【シノビガミ】伝統の儀式〜The Proper Procedure〜【シナリオ】

シナリオスペック
レギュレーション:退魔編
タイプ:特殊型
リミット:3
プレイヤー人数:4人

はじめに

 このシナリオはエニグマとペルソナを使用します。

背景

 地獄門開閉の儀。神奈川県小田原市のとある神社で20年に一度執り行われる儀式です。この地では1000年前に顕現した地獄門が封印されています。封印からしばらくの期間は何も起きませんでしたが、封印から600年経った時点、即ち江戸時代に突如として門が活性化し、小田原藩は一時出島と化しました。600年分のフラストレーションを晴らさんばかりの勢いで多数の妖魔が現れたのです。裏柳生の忍者達の活躍で事態は収束しましたが、次に同じことが起きたときに対処できる保証はありませんでした。

 そこで、学者や宗教家が調査を行い、この地の地獄門は所謂「窓」のようなものであり、定期的な「換気」が行われているらしいことがわかりました。だからといって常時開かせておいては瘴気が江戸まで迫ってくることは必然です。そこで、20年置きに門を開閉することで瘴気と妖魔の流入を最小限に換気を行う方法が取られることとなりました。

 それから時は流れて太平洋戦争後。戦争のどさくさで地獄門開閉の儀の関係者は散り散りになり、儀式の意義や手順も散逸しました。戦後、比良坂機関と斜歯忍軍が共同で儀式の復元を行いました。現在、神社の内部には最新鋭の制御装置や測定器、それらを統括する旧世紀UNIXメインフレームが設置されています。比良坂機関の度重なる仕様変更要求と、斜歯忍軍内部の度重なる人事異動によりシステム内部がブラックボックス化している為、機器は最新ですが、基幹システムは旧式を忍者運用力で強引に運用しています。

 上記のような経緯の伝統の儀式「地獄門開閉の儀」ですが、実は誰も正式な手順を知りません。江戸時代に構築された手順は以下の通りです。

地獄門開閉の儀(旧版)
(1)新しい空気を吸いたいと望んでいる任意の年齢の女性を巫女とする。
(2)巫女と絆で結ばれた4人の忍者の力を巫女に注ぐ。
(3)巫女が祝詞を唱えて門を開く。
(4)巫女が門の向こう側へ行く。
(5)入れ替わりに妖魔が門の向こう側から現れる。
(6)4人の忍者の力で強引に門を閉じる。

 戦後復元された手順は以下の通りです。

地獄門開閉の儀(新版)
(1)この世界を守りたいと望んでいる10代の少女を巫女とする。
(2)巫女を巡って4人の忍者を争わせ、戦いから生じるエネルギーを門に注ぎ込む。
(3)巫女が旧世紀UNIXメインフレームを操作して祝詞エミュレータと門扉開閉アームを起動し、門を開く。
(4)巫女が門の向こう側へ行く。
(5)入れ替わりに妖魔が現れるので、門が閉じる前に倒す。
(6)巫女を門の向こう側から引き戻し、門扉開閉アームで門を閉じる。

 旧版の儀式は洗練されていませんが、必要な要素は全て含まれていました。即ち、「巫女が自分の力で以て自分の手で門を開くこと」「巫女と妖魔が入れ替わり、両者とも元の世界に帰らないこと」の2点です。この2点さえ満たしていれば、他の部分がどのような内容であろうとも妖魔の大群を招かずに儀式を完遂することができます。ただ、この2点が必須であることは江戸時代当時の知識人たちも一切気付いていませんでした。

 新版の儀式は上述の要素2点を満たしていないため、地獄門が暴走して妖魔が大量に現れます。しかしながら実は新版も間違った儀式とは言えないのです。大量の妖魔を全て力技でねじ伏せれば一応儀式が狙う効果「地獄門のガス抜きをする」が満たせるのです。新版の儀式は過去に2度執り行われていますが、2度とも大量の妖魔が出現して巫女を含む多数の関係者が死亡しました。それでも忍者の力で妖魔を退けた為、結果的には儀式は成功しています。

 そんなこんなで誰も地獄門開閉の儀の正しい手順を知らなかった上に、その洗練されていない手順の資料すら戦争で散逸してしまった状況で、それぞれのPCが「我こそが儀式の正しき手順を知る者なり」と意見や感情や忍法をぶつけ合うのが本シナリオです。

導入(PC1とPC2)

