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2017.09.15 ガーデンハックルベリージャム

手作りジャムを差し上げると、大変な好評をいただくことが多い。

たとえ不味くてもわざわざ不味いと言ってくれる人はいないので当たり前かもしれない。(わざわざ不味いと言ってくれる人も貴重な存在なのであるが)

それにしても、「びっくりするほど美味しい」みたいな反応が多い。まんざらでもない。自分でもそう思う。

実は、僕の手作りジャムが美味しいのには秘密がある。

何か作り方にコツがある?材料にこだわりがある?まぁ、ないこともないが、趣味でやってる僕にとってそれは秘密とまでは言えない。秘密の本質は、もっと構造的な部分である。

即ち、手作りジャムは「全て」びっくりするほど美味しいのだ。

ちょっと言っている意味がわからないかもしれないので、以下に説明する。

まず、「手作りジャム」とは何なのか。「手作りではないジャム」とは。

僕のように自宅で趣味でやってるのはもちろん手作りジャムの部類である。

プロのジャム屋さんでも、個人経営のレベルでは普通にガスコンロと鍋で作ってる場合が多いだろう。これは紛うことなき「手作りジャム」だし、「手作りジャム」と表記して販売していることも多い。

一方、工場で量産するジャムは「手作りではない」と言えそうだ。品質管理が最重要課題であり、糖度、水分、粘度などの要素を、種々の材料を添加することで一定に保つ。どうしても「手作り」に比べれば「薄める」ようなイメージになってしまう。素材のバラつきに対して製品を均一にするには、当然ながら品質の基準をすこし「薄め」のところに設定することになる。逆に言えば手作りではそこまでできない。

ただ、味としてはやはり、果実感に劣ることになる。また、配管内の輸送などの工程があれば、大きな実を残すのも難しくなる。果実100%の味や、ゴロゴロ実が入った食感などのいわゆる「手作り感」は、必然的に失われてしまう。

「手作りジャム」と「手作りではないジャム」には、なんだかんだで違いがある。良い悪いではなく、やはり「手作り」はそれなりに美味い。

ただし、現実には完全に明確な線引きができるものではない。工場設備でも高価格帯の商品であったり、小ロットで高付加価値のものを作る場合がある。ほぼ日のジャムなんかそういうイメージで、手作りに近い。あれはめっちゃ美味そう食べたことないけど。

手作りなのか、手作りに近いのか、手作りではないのか。味とともに差が出るのは結局、価格だ。ジャム作りはスケールメリットが出やすい。量によって加熱時間は大きく変わらないし、鍋の面倒を見る人員数も変わらない。よって鍋が大きければ同じ時間で同じ人件費でたくさんのジャムを作れる。時間管理、撹拌、瓶詰などなど、自動化できる工程も多い。工場での大量生産に向いているのだ。したがって、量産型は安価で売れるが、それに比べて手作りジャムの値段はどうしても高くなる。感覚的には、3〜5倍くらいの価格差がある。身もふたもない話だが、美味いジャムはそれなりに高い。

そして、高価な手作りジャムを普段使いする人は、ほとんどいない。ここが、重要なポイント。

ジャムが好きでいつも食べる人ほど、比較的安価な量産型ジャムを買うことになる。毎朝パンに塗って食べるジャムはそれなりに美味しいが、大きな期待を込めることは少ない。で、たまたま食べた「手作りジャム」がびっくりするほど美味しかったとして…

本当は、そのジャム「だけ」が特別美味しいとは結論できない。他にも美味しいジャムはたくさんあるはずなのだから。しかし人間の脳は基本的に自意識過剰なので「いま自分が食べたこのジャムだけ」が美味しいのだと、錯覚してしまう。

まとめると、

人々は普段あまり手作りジャムを食べない
(量産型ジャムを食べるほうが多い)

ジャムに対するハードルが基本的に低い
(まぁジャム言うたらこんなもんやな)

たまに「手作りジャム」食べるとめっちゃ美味い
(なんやこれいつもとぜんぜんちゃうやん)

「このジャム」だけが美味しいと錯覚
(このジャム作ったやつ天才やな…)

というわけだ。

この構造を知る人は少ない。普段は量産型ジャムを食べている人が、僕の作った手作りジャム「だけ」を食べた結果、僕のことを天才ジャム職人かなにかではないかと思ってしまうというカラクリである。果物を買ってきて煮るだけでこんなに褒めてもらえる。我ながら良い趣味だ。

…いや、そんなことを言うために秘密をバラしたわけではない。

僕はとにかく、たくさんの人に美味しいジャムを食べて欲しいのだ。美味しいジャムが美味しいことを知らない人が多い現状に、なんとも言えない寂しさを覚えるのだ。

お店で手作りジャムを見つけたら、手にとってみてほしい。高原ぽい観光地(軽井沢とか那須とか)にはたいていジャム屋さんがあるので、調べて行ってみるのも一興だ。なんだったらネットでいくらでも取り寄せできる。ひと瓶(しかも小さい)が1000円とかして「高っっっけぇな!」と思うかもしれない。

しかし、その値段には、果物だけではない、たくさんの物語が詰まっている。ぜひ買って食べてみてほしい。ぜったい美味いから。

たかがジャムと思うだろうか。しかし、果物を刻んで砂糖で煮ただけのそれは、その美しい色、豊かな香り、染みわたる甘味でもって、人間の、とても奥深いところに作用する。

ジャムは、ただの食事ではなく、体験になる。









っっっっっってオオオオォォォォオイィ!!!!

ガガガガーデンハックルベリージャムは!!!


いやー実は、何か書こうにも書きあぐねて、ここまで一般論でお茶を濁したのだけど。…正直、味があまり好みじゃない。色はブルーベリーとそっくりなのに、トマトのような青くささ。口に含めばサツマイモのようなもったりした風味が重なる。

僕の手作りジャムの美味しさについて大見栄を切っておきながら、このジャムについて言えば、人に差し上げて喜んでいただける自信が、まったく無い。美味いか不味いかというより、自分の好みでないだけだと思う。というのも、妻は美味しいと言って食べる。なんか好みは人それぞれという、パクチーみたいなことだろうか。

そもそもこれ、この味が正解なのかもわからない。初めて買って初めて作ったし、今まで食べたこともないのだから。上手く作ればもっとすごく美味しいのかもしれない。こういう場合、やはり率先して人に差しあげるのは難しい。どうしても食べてみたいという方がいれば考えます。

一方プラスに捉えると、なかなかこういうパターンは少ないので、これはこれで勉強になる。どこか工程に改善の余地はあるか。何か別の材料と混ぜることで良さを引き出せないか…。などなど、当然のように美味しくできる果物ではあまり考えないことにも、頭を働かせる。それでもう一回作りたいかと言われると…

ガーデンハックルベリーはナス科の植物。ブルーベリーサイズだが、確かによくみるとミニミニ茄子って感じ。

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なお、ハックルベリーとガーデンハックルベリーは別物なので注意。ハックルベリーはツツジ科。ネットのレシピなんかでもよく混同されている。
ハックルベリーの調理法を知らないので、混同が問題になるのかわからないが。

ガーデンハックルベリーは灰汁が強いので、まず重曹で茹でこぼさないと食べられない。その時の様子がこちら。

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謎の緑の泡の中に浮かぶ黒い粒。黒魔術か。


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