仮面ライダーゼロワン 29話感想

お仕事5番勝負、決着

 年明けから続いていたお仕事5番勝負に決着がつき、ZAIAが勝利しました。

 長かったな、というのが正直なところです。そして時間をかけた割に、描きたいものがあまりよく見えてこなかったな、とも。華道勝負のような、人間とヒューマギアが互いを認め合うというようなこと?消防士勝負のように、人間とヒューマギアが協力すること?あるいはそれらを含む、人とヒューマギアの様々な関わり方についてなのかもしれませんが、いずれにしても3か月という放送期間を費やしたにしてはメッセージが弱い。むしろこの期間については天津社長の不正やマッチポンプが繰り返されていた印象の方が強いです。

 今週のお話ではゆとう議員もチェケラも再登場がなく、前回の献金(?)のような不正や、討論会での出来事などに一切のフォローがなかったのは残念でした。ゼロワンにはお仕事紹介的な側面もあると思っているので、政治家やラッパーを印象悪く描いてしまって終わりなのはやっぱりいただけない。

 ヒューマギア自治都市構想も否決されてしまったので、今回の勝負のためだけに用意された唐突な設定という印象になってしまいました。わざわざデイブレイクタウンを持ち出してきたあたり、もうちょっと何かあるのかと期待していたのですが、空振りだったようです。


ランペイジバルカン登場

 先週の予告にあった通りランペイジバルカンが初登場し活躍を見せてくれましたが、それに合わせて不破さんの頭に埋め込まれているチップに滅亡迅雷.net最後の一人、「亡」の人工知能が使われていることが明らかになりました。これまでレイドライザーを配り、不破さんが追っていた存在も、亡の見せた幻覚だった。アサルトウルフに変身できたのもそのせいだったと。アサルトウルフで同じ滅亡迅雷の雷を破壊してしまっていますが、それはいいのかな…。亡は女性的な声なのですが、そちらが意識の主導権を持った際の不破さんの役者さんの演じ分けがうまいな、と思いました。

 ランペイジバルカンの戦闘シーンは非常に良かったです。これまで集めてきたプログライズキーの力を終結しているだけあって、各所にそのモチーフが現れる演出、スピードとパワーという2種類の能力を切り替える戦い方、さらにはオープニング曲までかかって、まるで主人公のようだ...。ランペイジオールブラストの時に、背中から生えた羽を地面に突き立てるのもカッコいい。

 戦闘シーンが良すぎて見ている間は忘れていましたが、サウザーを相手にしているにも関わらず変身前、変身中共に亡の干渉はありませんでした。これは不破さんがそれこそ力技で亡の干渉を完全に抑え込んだものなのか、はたまた一時的なもので、場合によっては今後また亡に意識を乗っ取られるようなことがあるのか、ちょっと今週の内容だけでは分からなかったので、今後次第ですね。個人的には「今回は気合で抑え込めたが、実はまだ亡による干渉は起こり得る」ぐらいの感じがいい気がします。迅と滅がそれぞれ亡のチップを宿した存在として不破さんを重要視していますし、人工知能だけの存在とはいえ滅亡迅雷最後の一人というキャラクターをこれきりにしてしまうのは惜しい。(一応ブルーレイ特典の「プロジェクトサウザー」では亡が実際に姿を現すようですが。)

 バルカンの活躍の反動というわけではないでしょうが、番組上の主人公のゼロワンの方はいいとこなしでした...。サウザーとジャッカルレイダーからイズを守る時には、暴走時に見せた金属のバッタを飛ばしてバリアを張るような戦い方ができればもう少し上手く立ち回れた気がしますが、そこはCG予算的な都合なのかな…。分身能力が強力ながらも予算にもすさまじいダメージを与えるために出番が少なかったガタ〇リバとかも過去にありましたからね…。


「夢」とは?

