見出し画像

#『浅草ルンタッタ』



☑️#読書の秋2022


 前回の記事で初めて原稿用紙10枚分(約4,000文字)の記事を書き終え、次に挑戦しようと思ったのがnoteが主催するこの企画。
 文章を書く難しさと愉しさを味わったアラサーが、鼻息をフンフン鳴らして挑みます。


 どの本についての感想文を書こうかと、数ある推薦図書を物色していたところ、あるところでスクロールする親指が止まります。
  「浅草ルンタッタ」劇団ひとり
  他の推薦図書も見ましたが、私の心はすでに決まっていました。


☑️本のあらすじ

 時は日露戦争が終わって間もない大正時代。
 舞台はタイトルの通り、当時日本一の歓楽街であった「浅草」。
 置屋(芸者や遊女を抱えている家)の前に生後8ヶ月の女の子が捨てられていたところから物語は始まります。
 日々を懸命に生きる遊女と女の子の、希望に満ちた生活を一人の男がぶち壊します。
 涙なしには終われない、傷を負った人間たちの激動の人生ここにあり。




☑️劇団ひとり

 言わずと知れた、大沢あかねを妻にもつ国民的な人気お笑い芸人。
   大ベストセラーとなった書籍『陰日向に咲く』の執筆に加え、映画『浅草キッド』の監督を務めるなど、活躍は幅広い。

 しかし、私が本書を選んだのは、「芸人が書いた本だから面白そう」ではなく、劇団ひとりという男に衝撃を受けたことがあったからなのです。紹介します。



☑️劇団ひとりの読書感想文

 テレビ東京で放映される『ゴッドタン』。
 わざわざ紹介しなくてもいいほど人気の番組で、「お笑い芸人ってこんなにすごいのか」と度肝を抜かされた場面がありました。
 それは、劇団ひとりが、キングコング西野亮廣に送った読書感想文です。
 では、どうぞ。

「革命のファンファーレ」を読んで

 西野が本を書いた。どんな本かと思い手に取ったらまさかのビジネス書だった。

 西野が描いた「えんとつ町のプペル」という絵本を通じてビジネス界へ一石を投じている。

 絵本というファンタジーの世界から程遠い現実的で策略的な面が赤裸々に綴られており、売上至上主義というある種クリエイターにとっては残酷であり無慈悲な数字の羅列に対し、真っ向から勝負する著者の姿勢には驚かされた。

 そしてかの天才ピカソは絵を描く以上に商売が上手かったと言われている。しかしゴッホにはそれができなかった。

 もしゴッホが本書を読んでいれば歴史は大きく変わっていたに違いない。

 未来のゴッホたちよ、本書を手に取れ。
 聞こえてくるのは革命のファンファーレだ。
「ゴッドタン」テレビ東京


 この文章を読んだ時は、「いったいどれだけの本を読んでいるのだろう」という感想を持っていたのだが、文章を書き始めた今では、「この文章力をつけるためにどれだけの文章を書いてきたのだろう」という感想を持つようになりました。

 少し余談にはなってしまいますが、上記の感想文に出てくる、キングコング西野ゴッホについても少し述べたいと思います。


☑️キングコング西野

 こちらも言わずと知れた大人気お笑い芸人であります。
 感想文の題材となっている『革命のファンファーレ』(幻冬舎)は2018年の刊行でありながら、今読んでも非常にビジネスに役立つ内容となっています。
 また、自身が脚本を務める映画「えんとつ町のプペル」は国内外で大ヒット。
 それだけにとどまらず、ミュージカル「えんとつ町のプペル」そして、「Poubelle NFT」など、圧倒的な努力をもって多方面で活躍しています。
 最近では、自身で建てた家を貸し出すといったビジネスまで。
 今後はますます目が離せない芸人となっていくことでしょう。


☑️フィンセント・ファン・ゴッホ

 今となっては超がつくほど有名な画家でありますが、当時は弟テオの経済的支援がなくては生活することができなかったほど貧しかったのがゴッホなのです。
 ゴッホがどれだけの絵を描いて、どんな苦悩を抱えていたかについては、原田マハ著作の『リボルバー』を読んでみると見えてくるのではないでしょうか。


 では、この辺で本題である「浅草ルンタッタ」に戻りたいと思います。


☑️浅草オペラの栄枯盛衰


 この本は、1917年から関東を大震災が襲う1923年までの間、浅草で一代ムーブメントを起こした『浅草オペラ』が主題の物語となっています。


 この本に出てくる登場人物は、置屋で働く数名の遊女、遊女の世話人、捨てられていた赤ん坊、そして薩摩出身の一人の警察官。
 この置屋は「燕屋」といい、吉原遊郭より安い値段で遊べる非合法の宿。
 本の導入部分は、この遊女たちと、赤ん坊の成長を追っていくものとなっています。


 当時、明治維新から間もない日本は、国の中枢は薩摩・長州の人間で占められており、薩摩出身の警察官がどのような態度を国民に対してとっていたかは想像に難くありません。
 また、激闘の日露戦争を終えたばかりのこの国で、国家権力といえば、今とは比べ物にならないくらい大きな存在だったのではないでしょうか。


 赤ん坊も成長して9歳の可愛い女の子になったある日、母親となった遊女の一人が、この薩摩出身の警察官を殺害します。(涙が溢れて止まらない場面です)
 母親だけでなく、共犯として遊女や世話人も刑務所行きになり、女の子も身を追われますが、なんとか逃げ延びます。
 その逃げ込んだ先が、浅草オペラの劇場の屋根裏でした。


 頼る人もいない女の子は、劇場の屋根裏で身を潜めながら7年間を過ごします。
 もちろん、毎日「浅草オペラ」を目で耳で感じながら。
 そしてある日、刑期を終えた置屋の世話人と偶然、劇場で遭遇します。


 女の子は、その世話人から、刑務所へ行った母親や遊女の状況を聞きます。
 母親は無期懲役となり、面会も許されない状況に打ちひしがれる中、刑務所への慰問をオペラ劇団が行うことを女の子は知ります。


 母親に会いたい一心で劇団に入り、鍛錬する女の子でしたが、ここで悲劇が。
 大震災が関東を襲うのです。


 焼け野原となった浅草での、女の子と母親の最後は涙腺が爆発すること間違いありません。





 この話と同時進行で、この本の主題である浅草オペラの栄枯盛衰が描かれています。
 この本を読むまでは浅草オペラという存在を知りませんでしたし、中身はタイトルのようなポップさとは真逆で、上手くいかない人間たちの葛藤が描かれています。

 ぜひ、短い年月ではあったものの浅草で一代ムーブメントを起こした『浅草オペラ』を味わってみてはいかがでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?