 PC1とPC2は比良坂機関の上忍頭である相模原朝禍(さがみはら・あさか)に招集されます。彼の隣には儚げな女子高生がいます。彼女の名前は新風歩魅(あらかぜ・あゆみ)と言います。相模原は「3日後に地獄門開閉の儀と呼ばれる儀式を神奈川県小田原市の某神社で執り行います。彼女は今回の儀式の巫女です。PC1さんには新風さんの警護をお願いします。また、PC2さんには儀式の準備や当日の裏方仕事をお願いします。この儀式は極めて重要です。失敗すれば神奈川県と東京都が出島になる可能性があるのです。頼みましたよ」。

 ここで、PC1とPC2のハンドアウトを公開します。そして、「地獄門開閉の儀」と「新風歩魅」のハンドアウトを公開します。

導入(PC3)

 PC3は古くから縁がある(実家がある、地主に仕えている、封印されていた等、好きに決める)神奈川県小田原市を久しぶりに訪れました。何故なら「地獄門開閉の儀」が行われるとの情報をとある筋から入手したからです。地元でそんな物騒な儀式をされたらたまったものではありません。それに、巫女の新風歩魅(あらかぜ・あゆみ)からは何やら危険な力を感じます。

 ここで、PC3のハンドアウトを公開します。

導入(PC4)

 PC4は神奈川県での忍務を終えたところですが、帰るわけにも行かない事情ができました。任務中に「地獄門開閉の儀」なる不穏な儀式の噂を聞いたのです。少し探りを入れてみると、妖魔が現れる危険性のある儀式であるらしいことがわかりました。

 ここで、PC4のハンドアウトを公開します。

ひらめき判定

 「地獄門開閉の儀」の【秘密】が全体公開されたタイミングで、全てのPCに目標値12で行為判定をさせます。特技はPLの任意です。この判定では、自分が所持している自分以外のキャラクターの【秘密】の数×2だけプラス修正を得ます。(ペルソナの【真実】は【秘密】の個数に含めない)

 成功したPCには、「あなたは、儀式に無駄があり最低限必要な要素が2個しかないことを直観しました」とこっそり伝えてください。そして、「儀式に最低限必要な要素」の内のランダムな1個もこっそり伝えてください。2回目の成功時には、「儀式に最低限必要な要素」の残りの1つをこっそり伝えてください。3回目以降は成功しても何もありません。

 この判定は、PCが自分以外のキャラクターの秘密を新たに獲得する度に再挑戦できます。(ペルソナの【真実】獲得時は対象外)

儀式に最低限必要な要素
・巫女が自分の力で以て自分の手で門を開くこと
・巫女と妖魔が入れ替わり、両者とも元の世界に帰らないこと
ひらめき判定の例1
 「地獄門開閉の儀」の【秘密】が全体公開されたタイミングで、GMは全PCに好きな特技で目標値12の判定、即ちひらめき判定に挑戦するよう指示した。このとき、PC1はPC3の【秘密】を入手済みであったので、GMから+2の修正を付けるように言われた。

ひらめき判定の例2
 「地獄門開閉の儀」の【秘密】は全体公開済みで、PC1はPC3の【秘密】を入手済みであった。PC1が新たに新風の【秘密】を入手したところ、GMから+4の修正を受けた上でひらめき判定に挑戦するように言われた。

クライマックスフェイズ

 儀式当日。旧世紀UNIXメインフレーム、最新鋭の機器、無数のケーブルが所狭しと設置された神社の中。神社の奥の中空には輪郭が不明瞭な小さな黒い穴が空いています。その穴こそが地獄門です。穴の周りを注連縄とLANケーブルが二重螺旋状に編まれた縄が囲っています。壁には札が貼られた無数の測定器が設置されています。穴の外側の同心円上には等間隔で4つのレーザー射出装置。穴の両脇にはアームが1対。

 クライマックスフェイズの戦闘は最大で2戦あります。

クライマックスフェイズの戦闘:1戦目

 最初の戦闘は新風を巡る戦いです。PC全員と新風が参加します。新風は全てのPCに敵対します。戦闘は4ラウンドで終了します。生命力の減少が最も少ないPCが勝者となります。勝利したPCは儀式を好きなように執り行うことができます。儀式から新風を取り除くことも可能ですし、あまり意味は無いですが新風を殺害することも可能です。

