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2020.03.07 夏みかんマーマレード③

(前回のあらすじ)
試作1号と2号の出来を自画自賛しながら、さらなる向上を目指し臨んだマーマレード講習会!学ぶべきことはまだたくさんあるな!講師による2号のテイスティングはベタ褒め〜に気をよくしつつ、ここで得た知見をもとにレシピをさらに改良して、いざ、本番!!


できればこれで決めてしまいたいと思い、これまでの試作は夏みかん2個で作っていたところ、4個使って作成。いちおう、念のため、「もう1回」できる分は残しておいての、4個。写真は5個あるけど、使ったのは4個。

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2個でも出品にじゅうぶんな量はできるんだけど、良い結果だった場合を考えると、同じロットのものがたくさんある方が気分がいいじゃない?

とりあえず、どうやら意味のないことがわかった「茹でこぼし」は無し。となるとつまり、おおざっぱに言えば「皮を刻んだらたっぷりの水で柔らかくなるまで茹でてそこに砂糖と果汁を加えて煮詰める」だけ。

ちなみに、皮の切り方に拘らないのであれば、4分の1などのくし切りの状態で皮を茹でてしまい、柔らかくなったら取り出して好きな大きさに刻む(茹で汁はそのまま使う)、という方法もある。というか、どちらかというとそっちの方が本流らしい。たしかに、いくつか買って食べた英国産のマーマレードは、だいたい太めに刻んであった。柔らかくなるまで茹でるのに時間はかかるけど、作業の手間としてはだいぶラクだろう。でも僕は薄いスライスが見た目きれいで好きなので細く刻みます。

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果汁は後から加えてあまり火を通さないようにする、というのは講習会の学び。その方が風味が残るし、調理としてはある程度沸騰して殺菌さえ出来れば問題ないとのこと。

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というわけで工程がかなりシンプルになった。ただ、いくつか注意というか、工夫はしてみる。

①皮を茹でる際にレモン果汁を入れる
これは、pHが低いほうがペクチンが溶け出しやすいため、らしい。今回は夏みかん4個に対してレモン1個搾った。

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②夏みかんとレモンの搾りカスは煮出す
煮詰めさえすれば固くはなるが、あんまり水分を減らすと皮の割合が多くなってしまうので、ジュレをきれいに作りたければその分ペクチンが必要。種やワタを煮出してペクチンを回収し、煮汁を鍋に加える。もちろんこれもサラシで濾す。タイミングは砂糖を加える前ならいつでも良いと思う。ただ、じつはこれをやらずに作った経験がないので、正直なことを言うと必須なのかどうかよくわかってない。

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③皮が柔らかくなったら鍋の中身を計量
茹でこぼしをしないとなると皮を計量するタイミングがないので、皮が柔らかくなった段階で茹で汁を含め鍋の中身を全て計量する。これと、②の煮汁と、果汁の合計の重量に対して砂糖の量を決める。今回は前回に引き続き60%とした。

あとはもう「どこまで煮詰めるか」の問題でしかない。ジュレの割合を保ちつつ、ちゃんと固まるポイントを探っていく。

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固さをチェックするには、いくつか方法がある。鍋の中のトロみで判断するのはもっともシンプルな方法だ。鍋底をヘラで撫でたときに筋が残るとか。ただ、「鍋の中のトロみ」=「仕上がりの固さ」ではないし、「鍋の中でどれくらいのトロみだったら冷えたときどれくらいの固さになる」というのも、材料によって(おそらくペクチンの含有量によって)違う。なんなら同じ材料でもレシピによって変わると思う。あと、「鍋のそこに筋が残る」は深さで状態が変わってしまうので、たくさん作るときには使いづらい。つまり、決まった材料、決まったレシピ、決まった量で作る分には鍋の中で判断することも可能だが、はじめて作る材料やレシピをいじって試作するような場合にはあまり参考にならない。ただ、次回のために鍋の中の状態をよく見ておくことは大事。結局それが「勘」になる。

