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2020.03.08 夏みかんマーマレード④

(前回までのあらすじ)
好調なまま進んだ試作1号と2号、そしてマーマレードアワード審査員ダン・レパード先生によるガチ講習会でさらにレベルアップ!この調子で決めるぜ!と意気揚々と挑んだ3号は見事に失敗!展開がベタ!でもベタならベタなりに次は大成功で大団円では!?知らんけど!!


3号の失敗に落ち込む暇もなく翌日の再挑戦。こういうのは勘の薄れない早いうちの方がいい。

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それにしてもこれが本当に最後。なぜならもう材料が底をつくから。実家に行けばまだ木になってるけど。でも、樹上で熟すとまたそれはそれで品質が変わってややこしいことになるので、やっぱり最後。

今回の最重要課題は「いつ火を止めるか」に尽きる。ただ、そのタイミングをはかることで加熱時間が長くなることは避けたい。色、風味を良く保つためだ。そこで、「最後に果汁と砂糖を加えてから煮詰める時間」、ここを短くすることを考える。

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まず、皮を茹でるときに、できるだけ茹で汁の嵩を減らす。砂糖が入っていない段階であれば、「茹ですぎ」はそれほど気にしなくても良さそうなので、皮に対してたっぷりめの水を入れた鍋に火をつけ、途中で搾りかすの煮出し汁を加えたうえで、皮がひたひたになるくらいまで水分を飛ばす。

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ここで鍋の中を全て計量。その重さと果汁の重さの合計に対して60%の砂糖を量る。

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そういえば前回の3号では茹で汁をそこまで減らさない段階で計量し、その重さに対して砂糖の量を決め、しかも最後は煮詰めすぎてるので、じつは明らかに糖度が高い。実際かなり甘い。60%は今回も同じだけど、前回に比べて砂糖の量自体がけっこう少なくなるので、すこしあっさりめに仕上がる、と思う。

皮と茹で汁を鍋に戻して、そこに果汁の「半分」を入れて火にかける。砂糖を溶かしながら加えて煮詰めていく。

果汁を後から加えるのは講習会で得たノウハウで3号でもやったけど、半分ずつ加えるのは今回の思いつき。果汁はまず半分を煮詰めて、残り半分は最後の仕上げに加えることで、風味の、特に爽やかさの鍵となる果汁の「量×加熱時間」を小さくする。なんなら3分の1ずつ加えても良いと思う。

果汁を半分加えて煮詰めていくにあたり、ここでも煮詰め過ぎは色を悪くするので気をつけたい。かといってヒヨってしまっては、あとから加える果汁の加熱時間が伸びる。その辺のバランスを見極める必要があるが、どちらかというとしっかりめ、アルコールテストで「じゅうぶん煮詰まった」と判断できるまで。まあこの段階では致命的な失敗にはならない。大丈夫。残りの半分を加える。

さあ!

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鍋を見つめ、混ぜるヘラから手に伝わる感触に集中し、なんならジャムの沸く音を聞き、そしてアルコールテストを繰り返す。

まだ…まだ早い…まだだ……まだ……か…?

…いま……か?…いまなのか?えっまだ?
えっ?あれっ?えっえっ?

あーーーー!わかんないわかんない!!
えいやっ!!!

と、火を止める。これでうまくいったら、だいたいこんな感じのノリで火を止めればいい、ということになる。これが職人の勘というやつである。

状態としてはまだまだゆるゆる。しかしアルコールテストでは前日よりもしっかり固くなっている。色は良い。香りも良い。これは、良いのでは?いやしかし。

祈るような気持ちで、いや本気で祈りながら瓶詰めし、煮沸する。いまさら祈っても仕方ないのだけど。瓶を熱湯から取り出したばかりのまだ熱い状態では当然ながら固まらないのだが、このゆるゆるが固まるなんて信じられないという気持ちが勝ってしまい、不安で仕方ない。

いや、不安って?改めて考えてみると、そんな不安を抱きながらジャムを煮る必要など全くない。ここでベストなレシピを練り上げてベストなジャムが出来たとして、さらにそれが良い評価を得たとして、アマチュアジャムニストの自分には達成感・満足感・自己肯定感くらいしか得るものはない。もちろんそれはそれで生きるうえで必要ではあるが、ジャム煮をもっと素直に楽しむ以上に価値のあることだろうか?こいつの作るジャムは美味しいと褒めてもらうことはできるが、ジャム煮で褒められるのが自分が真に求めていることだろうか?そもそも、ジャムなんて手作りすれば誰が煮ても美味いのはわかってるはずじゃないか。夏みかんマーマレードのジュレが固まろうが固まるまいが、味は美味いのだし、それ以上にこだわることに、そしてそのせいで不安を抱くことに、いったい何の意味があるのか。

とか、考えないこともないけど、趣味なんて何をやってもそんなもんだし、それはそれとして、その不安や失敗のガッカリも含めて面白がれる程度には大人になったと思う。ただ、ジャムは失敗の結果としてその度に在庫がどんどん増えるという割と深刻な問題はありますが。

というわけで、煮沸したジャムは不安とともに一晩冷まして、翌朝。

!!!!!

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これ!これだよ!

いやいや、外見だけで判断しちゃいけない。味見。

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これは…

爽やかさが突き抜けている。火を通しているのに、生の果実を齧るかのようなフレッシュな香りが広がる。さらに、キレのある苦味が主張しつつそれを包む砂糖の甘味のバランスも絶妙。当初の課題であった皮の固さもまったく問題ない、完璧な食感だ。マーマレードとしてはジュレが柔らかめではあるが、風味と色を維持するギリギリのところとして最適な判断だ。

とはまあ言い過ぎだと思うけど、いまだけは自己満足に浸らせて。

というわけで、じゅうぶんに満足のいく仕上がりとなったので、夏みかんマーマレードとしてはこれを出品します。応募カテゴリーは昨年と同じ「自家製かんきつのマーマレード」で。応募要領は昨年とほぼ同じ、アマチュア出品料が1500円なのも同じだし、それはすべて慈善事業に寄付されるのも同じ。20点満点の19.5点以上が金賞なのも同じ(ただし去年と違って要素配点が明記されてない)。

いやーしかし改めて19.5点って言われると…。今年の出来に「これはもう金賞いけるっしょ!」くらいに思ってたけど、19.5点かぁ…とはなる。完璧であることが前提、みたいな威圧感。

いや、もしかしたら現場の雰囲気は「おっ美味い!20点!まじで美味い!23点!これも美味い!22点!なんだこれめっちゃ美味い!!28点!!でも20点満点だからみんな20点ね!!!」みたいなノリかもしれない。いずれにしても審査結果を待つしかなく、もうできることは何もない。

ちなみに金賞受賞者は表彰式の出席資格が与えられ、審査終了時点で連絡があるのも昨年と同じ。今年は審査会が5月7〜8日、たぶん当日翌日はちょっとそわそわする。

表彰式はマーマレードフェスティバルのクライマックス5月16〜17日なんだけど、連絡もらってから飛行機と宿の手配間に合うのかな。いまから予約しておくべき?

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