓声が鳴り響きます!
「ミアッテ、ミアッテ」
 行事からスタンバイを促され立ち合い準備に入り観客はかたずをのんで見守ります。
「ハッケヨイ、ノコッタ!」カーン!
 金太郎、赤兜丸、試合開始のゴングを聞いて両者0.1秒後にぶちかまし体制に入り、一瞬の静寂!
 赤兜丸は土俵の外に押し出されてしまいました。わずかに金太郎の突っ張りが早かったようです。
「勝者、金太郎!」
 大歓声で観客は金太郎の勝利を称えます!
 赤兜丸と金太郎は握手を交わし土俵から去っていこうとするその時!
廊下の壁にもたれかかるサングラスをかけた謎の武士がいたのです。
「金太郎君、いや、金時君というべきかな? 君の活躍を見せてもらったよ」
「何故、俺の名前を知っている! お前は何者だ!」
「まぁ、落ち着きたまえ、私は中央の人間だ、名刺もちゃんとある」
 謎の武士は、源頼光と書かれた名刺を差し出しました。
「頼光さんとやらが、俺に何の用だ」
「中央のスモウが危機に瀕していることを知っているかい?」
 金太郎は首を横に振ります。何しろ中央の威光が届かない辺境である足柄山ですから、中央スモウが危機に瀕していることなど知る余地もありませんでした。
「中央スモウリーグに所属するスモトリが、次々に謎のスモトリ軍団に路上スモウをしかけられた上に敗北する大事件が起こったのだよ」
「路上スモウだと! スモトリ界の不文律を侵したというのか」
スモトリたるもの土俵上で決着をつけるべし、ルール無用の路上スモウは禁忌なり。スモトリ原則を犯す無法のスモトリ集団が中央スモウ界に現れたということでしょうか?
「路上スモウ事件の首謀者は自信満々に羅生門に宣戦布告の張り紙をしたためていたのさ、大江山一派参上とね」
「大江山一派は平安武道界統一を掲げ、路上スモウ事件はその一環に過ぎない、今倒さないと、武道界は大江山一派に牛耳られてしまうのさ」
「なるほど俺に大江山一派退治の助力をいただきたいと遠路はるばる足柄山に赴いたというわけか」
「私は既に大江山一派に対抗する3人の戦士をスカウトしている。君が4人目だよ」
「だが、俺が中央スモウで土俵入りしていいのか? 相手の実力は土俵上の戦闘力は?」
「大江山一派のスモトリはいずれも実力あるスモトリだ、君と互角、いやそれ以上のスモトリが在籍している。相手には不足なしだね」
「ほう、それなら面白い取り組みになりそうだ。よろしく頼むよ頼光さんよ」
 かくして金太郎は大江山一派とスモウするために中央スモウ界に殴り込みを仕掛けるのでした。
(以下、 洛中スモウウォーズに続く)

出場予定スモトリ
源頼光軍団

金太郎:アキレスめいた肉体を持つ、恐るべき押し出し力を持つ足柄山の英雄。山姥に育てられた。

赤兜丸:金太郎と勝るとも劣らない実力を持つスモトリ。この野性的な取り組みにファンも多い。

渡辺綱:武芸百般に通じた豪傑、雷電めいた投げ技を持つ。女性に弱い。

碓井貞光:相手の技を見切り優雅に倒す美青年、サポートにもたけている

卜部李武:謎の男、何らかの武術の使い手だと思われるが……

大江山一派:平安武道界の統一を目論む謎の一派、おそらく大江山を拠点としている

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