 今回の話は「夢」という単語がたくさん出てきました。サブタイトルも「オレたちの夢は壊れない」でしたし、劇中のセリフでは街頭でビラ配りをして住民投票での賛成を訴える或人と、それを見て心打たれたらしい不破さんからが主でしたが、正直この件は腑に落ちませんでした。

 或人は「ヒューマギアは夢のマシンなんだ」と言います。でも実際に今あるヒューマギアには問題が起きていて、それを利用したり、否定してくる相手もいる。そういった現実に対して或人が「夢」に近づくために具体的に何か努力をしている描写がどれくらいあったかな、というと非常に怪しいなと思います。

 ヒューマギア製造、販売をしている飛電という会社にとって、ヒューマギア暴走という問題は「ホッパーブレードで元に戻せるので問題ありません」というものではなく、根本的な発生そのものを無くすべきものです。「ヒューマギアがなぜ暴走するのか」「暴走の原因は何なのか」というところについて、或人は全く積極的に踏み込んでいこうとしていない。物語の進行はたいてい滅亡迅雷.netや天津社長の側から語られることによって進み、或人はひたすら受け身状態です。

 また、30話近く話を進めてきているのに或人のヒューマギアに対する知識が乏しい描写が多いのも気になります。ヒューマギアの開発、製造担当者(これもヒューマギアでしたが)のことを知らなかったり、お仕事勝負に用いるヒューマギアの選定ができず、イズに安直に頼るなど、ドラえもんにおけるのび太君状態です。視聴者に分かりやすく伝える必要があるにしても、例えば候補ヒューマギアについて或人が既に知っていたり、或人が提案したものに対してイズが案を出したり補足の説明をするような描写の仕方があれば、もう少し社長として自社のことを知ろうとしているような印象を与えられたはずです。

 挙げた例はほんの一部ですが、こうした理由から僕は「或人が夢に向かって進んでいる」存在には見えないのです。第1話で社長就任してから成長というものがほとんど見られない。頼りない主人公と映ります。そんな彼から「夢」について語られ、それに不破さんが影響を受けるという展開が来ても、正直共感することができません。「ヒューマギアは夢のマシン」論と、それにかける或人の心意気が少しでも補強されるような展開を今後は望みたいです。

次回からは新章

 お仕事勝負に敗北し、或人が会社を追われた次回から新章スタートということで、「ついにゼロワンの反撃が始まる」とのこと。今週のラストでゼロワンドライバーが或人の手を離れたのでどうなるのかと思いましたが、来週早々に戻ってくるようです。飛電の社長でない或人がゼロワンに変身できるの?という疑問はありますがこれは次回を待つしかないでしょう。

 ゼロワン復活には迅も絡んでくるようで、ようやくメインキャラクター同士の関係が深まってくるのでしょうか。これまでは「飛電の社長」という立場がある種の枷になって、イズを除くメインキャラクター達との関係をあまり深められていない印象のある或人ですが、ここから各キャラクターの関係性が深まる展開があるでしょうか。正直お仕事勝負はかなりダレてしまった感が強いので、ここから巻き返してほしいところです。


番外:腹筋崩壊太郎

 youtubeで「奇跡の転身!?アルトVS.腹筋崩壊太郎 宿命のギャグバトル!」が公開されました。

 内容は純粋なギャグ100%で、シリアスやっている現在とはちょっとタイミングが合ってない気もします。時系列としては、劇中にランペイジバルカンキーが出てきていることから今週のランペイジ変身後から或人が飛電を去るまでの間なのかと思われますが、こんなことをやっている余裕はなかったのでは…。ギャグ100%なので真面目に考えるだけ無駄なのかもしれませんが。

 感想としては、あまりにも堂々としたネット媚び、ウケ狙いっぷりを半笑いで流せばいいくらいの内容でしたが、「ヒューマギアプログライズキーをショットライザーで素体ヒューマギアに撃ち込むと複製のヒューマギアができる」というところは、今後の本編で使われるかもしれませんね。使うなら本編で出しておいて欲しい…と思いますが、もう仕方がないのかな。とりあえずこういう設定もあるらしい、ということだけ覚えておくことにします。

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