 戦闘の勝者が「巫女が自分の力で以て自分の手で門を開くこと」「巫女と妖魔が入れ替わり、両者とも元の世界に帰らないこと」の2点を両方含む儀式を行った場合、正式な手続きで儀式が行えたことになります。新風は門の向こうの異界へ消え、異界からはランダムな渡来人が1体現れ、神社内の人々に会釈してどこかへ去っていきます。結末へ進んでください。

 「巫女が自分の力で以て自分の手で門を開くこと」「巫女と妖魔が入れ替わり、両者とも元の世界に帰らないこと」の2点を一方でも含まない儀式を行った場合、儀式は失敗となり、地獄門が暴走して2戦目が発生します。

クライマックスフェイズの戦闘:2戦目

 暴走した地獄門から出現した妖魔との戦いです。PC全員、新風、ランダムな中級妖魔1体、ランダムな低級妖魔2体が戦闘に参加します。新風はPCたちに協力します。妖魔たちがボスです。戦闘前にPCは生命力を1D6点回復できます。低級妖魔は常に2体になるように毎ラウンドのプロット前に補充されます。戦場は極地です。中級妖魔を倒せばPC陣営の勝利です。

結末

 儀式が成功し地獄門の活動が弱まるのは以下の何れかの場合です。それ以外の場合は儀式が失敗し、神奈川県小田原市は出島と化します。

(A)「巫女が自分の力で以て自分の手で門を開くこと」「巫女と妖魔が入れ替わり、両者とも元の世界に帰らないこと」の2点を両方含む儀式を行った。
(B)「巫女が自分の力で以て自分の手で門を開くこと」「巫女と妖魔が入れ替わり、両者とも元の世界に帰らないこと」の一方または両方を含まない儀式を行って地獄門を暴走させたが、出現した妖魔を返り討ちにした。

・儀式失敗の際はPCは死亡または功績点3点以上の弱点を獲得します。

・【使命】が儀式を失敗させることであるPCであっても、(B)のパターンでエンディングを迎えた場合は【使命】達成としてください。

・パターン(B)でエンディングを迎えた場合は、全PCは追加で1点の功績点を獲得します。

・【使命】の内容が曖昧なので(意図してそうしています)、【使命】を達成できたかどうかの判断は各PLのストイックさに委ねます。

ハンドアウト

PC1

【使命】
推奨流派:比良坂機関(下位流派含む)
 あなたは相模原朝禍(さがみはら・あさか)から「地獄門開閉の儀」の巫女の護衛任務を受けた。あなたの【使命】は巫女の新風歩魅(あらかぜ・あゆみ)を守ることである。

【秘密】
 手順を誤れば死の危険すらある儀式に自分から志願するなど……。この娘は必ず守ってやらなければならない。そして、大人として、命を粗末にするなと叱ってやらねば……。そもそもこの儀式は年齢制限などなかったはずでは? 我が一族に伝わる巻物(空襲で殆ど焼けてしまったが)には年齢は任意である旨記載されていた。

PC2

【使命】
推奨流派:斜歯忍軍(下位流派含む)
 あなたは相模原朝禍(さがみはら・あさか)から「地獄門開閉の儀」を執り行うメンバーとして選ばれた。あなたの【使命】は「地獄門開閉の儀」を成功させることである。

【秘密】
 あなたは「地獄門開閉の儀」にエンジニアとして参加している。儀式にエンジニアとは似つかわしくないが、相応の事情があるのだ。門を開くときの祝詞や舞の方法が失伝してしまったため、門の構造からリバース・エンジニアリングし、工学的に儀式をエミュレートしているのだ。前回の儀式は工学的手法で概ね成功したらしい。
 あなたは独自にエミュレータを改良し、巫女が居なくても動作するようにしたのだ。巫女のかわりに新型エミュレータを使って儀式がしたい! 巫女は邪魔だ! 巫女が健在なうちはあなたにとって儀式は成功ではない。

PC3

【使命】
推奨流派:私立御伽学園または隠鬼の血統(下位流派含む)
 あなたは神奈川県小田原市に古くから縁がある(実家がある、地主に仕えている、封印されていた等、好きに決める)。あなたは「地獄門開閉の儀」の巫女である新風歩魅(あらかぜ・あゆみ)を危険視している。あなたの【使命】は新風歩魅を殺すことである。

