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2020.12.12 ネーブルオレンジマーマレード

マーマレードがどうのこうの言い続けていながら、意外と触れたことが無かったオレンジ。

ていうか「マーマレード」といえば「オレンジマーマレード」では?各メーカの商品ラインナップにもオレンジマーマレード。むしろ他の柑橘のマーマレードを目にすることの方が少ないかもしれない。

一方、手作りジャム界隈では案外「オレンジマーマレード」は見かけない。あるにはあるが、他の柑橘に比べると少ない。例えば第1回マーマレードアワードの受賞一覧(https://marmalade-festival.jp/report_2019.html)なんか見れば一目瞭然だ。あるにはあるが、「オレンジマーマレード」の響きの世間での馴染み具合から考えると明らかに不足している。

理由はいくつか考えられるけど、いちばんわかりやすいのは、国産オレンジが手に入りにくいことだ。その辺で売られているオレンジはほとんど全てが輸入品で、輸入品には防黴剤が使用されている。切って剥いて食べる分には問題ないが、皮まで使うマーマレードの手作りにあたってはちょっと…ということで、手作りマーマレードと言えば国産柑橘というのがスタンダードである。(防黴剤の危険性やら貿易の話など始めると大変ややこしいことになるので、「防黴剤は口にしない方が良い、知らんけど」というのを暗黙の了解として、「国産柑橘消費の促進」を旗印に国産柑橘を使ってマーマレードを作るのが、界隈の共通認識っぽい、知らんけど。)ということで、あまり売っていないオレンジよりも、ゆず、金柑、甘夏、いよかん、八朔などなどはいくらでも買えるし、無農薬のものも比較的手に入りやすいので、そっちを使うのは道理である。実際、オレンジに手を出す(=国産品を探して買ってマーマレードにする)のはガチ勢が多い気がする。

あとは、まあ、身も蓋もないけど、そういう種々の柑橘を全部ひっくるめての「オレンジ」、つまり広義の「みかん」に近い意味として「オレンジ」と呼んだうえでの「オレンジマーマレード」というフシもある。アヲハタの「オレンジマーマレード」の原材料には複数の柑橘が含まれるが、筆頭は夏みかんだったりする。

マーマレードの本場、イギリスはどうかというと、まあ詳しいことは知らないのだけど、とりあえずよく言われるのは「伝統的なマーマレードで使用するのはセビルオレンジ」ということ。つまり「オレンジマーマレード」こそがマーマレードの本流であると言える。本家ダルメインの世界マーマレードアワードでの出品カテゴリーのNo.1はもちろん「セビルオレンジのマーマレード」である。ぜひ作ってみたい気はするが、生セビルオレンジは日本ではまず手に入らない。

今回は、たまたま立ち寄った和歌山県のアンテナショップにたまたま置いてあったネーブルオレンジ。ただ、じつは、ひとくちにオレンジと言ってもセビルオレンジとネーブルオレンジは分類上まあまあ異なる品種(どちらかというとセビルオレンジが一般的なオレンジのイメージと違う)なので、たぶんマーマレードの仕上がりもまあまあ違う。なお、ネーブルとは「へそ」の意味だそうで、おしりがへそっぽくなってるのがネーブルオレンジ、そうじゃないオレンジはだいたいバレンシアオレンジ。


レシピとしては、安定のマーマレードレシピを踏まえつつ、少し違う工程、というか以前のマーマレード講習会で教わったレシピ準拠。といっても異なるのは「搾ったあとに外皮は大きいまま水で煮る」という点のみ。煮て柔らかくなった皮を刻むので薄くはできないが、それはそれでラクである。あと、どちらかというとこちらの方がクラシックな製法、らしい。

半割りにして果汁を搾り、それを半分にして鍋に投入。たっぷりの水とレモン汁を加えて煮る。1時間以上煮る。

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皮がじゅうぶんに(箸が通るくらい)柔らかくなったら火を止め、皮をざるに上げ、煮汁は目の細かいざるなりサラシなりで漉す。

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皮のほうはワタを付けたまま煮てるので、スプーンでこそぎ取る。生で取るよりラク。柔らかい皮を厚めの5〜6mmくらいの幅に刻む。

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5mmで刻むと、1mmに刻むより5分の1の手数で済む。柔らかいのでナイフが滑ることもない。全体的に作業性が良いが、それこそがクラシックである理由かもしれない。

刻んだ皮、煮汁、搾った果汁の重さを量る。50%の砂糖を量る。皮と煮汁を鍋に戻して火にかけ、沸騰したら砂糖と果汁を少しずつ加える。

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さて、ここから煮詰めていくわけだが、前回のゆずマーマレード(https://note.com/uncountable/n/nd259d5cfa911)での反省から、アルコールテストによるペクチン濃度の確認に加え、きちんとpHと温度を測りながら進める。

当初はペクチン濃度、pH、糖度とも不十分なので、まずは煮詰める。pHで合わせるイメージで。

pHが良い具合になったら、この時点でペクチン濃度がじゅうぶんであることを確認して、温度を見ながら砂糖を追加する。結果的に10%分の砂糖を追加したところで目標の温度まで上がったので、これで出来上がりとする。

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おっ、これは良いマーマレード。かなり甘いけど、これくらいの糖度にしないとクリアなジュレは固まらないいうことがわかってきた。甘みが強く感じるのは、ネーブルオレンジがもともと苦味や酸味が弱いから、というのもある。

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そして香りがすごい!すごいオレンジ!オレンジ味のガムみたいな匂いする!


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