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宮廷風恋愛と「fin’amor」について

皆さま、大変お久しぶりです!ようやく投稿出来ました…。

今回お話するのは、主に

宮廷風恋愛

ではなく

「fin’amor」について

です!


まだまだ吸収している段階なので拙いところがあるかもしれませんが、今お伝え出来る

僕の全て

をお伝えします!

なので、かなり長くなってしまいますが、もし興味がございましたら、読み進めてください!

しばらくの間は無料で公開する予定なので、今の内に読んでおいてくださいね!

では、始めていきます!



①宮廷風恋愛について

このテーマをお話するのが大変懐かしいですね…少し、ざっくりと振り返りますね。

この宮廷風恋愛とは、「騎士と貴婦人の不倫」であると思われる事があるのですが、厳密に言うと違います。この恋愛の構図は、

身分が低い男性と、身分が高い女性

による恋愛です。

つまり男性側は騎士で無くても良かったと言うことです。ただ、女性は貴婦人ではないといけなかった理由がありました。と言うよりも、

「身分が高い」

と言う部分が問題だったわけです。


②中世フランスの「一人前」

中世フランスにおいて「身分が高い女性」や、「一人前の女性」と呼ばれる存在は、多くが「貴婦人」でした。貴族の奥方です。

何故奥方だったかと言うと、周知のことかと思われますが、男女共に

結婚しないと一人前になれなかった

からなんですね。これは男性も然りです。未婚男性の場合、つまり、いわゆる貴公子に対しては、近習(きんじゃ。主人に仕える従者の様な存在)を表す

damoiseau」

を用いた

Mon damoiseau

と呼ばれておりました。王族は別だったらしいですが、多くの貴族の家の未婚男性は、こう呼ばれていたみたいです。この男性は半人前です。半人前の女性を指す

Ma demoiselle (マドモワゼル)

と対をなす言葉であると言うことを、是非覚えておいてください。

従いまして、一人前と認めてもらうためには、多くの場合

結婚しなければならなかった

と言うことです。例え名誉高い騎士であれ、未婚であれば半人前と同義の呼ばれ方をされていた、と言うことですね。ですので、「身分が高い女性」と言うのは、中世フランスでは、主に

貴婦人を指していた

と言う訳なんですね。


③宮廷風恋愛のお約束

宮廷風恋愛とは、決して「騎士と貴婦人の不倫」と言う約束ごとではないばかりか、必ずしも「身分が低い男性」に限った話だったわけでもありません。

この様な不倫をベースに持つ恋愛を歌う詩人、

トゥルバドゥール

の第一人者とされるギョーム9世は

アキテーヌ家の公爵

です。結婚もしておりましたし、アキテーヌ公領は

莫大な領土を持っていました。



画像1

Pâtisseries Régionales Françaises/フランス地方菓子 様(http://patisseries-regionales.com/nouvelles-regions.html)
から借用致しました🙇‍♂️申し訳ございません🙇‍♂️

この左下のピンク色の領土が1152年のアキテーヌ領です。とんでもない広さの領土を所有していた事が分かるかと思われます。

つまり、このアキテーヌ公爵のギョーム9世は

全く身分が低くない

わけですね。しかし、このギョーム9世は長広舌に不倫の喜びを歌っておりました。そして、この彼がトゥルバドゥールの第一人者と呼ばれている事から、彼の詩は「トゥルバドゥール達の宮廷風恋愛とは別物である」とは考え難いんですね。まぁ、飽くまで第一人者であると

言われているだけ

です。(裏付けが取れたのであれば、是非とも教えてください🙇‍♂️)。

つまり、この宮廷風恋愛とは、必ずしも

「身分が低い男性」に限らない

と言うことです。では、何故この様なイメージや定義がされる事となったか?

私の仮説ですが、やはり

騎士道物語の影響が大きかった

のではないでしょうか。むしろ、それしか思い浮かびません。勿論、トゥルバドゥールの出自も関係しているとは思われますが。しかし、

その騎士道物語にこそ、メインテーマである

fin’amor

が眠っています。


④愛の議論

お待ちかねの主題ですが、少し先延ばしにしますね(僕の悪癖です)。

トゥルバドゥールの多くは

貧しい騎士である

とされています。

モーリス・ヴァレンシー氏が書き上げた作品『恋愛礼讃』の中で口酸っぱくこの事が書かれていますが、極め付けは136ページのこの下りです。

(略)。貧しい騎士であり、浮浪者であり、乞食であるトゥルバドゥールたちは、総じてパトロンとの関係において恥を知らなかった。(略)。自分の暮らしを豪族の気前のよさに依存していたので、自作の歌のなかで、金銭やガウンや馬といった、差し当たり必要としているものを無心した。

つまり、ここから伺えるのは、急増したトゥルバドゥール達の多くが

貧しい騎士であった

と言う事です。そして、彼らは自作の歌の中で、貧しく、それ故に低い身分を強いられる現実に嫌気がさし、貴族社会を

痛烈に批判します。

その道具が宮廷風恋愛であり、愛の苦しみを知る貧しい騎士を

主人公

としたのです。勿論、そこには自分達を投影していた事でしょう。だからこそ、

騎士と貴婦人の不倫

をテーマにした詩が大量に創られていく事となりました。主に12世紀の南フランスの出来事です。

しかし、この宮廷風恋愛には問題が生じました。その問題によって

fin’amor 

が誕生する事となります。が、もう少々お待ち下さい。

宮廷風恋愛の問題とは何か?