固さの判断基準で次によく聞くのは「コップの冷水の中に一滴たらして拡散せずに沈んだらOK」というもの。これはわりと参考になる。ただ、僕がやってきた感覚では、本当に拡散しないでしずくのまま沈むまで煮詰めるのはすごく大変だし、そこまでやると固すぎる場合が多い。いちごジャムなんかだと割と使えるけど、ペクチンが多い柑橘やブルーベリーはカチカチになる。結局材料によって使い分ける必要がある。

あとはもうわかりやすく、少しだけ小皿に取って冷蔵庫に入れて冷やす。これは確実!と思いきや、これもじつは参考程度という感じ。というのは、少量では乾燥して水分が飛んで固くなりがちなので。

そして、最近学んだのが「鍋から取った少量のジャムに同量程度のアルコール(無水エタノール)を加える」というもの。ペクチンが多く含まれていれば、即座にゲル化、すなわち固まるのだ。やってみるとかなり明快で、冷ましてどの程度固まるかもわかる。(すみません、原理については不勉強でわかりません。ジャムを煮るからにはこのくらいの食品科学は履修しないといけないと思いつつ、まとまった教科書を見つけられずにいる。どなたか良い本があれば教えてください。ネットで論文も見つかるけど、前提知識がなさ過ぎてなかなか…。むしろ僕が頑張ってここで自分でまとめるか。そして本にして売るか…。いや、ジャム作りの食品科学をわかりやすく噛み砕いた本とか、僕以外の誰が読むんだよ。)

で、今回このアルコールテストでやってみた。いや、じつは他の方法も全部やってるんだけど、アルコールテストを追加戦力として実戦投入した。確かに固まる。面白い。煮はじめはトロっとする程度だったのが、煮詰めるほど、アルコールを加えたときの固さが増す。が、しかし、結局どの程度が正解なのかがよくわからない。僕が求めるのは美しくかつちゃんと固まるジュレだけど、小皿の上には少量が平べったく固まってるだけなので、これが瓶に詰めたときにどうなるのか。これは…一度やってみるしかないな。

煮詰めすぎて固くなりすぎるのは避けたい。加熱しすぎると色も悪くなるし、風味も落ちる。と思うと、どうしてもヒヨってゆるめゆるめを狙ってしまう。前回ちゃんと固まったときの鍋の様子をちゃんと覚えておけばなぁー。

言うても仕方ないので、えいやっ!と火を止めて瓶詰め。瓶を煮沸して、あとは冷めるのを待つのみ。

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結果!!

全然!!

固まらねえー!!!

…なんか、完璧!とか天才!とか言ってたな…めっちゃ恥ずかしいな…穴があったら入ってそのまま埋めてもらって夏みかんの木の肥やしになりたい。

意気消沈しつつ、このゆるゆるマーマレードをどうしてくれようかって、とりあえず鍋に戻して再度煮詰める。煮詰めれば固くなる。すなわちやっぱり「どこまで煮詰めるか」だけの問題なのである。

じゃあ、とりあえずゆるめを狙ってダメだったら煮詰めればいいんじゃない?と思われるかもしれないが、二度煮して良い仕上がりになった試しがない。三度煮は勘弁してほしいという思いが滲み出て今度はポイントを越えて煮詰め過ぎるというパターンを繰り返してる。

今回もそう。煮詰めすぎの結果として皮の割合が多くなり、色もくすんでしまい、風味が飛んでしまった。いや、そもそも、もっと煮詰める必要があったとしたら、一回でキメたとしてもやはり同じように色はくすみ、風味は飛んだのでは?とも思う。

もちろん食べられる、というかむしろ美味しいよ?これはこれでアリ、濃厚な甘味や苦味はある意味英国風とも言える。バターリッチなスコーンやチョコレートアイスに載せるならこのくらいの方が合うかも。でも、これじゃないと、僕の美意識は言ってる。これじゃないんだ。

これが最後だと意気揚々と臨んだ夏みかんマーマレードで痛恨のミス。いや待って、まだあと1回分、夏みかんはある。残しといて良かった。まだ、諦めるわけにはいかない。

(つづく)





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