父の思い出


入院中、お腹の痛みで浅い眠りの中…
ふと思い出したことがありました。

たぶん父が30代半ばくらいだったか…

仕事(女)によっちゃ家に寄り付かなかったり、毎日帰ってきたりする父でした(笑)

あの頃は、女が居なかったのか…
毎晩帰ってきて、上座にあぐらをかいて座り、嬉しそうに晩酌してました。

母が作る、グラスいっぱい、なみなみに注がれた水割りを迎え口ですすり…

「かぁー!んめぇなぁ〜…」

そして、いつも傍らに置いていた瓶に入った柿の種をガサガサ取り出しボリボリ。

ピーナッツは、テーブルの上に残してました。

「なぁ父ちゃん、豆無しの柿の種もあるぞ?」
そう言うと…
「分かってねぇなぁお前は…豆の油がうめぇんじゃねぇか!アホ!」

そしてピーナッツをつまみ、私に弾く。

ほれ、鳩!お前は豆食え豆!

そうして笑ってました。

ぽりぽり残り物のピーナッツを食べてると…
「ほれ、お前も飲め!」
そう言い水割りをすすめてきます。

まだ中学くらいだったけど…
なんだか大人の仲間入りした気持ちになり、美味くもない水割りをすすりました。
「あぁ〜、美味え!」

「バカ言ってんな、ガキにわかるか酒の味が」
そう言ってまた、高笑い。

テレビからは、誰も見てない巨人戦。
網戸の外からは、少し涼しくなった風と虫の音。

台所から母が顔を覗かせ…
「酒なんか飲ませんじゃないよ!ったく!アンタ(私)も調子乗って飲んでんじゃないよ!バカ親子が!」

そしてまた父は高笑い。

しばらくして静かになったな…と、父を見ると、顔を前後に揺らしながら船を漕ぐ。

夏かけを肩からかけてやると、焦点の合わない目で…
「おぅ!相撲とるべ!相撲!」

そう言いながらゴロンと横になる。

夏の夜の思い出だった。



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