【秘密】
 あなたは前回の「地獄門開閉の儀」が甚大な被害をもたらし巫女を含めた関係者多数が死亡していることを知っている(自分で見たのか、伝聞なのかは、PC3の出自に合わせて自由に決めて良い)。その原因は巫女の動機が不純だったからだ。世界を守りたいなどというありきたりで手垢のついた自己陶酔的で自己犠牲的なヒロイズムに基づいた動機は神聖な儀式にとって全くの不要。純粋な気持ち……門の向こうへの好奇心……新たな一歩を踏み出すという心意気。そういったものがなければ門は応えてくれない。新風歩魅よ……お前一人では世界なぞ救えぬという圧倒的現実でお前をみっちり説教し、その腐敗した心を"殺し"てやる。

PC4

【使命】
推奨流派:鞍馬神流またはハグレモノ(下位流派含む)
 あなたは別の忍務で神奈川県を訪れていた忍者だ。忍務は成功裏に終わったが、任務中に「地獄門開閉の儀」の噂を聞いた。何やら不穏な名前の儀式だ。あなたは少し探りを入れ、危険な儀式だと判断した。あなたの【使命】は「地獄門開閉の儀」を失敗させることである。

【秘密】
 あなたは偶然にも「地獄門開閉の儀」の手順が記された巻物を読んだことがあった。空襲で焼けてしまったらしく一部分しか残っていなかったが、巻物にはこう書かれていた。「巫女が門の向こう側へ、妖魔が門のこちら側へ。その後門を閉じるべし」。やつらは巻物に記されている正式な手順を知らないらしい。この情報を知られるとまずい。巫女が門をくぐれぬよう始末すべきか。


地獄門開閉の儀

【使命】
 地獄門を開けて閉める儀式である。20年に一度執り行う必要がある。

【秘密】
 拡散情報。儀式の手順は以下の通りである。
(1)この世界を守りたいと望んでいる10代の少女を巫女とする。
(2)巫女を巡って4人の忍者を争わせ、戦いから生じるエネルギーを門に注ぎ込む。
(3)巫女が旧世紀UNIXメインフレームを操作して祝詞エミュレータと門扉開閉アームを起動し、門を開く。
(4)巫女が門の向こう側へ行く。
(5)入れ替わりに妖魔が現れるので、門が閉じる前に倒す。
(6)巫女を門の向こう側から引き戻し、門扉開閉アームで門を閉じる。

新風歩魅(あらかぜ・あゆみ)

【使命】
 一般人。「地獄門開閉の儀」を執り行う巫女。「地獄門開閉の儀」を成功させることが【使命】である。
 全てのPCは新風歩魅の【居所】を最初から持っている。新風歩魅に対して戦闘を仕掛けたキャラクターは、自動的にその戦闘の勝者となる。

ペルソナ1
【偽装】儚げな少女。
【真実】些細な嘘:自信に満ち溢れた体育会系の少女。

ペルソナ2
【偽装】物静かな少女。
【真実】暴露

【秘密】
キャラクターシート
 太平洋戦争中は儀式が行われておらず、戦後執行された2回(即ち最新2回)の儀式は失敗(と聞かされている)しており、2回とも巫女は死亡している。詳細は比良坂機関の上層部しか知らない。新風は何故そんなことを知っているのか。前回の巫女が密かに残した手紙に書かれているからだ。手紙によれば、儀式の手順には誤りがある。手順書によれば巫女を取り合う忍者の戦いから生じるエネルギーを門に注ぎ込む事になっているが、本来は巫女と絆で結ばれた忍者が巫女に力を供給する手順が正しい。
 新風は手紙の内容を信じ、予め全てのPCに対して「友情」の【感情】を持っている。クライマックスフェイズ開始時に、新風はプラスの感情を持っているPCからランダムな生命力1点(追加生命力からは選ばない)とランダムな特技1個を奪って自分のものとする。新風がPCからプラスの感情を持たれている必要は無い。あくまで、新風がPCに対してプラスの感情を持っているかどうかで判定する。

エニグマ:箝口令

【偽装】
 「地獄門開閉の儀」は機密事項であり、関係者であっても他セクションのメンバとの情報交換は厳禁である。

【戦力】
 混乱

エニグマ:資料の散逸

【偽装】
 戦争や戦後の混乱で様々な資料が失われた。

【戦力】

 情報工作

あとがき

 「【秘密】に【本当の使命】が書かれていないのに、【秘密】の内容のせいで【使命】が真逆の意味になる」というシナリオを書こうとした結果できあがったのがこれです。なお、「伝統の儀式〜The Proper Procedure〜」と「重要な忍務」は現代社会の世知辛さを味わえるシナリオとなっております。

以上

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