不幸の抱き合わせ~ダークサイド~

一連の出来事をライトサイドに長々と綴った。あの内容に書いた感情などは紛れもなく私自身の物であり、嘘は書いていない。ただ、あそこには書いていないことが、他にもあるだけだ。

今回は、前回書いていないことについて、焦点を当てて書いていく。

ある朝、伯母が亡くなったことを、母からの電話で知った。続けて母は言った。「だからね、今日、長崎からみんな来るからね。」

え。

私は現在、件の伯母の家に住んでいる。伯母の家なので、当然布団などもそれなりにある。立地なども悪くなく、私の実家よりも広いため、遠方から来た親戚が集まるのは、決まってこの家なのだった。

先月帰ったばっかりなんですけど…
伯母の見舞いをするために、年明けから数週間、長崎御一行が来たばかりなのであった。

私は大人数での生活が苦手だ。核家族で一人っ子のため、最大人数でも両親と3人でしか暮らしたことがない。部活やゼミなどの合宿は学生時代何度も行ったが、それは友人らとだし、部活動や勉強などに目的が置かれていたので、生活自体にストレスを感じる暇もなかった。

それが親戚ともなると話は別だ。基本的に遠慮はないので、寝ているところにズカズカ入り込まれて騒がれる(うちの親戚はとんでもなく煩い)、私の買い置いた物を勝手に使われる、嫌いな食べ物を半強制的に食べさせられる、テレビも高齢の伯父などに合わせ、NHK総合しか見られない。せめてEテレも見たい…(でも好きな番組を見たところで話し声がうるさすぎてテレビの音が聞こえない)

贅沢を言っているのは重々承知だ。そもそも私の家ではないのだし。だからはっきりと口に出しては言わないが、人間なので思わないことはできない。嫌だ。
親戚一人一人を嫌いなわけではないが、大勢でいると強力なパワーを持つ。

母からの電話があった日、仕事から戻ると、当然ながら親戚が大勢到着していた。狭い居間を親戚達が埋め尽くしているのを見るだけで、疲労度が増した。私が座る場所は既にない。事態が事態のため仕方ないとはいえ、これから暫く、仕事から帰るとこの光景なわけだ。おばちゃん、何も今死ななくても…

翌朝、喉の腫れと身体の痛みを感じた。どうやら風邪をひいたらしい。私は風邪は滅多にひかない人間で、インフルエンザなんて一度もかかったことがない。それがいともあっさり風邪をひくとは、やはり大人数パワーによるストレスに違いない。前回大勢来た時も、盛大に体調を崩した。

通夜が済んだ夜は、斎場で更に合流した親戚も加わりいよいよ大所帯となった。布団の数は圧倒的に足りず、私がいつも使っているベッドは、なぜか伯父に譲り渡す羽目になった。
女性陣は雑魚寝であった。敷布団と敷布団の境目が気持ち悪く、掛け布団も従姉妹と二人で一枚だけ。エアコンが効いている部屋なので寒くはないが、エアコンが出す乾燥しきった風が、元々痛い喉を更に刺激した。

明け方、酔っ払った誰かが「隣空いてるー?」とふざけた質問をしてきたので、私は「空いてない!!!」とブチ切れた。見ればわかるだろうが。
結局一睡もできないまま、体調を更に悪化させ、告別式へと向かった。

会場に到着するも、待ち時間に身体を真っ直ぐにして座っているのも辛い。行儀が悪いこと承知で椅子を並べ横になっていると、誰かに「行儀が悪い!」とぺちっとお尻を叩かれた。少し苛立ったが、反応する体力すら惜しかったので、省エネのため無視をした。

告別式が終わり、火葬中。食事が出されたのだが、食欲が全くなく碌に食べられなかった。食べもせず、喋りもせずにむっつり座っている私を見て、親戚達からは「○○(私)も早く結婚しないとねぇ、あ、△△(従兄弟)に紹介してもらいなさいよ!」などと祭り上げられた。一体私が何をしたと言うのか。ただ体調が悪いだけなのに…
反応する体力すら惜しかったので、またも省エネ戦法をとった。

火葬が終わり家に戻るとまたソファーに横になった。誰かに「自分のベッドで寝たら?」などと言われたが、完全に愚問だ。おっさんが寝た後シーツも変えないまま寝れるかっつーの。

翌日、やっとのことで病院に行くと、インフルエンザと診断された。家に戻ると、親戚達からは「ほんとにインフルエンザなのぉ~?」などと、なぜか疑われた。私からすれば本当にインフルエンザかどうかなんてどうでも良く、大切なのは具合が悪い事実のみだ。しかし疑われるのは何となく気分が良くないので、お前らにもせいぜい移れと、多めに咳をしてから布団に入った。

インフルエンザに罹り唯一ラッキーだったことは、殆ど人に会わなくて良くなったことだ。あらゆる必要物資は部屋に運ばれて来るので、部屋の外に出るのはトイレに行く時くらい。その間にどんどん親戚達は帰って行き、残ったのは私の母と、三十五日まで滞在する二人の伯母だけだ。見送りもしなくていいなんて、非常にラッキーであった。それぞれのタイミングで帰っていく人々を、一人一人見送るなんて面倒くささの極みだからだ。

ここまで散々性格の悪さが滲み出る文章を書き殴ったが、人間は誰しも二面性を持つ生き物だという。「怪物は飼い馴らせ。」と、かの大島優子も某曲のPVで言っていたので、私はこれからも自分の中の怪物と仲良くやっていくつもりである。

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