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免疫(10)-前駆細胞の系列決定-

ミエロイド基本型モデルという造血幹細胞からの分化をしめしたモデルがある。

日本人が提案したものだ。

この造血における前駆細胞の系列決定はいまだ未解決の問題であり、教科書に乗っている分化の流れには教科書にのるほどの根拠が実際にはあまりない。

参考:河本宏、桂義元 造血における前駆細胞の系列決定の過程 古典的なミエロイド系/リンパ系二分法からの脱却 化学と生物 2012;50(8):584-591

もともと教科書で習っていたのは、最初に造血幹細胞から二手に分かれるものであった。

参考文献では、ミエロイド-エリスロイド前駆細胞およびT-B前駆細胞にわかれ、前者はミエロイド前駆細胞とエリスロイド前駆細胞に分かれる。

さて、今回勉強するミエロイド基本型モデルは胎生期ではだいぶ市民権を得ていると思われる。

このモデルの元となる研究では、驚くことにT細胞とB細胞だけをつくる前駆細胞が検出されていない。

基本型としてミエロイド細胞を作る前駆細胞となっていることが前提である。

そして、特殊型として、エリスロイド前駆細胞やT前駆細胞、B前駆細胞があるとしている。

ミエロイド系をM、エリスロイド系をE、T細胞系をT、B細胞系をBと置くと、造血幹細胞はMETBと記載でき、どれにでも分化誘導可能な状態を考えることができる。

METBから分化した場合、M・ME・MTBに分化すると考えられている。

MTBは分化後、MTとMBとなるため、前述のとおり、TBが発生しないと考えられている。

今回の驚きは、T細胞とB細胞になると思われていた、リンパ球系の前駆細胞がないということだが、次の実験でさらに信頼性が高まったと考えている。

胸腺ではT細胞が分化誘導されることは、別記事で記載したが、

T前駆細胞が、胸腺中でマクロファージを実際に作っていることが示されている。

B細胞が作れなくなってからも、ミエロイド系細胞への枝分かれが起こっているという事実が、ミエロイド基本モデルの正確性を向上させていると思えてくる。

今回のミエロイド基本モデルは検証がすべて終わっているわけではないということを十分に理解した上で、今後の研究結果を追いかける上では重要なモデルであると考えられる。

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