騎士の性分とは

追い求める存在

です。臆する事なく名誉を求め、勝利を求め、ロマンを求める事を善しとされていたからですね。つまり、騎士とは追い求める存在と言っても過言ではないかもしれません。過言かもしれませんが…。

そんな騎士だからこそ、問題が生じたんですね。つまり、貴婦人を手に入れてしまうと

冷めてしまう

わけです。これは女流トゥルバドゥールの詩の中でも見受けられますね。

「何で冷たくするの!!!」

と言う詩です。これに関しては目的が食い違っていたからなので、是非とも私の過去の記事を読んでみてください!

これによって、貴婦人方とトゥルバドゥール達で議論が巻き起こります。その様子も詩で残っています。

これが

愛の議論

です。つまり、

愛とは何か?幸せとは何か?お互い、何をすれば幸せでいられるのか?何が

本当の愛なのか?

と言う議論が巻き起こったんですね。

貴婦人の主張はこうです。


恋する騎士(ドムネジャドル)なのであれば、

一生愛し続けるべきでしょう!



しかし、騎士の主張はこうです。


騎士なのであれば、

追い求め続けるべきではないのですか!


この議論が繰り広げられた事で、両者は気付きました…。

あぁ、恋愛している時が一番幸せなんだ。

と。

これが

fin’amor

です!


⑤fin’amorの誕生

こうして誕生したfin’amor、便宜上

まことの愛

と呼称しますが、このまことの愛もまた、議論の対象となりました。

どうすれば恋愛を続けられるか?どうすればお互い幸せになれるのか?

そんな議論の中で、少しずつ理想的な関係があらわとなって行きます。

騎士は貴婦人へ仕え続け、また、貴婦人は騎士を飽きさせない様に、でも見限られない様に適度に応え続ける。こうする事で、お互いの欲求は満たされると言う関係に気が付き始めるんですね。

そして、まことの愛の結論に達しました。それは

騎士は貴婦人へ身も魂も、死さえ捧げるべし。つまり


死んでも尚、愛を貫くこと


でありました。

そして貴婦人側は、


騎士を想い、受け入れ、応えること


であったわけです。決して手に入らない関係、それが

中世フランスの恋愛


へと変わっていったんですね。ギョーム9世もビックリでしょう。或いは、ギョーム9世のみが、異質な作品を創っていたのか、定かではありませんが…。

こうして確立していったまことの愛が、なんと

北上します!


それにより、北仏の武勲詩や英雄譚に混ぜられていく事となるんですね。この

騎士が愛を貫き、貴婦人が愛に応える

と言うまことの愛が、顕著に打ち出された名作、原点にして頂点の作品

『トリスタンとイズー』

が創られる事となったわけです。


まとめ

こうして創られた『トリスタンとイズー』は、後の騎士道物語へ多大な影響を及ぼしました。『ランスロあるいは荷車の騎士』も然り、その後に現れた

新たな騎士道精神

も然り、です。

ところが、このまことの愛はフェミニズムの観点から立つと、やはり不服だったんですね。何故なら

女性とは愛されるだけの対象

として落ち着いてしまったわけですから。そりゃ怒りますわな。

そうして、相思相愛のラブロマンスも普及し始めた、と言うことです。

ただ、飽くまで

fin’amor 

を取り扱う作品なのであれば、相思相愛は御法度であると言う事は覚えておいてください。

何故なら

お互いの幸せのため

に磨き上げられた結論、愛の概念だったからです。

騎士にこだわる必要が無くなってしまった時代において、相思相愛が一般的になっていったと考えても違和感は無いのかな、とさえ思うばかりです。

この観点から、一度『タイタニック』を見直される事をオススメします。あの名作は、騎士道精神や騎士道恋愛を受け継いだ超大作であると、私は考えているからです。

そして同時に、相思相愛に陥った2006年の

『トリスタンとイゾルデ』

も、一度ご覧ください。

そして、かの作品に物申している私の動画もご視聴ください!そこそこに憤っております(笑)。


と言うことで!今回はこの辺りで終了にしたいと思います!

ブログの方が色々と書けるなぁと痛感している次第です。

また時間があれば投稿いたしますので、その際もよろしくお願いします!


よろしければ、スキや拡散をして頂けると、本当に泣いて喜びます。゚(゚´ω`゚)゚。

この宮廷風恋愛に見られる女性優位主義的な恋愛観念、実は日本に持ち込まれておりますので…いつか議論の火種になれればと思っている次第です。゚(゚´ω`゚)゚。


是非YouTubeにもお越し下さい!

と言う事で、この辺りで失礼いたします!

ありがとうございました!!


À bientôt !




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